2002年に初演されたローラン・プティ振付けによる演目であるが、今回が5回目の再演となる。ヨハン・シュトラウスのオペレッタからのナンバーを中心に構成さえたダグラス・ガムレイ編曲の音楽に乗せて、オペレッタの筋書きを基本とした大人の恋の物語りが展開される。演劇性を強く感じさせるその振り付けと、古典的な作法にとらわれない型や動きの面白さは、実に洒脱で小粋!デビット・ピントレーの「カルミナ・ブラーナ」と並んで、この劇場の新領域の代表的なレパートリーと言っていいだろう。今回のプリマは、杮落とし以降この劇場の新領域を牽引し続けてきたプリンシパル湯川麻美子である。大柄でスレンダーな肢体と指先にまでこめられた細やかな神経、そして抜群の演技力がこの作品の持ち味とベストマッチして、凛とした大輪の薔薇が花開いたような見事な存在感を発揮した素晴らしい舞台であった。実はこの公演は、この日を最後に引退する彼女のラストステージであった。私のような踊りの素人には、まだまだ十分な余裕がありそうに見え、それは誠に残念なことではあるが、その引き際は実に見事だと言わざるを得ない。別れを惜しむ満場の大きな拍手に涙を必死でこらえていた湯川であったが、カーテンコールでヨハン役の福岡雄大から真っ白な一輪の薔薇を捧げられた瞬間に、涙が一気に頬を伝った。誠に美しく感動的な光景だった。
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