この日のボーダー指揮の東フィル定期はほとんど満員の入り、終演後の嵐のようなブラボーはこのオーケストラでは久しぶりのものであった。東京フィルのマーラーの5番は、1999年の大野(鎌倉)、2002年家庭の事情で来日できなっくなったチョン代演のレナールト、そしてその翌2003年のチョンのリベンジと聴き進んできて、それぞれに特徴的な名演を繰り広げてきたと思っている。しかしこの日の演奏は、私にとってはいま一つのめり込めないもので、そんなホールに響き渡る大きな歓声にもかかわらす、満たされないままにサントリーホールを後にした。出だしのトランペットも、その後活躍する一番ホルンも出色の出来であったし、弦の奏者達の揺れだって半端ではなかった。にもかかわらず、何かマーラーを聴いた満足感がない。思うに、ボーダーの極めて安定した、逆に言うとメリハリのないテンポ感が、私の中にある分裂的なマーラー像と異なったのかもしれない。立派な演奏であるとは思うのだが、この曲の中にある雑多な要素が、あまりにもお行儀良く整理され過ぎてしまったような感がある。前座で演奏された「死と変容」も、全体に情緒が抑制され過ぎていて、面白みに欠けた。東京フィルは、比較的よく歌えるオケだという印象があるのだが、物足りなさの残る演奏であった。
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