東京シティ・フィルのオータム・シーズン幕開けは、ヨーロッパの北に生まれた二人の作曲家の1911年に初演された作品を並べた一晩である。とは言え曲調は正反対で、一方は分厚いハーモニーに彩られたロマンティックな作品だが、他方は風通しよく全てを削ぎ落としたような厳しい作品だ。まずはすっかりベテランの域に入った竹澤恭子を独奏に迎えてエルガーのヴァイオリン協奏曲ロ短調作品61、指揮はもちろん常任指揮者の高関健だ。その長さと超絶技巧から滅多に演奏されることはないが、これは名曲である。そして今回の竹澤の演奏は、まさに名曲の名演奏!何の不安定さもなく、堂々とこの大曲に対峙して一切怯まず、余裕さえ見せながら深くそして健全な音楽と円やかで伸びのある美音で50分を見事に弾き切った。そこにはいつまでも聞いていたいと思わせるような居心地の良さがあった。高関とシティ・フィルの合わせの名技も決して劣らずに立派だった。いつまでも続く盛大な拍手にまさかのアンコールはオケ伴による表情タップリな「愛の挨拶」。恋人への愛と奥方への愛を並べたステージというわけなのだろうか。そんな推測はともかく、休憩を挟んではシベリウスの交響曲第4番イ短調作品63。厚いハーモニーに長時間晒されていた耳は、今度は細やかな音色やフレーズの変化や交わりを聞き分けなければならなくなる。緊張の強いられる40分の中で三楽章の終盤だけに心が動く長いメロディがあり、それに向かって進み、そしてその後はまた混沌に向かって収束してゆくような時間経過を体感した。正直言ってこの曲はやはりいつになっても苦手である。ただ何時もよりもつかみ所はあった演奏だったようにも思う。ただ残念ながら「名曲」の所以は未だに私には理解できない。このところ毎度のことであるが、シティ・フィルは機能的にはとても素晴らしかった。
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