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2012年東大入試理系数学第5問その1

2012-05-24 18:25:11 | 大学入試問題
どもども。

さて,今回は2012年東大入試理系数学第5問をやってみたいと思います

問題はこちら
http://www.yozemi.ac.jp/nyushi/sokuho/recent/tokyo/zenki/sugaku_ri/mon5.html

行列の問題です。今年は第5問と第6問,2題続けて行列絡みの出題になりました。こちらの問題はそれほど難しいものではないですが,強いて言えば,どんな風に答案をまとめようか迷うかもしれない,といったくらいでしょうか。
行列の単元はは新課程では実質的に消滅してるので今の1年生が受験生になる時からしばらく受験数学から行列の問題が姿を消してしまうと思われ,寂しい限りです。また何年かして行列が復活することは大いにありえますが

今回の問題ですが「平行四辺形の面積が~」のくだりはわざわざ必要だったのでしょうか。
はじめから |ad-bc|=1 で与えちゃってもいい気もします
そう言ってもいいくらい,平行四辺形がどうたらみたいな話は結構どうでもいい問題です。

4点(0,0),(a,b),(a+c,b+d),(c,d)を頂点に持つ平行四辺形の面積が |det(A)| で与えられることは1次変換の単元ではよく知られた基本事項です。3点(0,0),(a,b),(c,d)を頂点に持つ三角形の面積の2倍で,ベクトルの単元で使う面積公式で三角形の面積が S=(1/2)|ad-bc| と求められるのでそれを2倍すれば |det(A)| に等しくなりますね。
…というわけで,平行四辺形の出番は終了です



さて(1)ですが,行列BAとB^(-1)Aの行列式を計算するだけです。



ちなみに,行列のP,Qの積PQの行列式 det(PQ) は各々の行列式の積
det(P)det(Q) に等しいという性質があります。覚えておくと役立つかもしれません。



次は(2)を見てみます。c=0ならば,なんかkという整数があって B^kA または {B^(-1)}^kA の少なくともどちらかは与えられた4個の行列のどれかに等しくなるよんということを証明してくれという問題です。
そんなわけで B^k はどんな行列かをまずは考えてみることにします。行列の累乗を求める問題は受験数学ではとてもお馴染みですね。

とりあえずB^2やB^3などを実験的に求めてみるのがよいでしょう。
大体どんなことが起きるのかを把握することは大事です。
運がいいと累乗の形を類推できてしまいます。今回は予想が容易い形をしていますよ
あとはササッと帰納法で証明しちゃえばよいわけですな
{B^(-1)}^k の方は B^k を利用して求めちゃうのがよいと思います。



類推が難しい場合などは別の手段でチマチマ計算して累乗を求めることになるでしょう。固有値を求めて行列を対角化する,というのは累乗を求める際のスタンダードな手法です。受験数学でも当たり前のように必須テクと化してますね。
しかしながら,今回の行列Bは固有方程式が (λ-1)^2=0 になってしまって
固有値がλ=1しか出てきません
こうなると対角化は出来ないので諦めざるを得ません。
ちなみに,2×2の行列なのであまりピンときませんが,行列Bは上三角行列になっています。つまり対角成分より下は全部0になってる行列です。一般に,三角行列の固有値はその行列の対角成分の値になっています。Bの対角成分はどちらも1ですね。



2×2の行列についてなら簡単に確かめられます。



対角化はできませんが,もっと一般化された行列の標準形である
Jordan標準形というものがあって,それに変形することは可能です。
といっても,行列Bは始めからJordan標準形になっとるわけですが
それは対角成分に固有値を並べてその隣の成分に1が何個か並んでるという,対角化と似たような形をしています。



そんな行列の累乗を求める時は対角行列と1が何個か並んだ行列との和に分けて2項定理を使うというのが有効です。



対角行列の累乗は対角成分をk乗するだけだし,
もう一方は何乗かすると0になってしまいます。
なお,2項定理を使うときは積の可換性に注意してください。
一般には行列の積は非可換なので2項定理は使えません。
積が可換な2つの行列P,Qに対して (P+Q)^k の展開に
2項定理が使えます

行列の計算で役立つ公式といえばケーリー・ハミルトンの公式があります
固有方程式が重解1を持つため,(B-E)^2=0を得ます。
これと2項定理を利用して累乗を求めてみます。



ここでも,B-EとEの積が可換である事に注意です。

次に,整式の割り算を利用したやり方を考えてみます。
n次多項式 f(x)=x^k を (x-1)^2 で割った商をQ(x),
余りをαx+βとおきます。このxにBを代入して
B^k=(B-E)^2Q(B)+αB+βE という変形を利用する作戦です。
(B-E)^2=0なんでB^k=αB+βEという形に落ち着きます。
出てくる行列が積が可換なBとEだけだからイケるんですね。
ただし, (x-1)^2 が重解を持つため,αとβを求めるためには
工夫が必要です。そこで微分の登場です。



もう1個だけ累乗の求め方を挙げておきます。
漸化式の解を求めるやり方に似ています



さて,本題に戻りましょう。えーと,何をする問題だったっけ

なんだか長くなってきたので,続きは次回にしましょうか



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