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東京シティ・フィル第367定期(2月2日)

2024年02月03日 | 東京シティフィル
首席客演指揮者藤岡幸夫が振る2月定期だが、ロッシーニ、菅野、サン=サーンスという組み合わせの意味はよくわからない。まずはロッシーニの歌劇「ラ・チェネレントラ」序曲だが、まあ予想通りシンフォニックにオケを鳴らした演奏で「ロッシーニ感」はゼロ。それはそれで良いのだが、そのように演奏するとなると、スターターの役割としては曲が役不足かと感じた。二曲目は神尾真由子をソリストに迎えて今話題のTVドラマ「さよならマエストロ」のテーマ音楽作曲者としても知られる菅野祐悟のバイオリン協奏曲(世界初演)。これは作曲者が英国の詩人ジョン・キーツの書いたラブレターに触発されて神尾のために書いた30分を要する大曲だ。前半では恋人への想いの丈を、後半では憧憬の情のような感情を描いたようなわかり易い曲だ。神尾はほぼ弾ききりの熱演だったが、どこをとっても同じような音の繰り返しが続き、緩急の変化もあまりなく、ソロと伴奏の関係もいつも同じ、構成感もほぼ感じられない。だから「劇なき劇伴」のような30分は正直辛かった。休憩後のサン=サーンスの交響曲第3番ハ短調「オルガン付き」は、前半が前半だっただけに大層聴き映えがした。ここでは威勢良く鳴らす藤岡の個性が爆発して大層ブリリアントな演奏が展開された。しかし、どんなに威勢がよくとも今のシティ・フィルのソロや鉄壁のアンサンブルは美しく響くから凄い。この美しさこそ常任指揮者高関健と伴にこの楽団が9年間に築き上げてきた賜物だろう。そうした個性の上だからこそ、このような完成度の高い演奏が可能になったのだとつくづく思った。小柄ながら堂々と存在感豊かにタケミツメモリアルのオルガンを鳴らし切った石丸由佳が最後まで立たせてもらえなかったのは、単なる藤岡の「忘れ」が原因か。そうだとしたらちょっと可哀想だったなと。

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