評価5
再読(前回2020年5月3日)。
真裕子は母親が殺された事件についてのその後を連載記事にするという建部と何度か会ううちに建部に惹かれて行く。建部も真裕子の心の傷を癒してやりたいという思いから彼女との心の距離を縮めて行くのだった。一方、香織の息子・大輔は自身のことしか考えなくなってしまっている母親には見切りをつけて、自由きままな生活を送っていたのだが、そこへ仮出所した父親が近づき、今まで知らずにいた事件について気づき始めるのだった。
母親のわがままから長崎の祖父母の許に帰った大輔と妹の絵里を取り巻く環境は最悪だった。従兄が殺されたことで滅茶苦茶になった伯父家族と年老いて行く祖父母との生活に焦燥感に苛まれた大輔は妹の行く末を悲観してある行動に出てしまう。
被害者側の真裕子が建部との交際を経て幸せを掴んで行く過程の微笑ましさと、その陰で、加害者側の大輔の心が荒んで行く様が交互に語られて、読んでいて胸の苦しさを覚えた。高浜家の父と姉に比べて真面目過ぎる真裕子が苦しみ、そして、母親よりも大輔ばかりが辛い思いをしている姿に暗澹たる気持ちとなって二度目の読了となりました。
殺人事件のどうしようもないやりきれなさだけが心に残った。
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