19回目となる毎年恒例のさくらんぼコンサート(東京)である。今回は「山響創立50周年記念特別演奏会」という副題がついているが、プログラムにはそれに関する特別な記載はない。ともあれ50年の歳月と関係者の努力が、一地方のオケに過ぎなかったこの楽団を、立派は個性を持った山形県が誇れる存在にしたことは間違いない事実だ。指揮は常任指揮者の阪哲朗、ソリストはバイオリンの神尾真由子だ。まずは創立50周年記念委嘱作品の木島由美子作曲「風薫〜山寺にて〜」である。地元の立石寺に題材を求めた穏やかな曲だった。続いてのラロ作曲スペイン交響曲は、神尾のバイオリン独奏が何かに憑かれたような荒々しさで驚かされた。それはジプシー風とかスペイン風といったスタイルとは別種のもので、音楽的表現を超越していたと言っても良いだろう。つまり全曲のとこをとっても美しくないのだ。一方阪のサポートは極めて重厚で、金管なども思い切って堂々と鳴らすスタイルなのでソロとは水と油。だからそこに異国情緒とか、華麗さというものを聞き取るのは難しかった。そして神尾のソロアンコールは、H.W.エルンストの「魔王の主題による大奇想曲」。これはリートの歌とピアノ伴奏を4本の弦に託した超絶技巧の難曲なのだが、それをまた何かに憑かれた様な荒々しさで弾くものだがら、聴く方が疲れてしまったというのが正直な感想だ。休憩時間は、神尾に一体何があったのだろうと考えている間に終わってしまった。最後はバルトークの管弦楽のための協奏曲。これも引き続いて重厚な演奏だが、こちらはそのスタイルでも違和感はない。飯森範親が率いていた頃は、編成の小ささを生かした音楽作りが特色だったが、阪はむしろ小さくてもよく鳴るオケを目指しているようで、どの楽器もよく鳴りゴージャスな響きがホールを満たした。強靭なバイオリン群の響きはいままでこのオケから聞いたことのないものだった。
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