箱を置いたところで、背後のドアが開いて二人が入ってきた。
「あれっ? 打ち合わせに招ばれてるの?」
放っておけば矢継ぎ早に質問を連発しそうなところを遮って
PAN!
ポケットから取り出した音だけのクラッカーが隣で鳴らされた。
「違うだろ、云ってほしいからに決まってるじゃん」
こいつ、かまってちゃんなんだからさ、とばかりに浮かべられたニヤニヤ笑いに軽く肘で突かれて
「あ、そっか、忘れてた…」
と、こちらもクラッカーをポン!と鳴らした。
「誕生日、おめでとうっ!…って、それ何?」
祝福もそこそこに、テーブルの上に置かれた箱に視線が移る。
「あぁ、これ? 今日、実家に届いてたんだ。懐かしいだろうと思ってさ。イヴェント会場に行く前に見せてあげようと思って、持ってきたんだけど…」
「何、何?」
好奇心旺盛な眼差しが靴箱ほどの段ボール箱に集中する。
ふたを開けると、いちばん上には寄せ書きの色紙。真ん中には”48歳おめでとう!”とある。それを囲むのは明らかに子供の文字だ。
「誕生日の、プレゼント?」
「うん、どうやら、そうらしいんだよね」
「へぇ…」
持ち主の手前、箱の中身に触れようとはしないが、二人ともそこに何があるのか見たくてうずうずしているさまはまるで”待て!”を云い渡された子犬のようだ。
「ただし、1970年からの、ね」
「1970年の、こ~んにち~は~♪」
「出た!昭和歌謡史!」
「歌謡曲、じゃないと思うけど… そっかぁ、あの頃、タイムカプセル埋めたりしてたよね」
茶々を入れられながらも、当時のことを振り返る。
好景気に沸いた日本。バブル期ほどに浮かれてはおらず、ただただひたすら日本という国が”より上”を目指していた、そんな時代。
「あの頃の僕のお気に入りを詰め込んでくれたらしいんだ。どんなシステムを使ったのかわからないんだけどさ」
思い思いの品に名詞サイズのカードやら、ノートのページを破った紙片やらにメッセージを書き付けて未来へと、”あの頃”を閉じ込めてくれた友達やクラスメイト。
造型が素晴らしいと思った怪獣のフィギュアには”この怪獣の名前、覚えてる?”というメモ書きがはりつけられている。
鮮やかな赤の外車のミニカーは”30年も大事に持ってらる自信がないから、未来に贈ることにした!”と書きなぐったノートのページに包まれていた。
「これも、”お気に入り”?」
取り出された”図画工作”の教科書に首が傾げられた。
「う~ん… あ、そうか…」
栞のようにカードが挟まれたページには、緻密に描き込まれた版画のだまし絵。
「今とそんなに趣味、変わってないんだなぁ」
ぼそっと呟いた長身に、苦笑が誘われた。
「それ、成長がない、ってこと?」
「いや、そういうわけじゃなくて、さ」
「先見の明があった、ってことにしとこうよ」
さまざまな品がテーブルに広げられてゆく。
「これで、全部?」
サングラスの奥から、ホントに?と云わんばかりの瞳が訊ねる。
「…みたいだね」
答えたとたん、ほっと安堵のため息が漏れたような。
「なんだ、二人とも来てるんだったら、打ち合わせ始めるぞ」
会議室、とプレートが掲げられた部屋へと二人は呼ばれて姿を消した。
「なんて、ね」
ジャケットのポケットから取り出された、くしゃくしゃの紙片を広げる。
「これのこと、なんだろうな」
ぷっと吹き出さずにはいられない。
つい先日、3人で一緒に食事をしたときの領収書。
あのとき支払ったのは確か…
「入れたの、どっちだろ?」
うっかり入ってしまったのか、それとも悪戯心が起きて紛れ込ませたのか。
いずれにしろ、二人のうちのどちらかの仕業だ。
そうして、もう一枚、こちらはシンプルなカード。
”Happy Birthday!
12歳のキミに会ってみたかったなぁ…”
見覚えのある女文字を指先でそっとなぞってみた。
「あの二人が”時間管理官”の類でも、驚きゃしないけど」
二人が消えたドアに視線を送り、その向こうで始まったであろう打ち合わせに思いをはせる。
And then, past becomes future.
打ち合わせのテーマであるツアーのコピーが脳裏に浮かんだ。
「その”未来”に、すぐに追いついてみせるから」
☆☆☆ ☆☆☆
かなりへなちょこな"FICTION"ですが(って、いつものことですかね・苦笑)
一日遅れでごめんね>哲っちゃん
ホントは誕生日に照準を合わせてアップしようと思っていた"FICTION"だったんだけどね~(汗)
ってか、木根さんのお誕生日にも、ウツのお誕生日にも"FICTION"はエントリしてないぞっ(大汗)
筆力がないもので、3人の固有名詞を出さずに書くのは、ちょっとばかり骨が折れました(苦笑)
どれが誰の台詞か、わかるといいんですが…
おしまいのフレーズは、FANKSとしての願望が入ってしまいましたね。
”時間管理官”のお二人には、リーダーの”のりしろのなさ”のフォローをしてほしいな、と思いつつ、そんなことしたらタイムパラドックス生じるよね~なんて考えたり(笑)
REGALO:贈り物(イタリア語・スペイン語)
「あれっ? 打ち合わせに招ばれてるの?」
放っておけば矢継ぎ早に質問を連発しそうなところを遮って
PAN!
ポケットから取り出した音だけのクラッカーが隣で鳴らされた。
「違うだろ、云ってほしいからに決まってるじゃん」
こいつ、かまってちゃんなんだからさ、とばかりに浮かべられたニヤニヤ笑いに軽く肘で突かれて
「あ、そっか、忘れてた…」
と、こちらもクラッカーをポン!と鳴らした。
「誕生日、おめでとうっ!…って、それ何?」
祝福もそこそこに、テーブルの上に置かれた箱に視線が移る。
「あぁ、これ? 今日、実家に届いてたんだ。懐かしいだろうと思ってさ。イヴェント会場に行く前に見せてあげようと思って、持ってきたんだけど…」
「何、何?」
好奇心旺盛な眼差しが靴箱ほどの段ボール箱に集中する。
ふたを開けると、いちばん上には寄せ書きの色紙。真ん中には”48歳おめでとう!”とある。それを囲むのは明らかに子供の文字だ。
「誕生日の、プレゼント?」
「うん、どうやら、そうらしいんだよね」
「へぇ…」
持ち主の手前、箱の中身に触れようとはしないが、二人ともそこに何があるのか見たくてうずうずしているさまはまるで”待て!”を云い渡された子犬のようだ。
「ただし、1970年からの、ね」
「1970年の、こ~んにち~は~♪」
「出た!昭和歌謡史!」
「歌謡曲、じゃないと思うけど… そっかぁ、あの頃、タイムカプセル埋めたりしてたよね」
茶々を入れられながらも、当時のことを振り返る。
好景気に沸いた日本。バブル期ほどに浮かれてはおらず、ただただひたすら日本という国が”より上”を目指していた、そんな時代。
「あの頃の僕のお気に入りを詰め込んでくれたらしいんだ。どんなシステムを使ったのかわからないんだけどさ」
思い思いの品に名詞サイズのカードやら、ノートのページを破った紙片やらにメッセージを書き付けて未来へと、”あの頃”を閉じ込めてくれた友達やクラスメイト。
造型が素晴らしいと思った怪獣のフィギュアには”この怪獣の名前、覚えてる?”というメモ書きがはりつけられている。
鮮やかな赤の外車のミニカーは”30年も大事に持ってらる自信がないから、未来に贈ることにした!”と書きなぐったノートのページに包まれていた。
「これも、”お気に入り”?」
取り出された”図画工作”の教科書に首が傾げられた。
「う~ん… あ、そうか…」
栞のようにカードが挟まれたページには、緻密に描き込まれた版画のだまし絵。
「今とそんなに趣味、変わってないんだなぁ」
ぼそっと呟いた長身に、苦笑が誘われた。
「それ、成長がない、ってこと?」
「いや、そういうわけじゃなくて、さ」
「先見の明があった、ってことにしとこうよ」
さまざまな品がテーブルに広げられてゆく。
「これで、全部?」
サングラスの奥から、ホントに?と云わんばかりの瞳が訊ねる。
「…みたいだね」
答えたとたん、ほっと安堵のため息が漏れたような。
「なんだ、二人とも来てるんだったら、打ち合わせ始めるぞ」
会議室、とプレートが掲げられた部屋へと二人は呼ばれて姿を消した。
「なんて、ね」
ジャケットのポケットから取り出された、くしゃくしゃの紙片を広げる。
「これのこと、なんだろうな」
ぷっと吹き出さずにはいられない。
つい先日、3人で一緒に食事をしたときの領収書。
あのとき支払ったのは確か…
「入れたの、どっちだろ?」
うっかり入ってしまったのか、それとも悪戯心が起きて紛れ込ませたのか。
いずれにしろ、二人のうちのどちらかの仕業だ。
そうして、もう一枚、こちらはシンプルなカード。
”Happy Birthday!
12歳のキミに会ってみたかったなぁ…”
見覚えのある女文字を指先でそっとなぞってみた。
「あの二人が”時間管理官”の類でも、驚きゃしないけど」
二人が消えたドアに視線を送り、その向こうで始まったであろう打ち合わせに思いをはせる。
打ち合わせのテーマであるツアーのコピーが脳裏に浮かんだ。
「その”未来”に、すぐに追いついてみせるから」
かなりへなちょこな"FICTION"ですが(って、いつものことですかね・苦笑)
一日遅れでごめんね>哲っちゃん
ホントは誕生日に照準を合わせてアップしようと思っていた"FICTION"だったんだけどね~(汗)
ってか、木根さんのお誕生日にも、ウツのお誕生日にも"FICTION"はエントリしてないぞっ(大汗)
筆力がないもので、3人の固有名詞を出さずに書くのは、ちょっとばかり骨が折れました(苦笑)
どれが誰の台詞か、わかるといいんですが…
おしまいのフレーズは、FANKSとしての願望が入ってしまいましたね。
”時間管理官”のお二人には、リーダーの”のりしろのなさ”のフォローをしてほしいな、と思いつつ、そんなことしたらタイムパラドックス生じるよね~なんて考えたり(笑)
REGALO:贈り物(イタリア語・スペイン語)