ほのぼの数学がんばろう~

小学校算数,中学数学,高校数学あたりをゆるゆる~っと楽しみます(´ー`*)

2012年東北大入試理系数学第2問その2

2012-06-30 17:49:39 | 大学入試問題
どもども。


昨日に引き続き今年の東北大入試理系数学大2問をやっていきます~
問題はこちら

前回:http://blog.goo.ne.jp/mathnegi/e/6b217d75454b3beb68540b11584adf5d

前回は(2)までやりましたんで,今回は(3)をやります~

(2)で求めた行列Bに対して,B^3=E(E:単位行列)となるようなmを求める問題です~

主な解答方針は大きく次の二分されるんじゃないでしょうか~
ひたすら行列計算する
回転行列の性質を利用する
前回も述べましたが,Bは実は回転行列になっているんですね~



それではまずは,最もシンプルな解法,
すなわちB^3を素直に求めるパターンをやってみましょう。



B^3は↑こんなのになります
この計算をするだけで結構大変です
しかもそのあとも更に大変です~~ッ



6次式の因数分解なんてウンザリですよね
①はとりあえず因数定理使って因数m-1を括りだすことは何とか出来るでしょう。
(m-1)^2を括りだすことで残りは4次式です。
その4次式は m^4+8m^3+18m^2+8m+1 です。
複2次式でもないので,この4次式の因数分解は難しそうですね~
注目するとすれば係数の対称性でしょうか
つまり係数の組が(1,8,18,8,1)となっていて,18を中心として左右対称です。
m^4+8m^3+18m^2+8m+1=m^2{(m^2+1/m^2)+8(m+1/m)+18}=m^2{(m+1/m)^2+8(m+1/m)+16}
おやおや,m+1/m=Xとおけばm^2(X+4)^2の形に変形できるではありませんか
そういうわけで因数分解が出来るちゅうわけですわ
あとは①の解を求めればいいです。

同じように②の解も求めて共通のものが答えです。
あるいは,①の解を②の左辺に代入して「=0」になるものが答え,としてもOKです。
ただし後者は計算がめんどくさくなるので②も解いちゃうのがいいでしょう

②のほうは因数m-1とm+1を括りだすとこまでは問題ないでしょう。
残った4次式は m^4-14m^2+1 です。複2次式ですのでm^2=Mとおいて
2次方程式M^2-14M+1=0を解いてしまいましょう
すると,M=7±4√3が出てきます~
ということは(M-7+4√3)(M-7-√3)と因数分解できますが,
m^2=M=7±4√3=(2±√3)^2
に注意すると
(M-7+4√3)(M-7-√3)=(m-2+√3)(m+2-√3)(m-2-√3)(m+2+√3)=(m^2-4m+1)(m^2+4m+1)
という因数分解が出来上がります

あとは共通解を列挙しておしまいですね♪
なんだかんだで面倒な計算と地味に頭を悩ます因数分解に苦しめられるので
あまりオススメできる解法ではないですね


同じB^3を求めるにしても,もう少し工夫して計算を楽に出来ないもんでしょうか
行列計算を手助けしてくれる強力なツールといえば
ケーリー・ハミルトンの定理


少しは扱いやすい??



最初の解法よりはだいぶ易しくなりました


もうちょい工夫してみましょ~
今の解法の後半なんですが,B=kEの形に変形できます。
B^3=k^3E=Eより,k^3=1を得ます






次はB^3=Eを(B-E)(B^2+B+E)=0と変形して解く解法を考えてみます
ただし大きな注意が必要です
(B-E)(B^2+B+E)=0であることから,B-E=0またはB^2+B+E=0とするのは誤りです
行列の積については「X=0またはY=0」という条件を満たしていないのにXY=0となることがあります例えば
(1 0)(0 0)=0ですね
(0 0)(0 1)
XY=0ならば「X=0またはY=0またはdet(X)=det(Y)=0」
が正しいです
ただ,同値ではないです
det(X)=det(Y)=0だからといってXY=0とは限りません
そんなことに注意して問題を解いてみます~



②はケーリー・ハミルトンを使うと割と簡単です~




det(B-E)=det(B^2+B+E)=0を両方満たすことは出来ないようですね。
これで答えはm=1,-2±√3が得られました

②の計算をケーリー・ハミルトンを使わないでやってみます。
複素数を交えた別のやり方でいってみましょ









結構めんどいですね。
④とかで出てくる2次方程式は直接解くと更に面倒ですよ
試しに④を解いてみます~







ここまでは,B^3を直接求める方針でやっていましたが,
次は回転行列の性質を使って解いてみましょう

m=tan(θ/2)とおいてみます。よくやるおき方ですね。
このとき,cosθ=(1-m^2)/(1+m^2),sinθ=2m/(1+m^2)と書けます。
もはやこの式自体を公式のように覚えてしまってる人も多いでしょう
今回は角度を微妙にズラして, θ=φ+π/2 とおきます。
すると行列Bは原点中心,回転角度φの1次変換を表す行列になってることが分かります

B^3は回転角3φの1次変換を表す行列になるので,それがEと等しいということは
3φ=2π×k(k:整数)の形をしているということになります




はじめからいつもと違うおき方をして
cosθ=2m/(1+m^2),sinθ=(m^2-1)/(1+m^2)
とおいちゃうと,もうちょっと簡単になります



なお,cosθ=2m/(1+m^2),sinθ=(m^2-1)/(1+m^2) とおいた後,
3倍角の公式でcos3θ,sin3θを計算してcos3θ=1,sin3θ=0を解く,
という方針を立ててしまうと,一番最初のめんどくさい計算と変わらなくなってしまいます



ただ,直接的にガチンコでB^3を計算するよりは楽に計算できますね



(3)に関してはどのような解法を選択するかによって受験生の運命を左右しかねない,
そんな印象を持つ問題でした


   

2012年東北大入試理系数学第2問その1

2012-06-28 17:10:40 | 大学入試問題
どもども。


今回は今年の東北大入試理系数学の第2問をやります~

問題はこちら


1次変換に関する問題です~
解答の方針がいろいろ考えられるタイプの問題ですが,
ある直線に関して点を対称移動させてその座標を求める,という計算は
恐らく受験までに何度も何度もやらされたことでしょうから
自分に合った方法を既に確立していることでしょう
今回は対称点をいろんな方法で求めてみたいと思いますですよ~

(1)はどのようなやり方でやっても労力はそんなに変わりませんが,
(3)は結構変わってくると思います
行列Bが回転を表す行列だと気付いて利用するかしないかが分かれ目でしょう


まずは(1)です


直線y=xに関して反転させるのがf,直線y=mxに関して反転させるのがgです。
P(X,Y)をgによって写した点がP’(s,t)であるとしましょう。
色んな解法パターンを示しますが,いちいち断らないかもしれません。

考え方1
一番基本的な解法からやってみましょ~
・線分PP´の中点が直線y=mx上にあること
・直線PP´と直線y=mxが直交すること

の2点に基づいてs,tに関する連立方程式を立てて解きます






考え方2
ベクトルを使ってみます~
コレ,個人的によく使うやり方です~
ベクトルPP´のことは(→PP´)みたいに書くことにしますね
(→PP´)は直線y=mxの方向ベクトル(1,m)に垂直なベクトルなので
(→d)=(-m,1)の定数倍になっています。PP´の中点をMとして,
(→PM)=k(→d)とおきます。このkさえ求めれば(→OP´)=(→OP)+2k(→d)です





考え方3
もういっちょベクトルでいってみましょ
互いに垂直な1次独立なベクトル(→a)=(1,m)と(→b)=(-m,1)を使って
(→OP)と(→OP´)を表します。そのときの係数を求めましょう





考え方4
直線PP´は点Pを通る傾き(-1/m)の直線です。これとy=mxの交点Mの座標を
求めてそれが線分PP´の中点であることからP´の座標を求めます





考え方5
2点P,P´が与えられたとき,線分PP´の垂直二等分線の方程式を求めることが出来ますが
今回これがy=mxと一致するので,それを使って立式します





考え方6
線分PP´の中点をM,∠POM=∠P´OM=θとおくと,点P´は点Pを原点を中心として
角度2θまたは-2θの回転移動を施したものになっています
2θになるか-2θになるかはPの位置mの正負によって変わってくるので場合分けが必要になってきます。
ただし向き付きの角を考えると,常に2θとおくことも出来そうです
また,θを鋭角のほうに取るか鈍角のほうに取るかによってもcosθ,sinθの符号が変わってきます。
ここでは鋭角のほうを取ってみます。




めんどくさいので最後は割愛してしまいましたが
なるべくならこういうめんどくさい解法は取らないほうがよさげです



考え方7
回転といえば複素数
そんなわけで複素数計算を使ってみましょう~



あとは上の解法みたいに2倍角のcosとsinを求めて代入すればOKです。
向き付きの角を考えてるし,鋭角鈍角の区別もいらないので場合分けなく出来てます





そんなこんなで幾つかの解法方針を挙げましたが,他にもまだまだ色々あるかと思われます
相似を使ってみるとか三平方の定理を使ってみるとか。
またいくつかの解法パターンの合体版みたいのも考えられるでしょうね


続いては(2)です
といっても(2)は一瞬で終わるサービス問題です~

gとfの合成を表す行列Bを求めよっていう問題です
fは直線y=xに関する対称移動をする変換ですから
(1)で求めたy=mxに関する対称移動で特にm=1としたものです。
だからfに対応する行列Cはすぐ求まります
gとfの合成は行列の積ACを計算すればよかです~



なお,fは(X,Y)を(Y,X)に写す変換だから~っていう観点からもCを求められます



あとは(1)と同様に多彩な方法でCを求めることが出来ます~
特に45°の角を活かして求めることも出来そうですね


さて,答えのBの形をよくみると~~。
コレ,回転行列になってます
m=tan(θ/2)とおくと,cosθ=(1-m^2)/(1+m^2),sinθ=2m/(1+m^2)
と書けるので,置換積分するときなど,よくこの変数変換を用いますが,
おかげでこの行列Bに出てくる成分の数値にピンとくる人も多いはずです

今回は cosφ=2m/(1+m^2),sinφ=(m^2-1)/(1+m^2) とおけば
回転角φの回転行列になってる事に気付きます

これは今回が特別なわけではなく,直線に関する対称移動を2回施すと
回転移動になるようです
(直線に関する対称移動も上の考え方6,7でみたように原点中心の回転移動を
表していましたが,その回転角は点Pの位置に依存していました。)

試しに1つの図を使ってみてみましょう。


∠POQはαには依存してないですね
これ以外の図の場合も考えてみてください

Bが回転行列だと気付けば(3)は比較的楽に解けるはず。
それはとりあえず次回やりませう~~



  

2012年東北大入試理系数学第1問その2

2012-06-27 17:11:41 | 大学入試問題
どもども。

前回に続いて今年の東北大入試理系数学第1問をやっていきます

問題はこちら


前回:http://blog.goo.ne.jp/mathnegi/e/33187e612de08726a749204fe231aac2

s,tという2つのパラメータに依存してx,yが動くという状況でした~
(2)を今回はやりますよ~

基本的には前回と同じ手法が使える(考え方4は使えないっすね)ので,前回と同じ解法の順序でやっていってみましょう~

考え方1
(X,Y)という点が答えの領域に含まれているならば X=st+s-t+1,Y=s+t-1 を満たす
何かしらの実数s,tが存在するはずだ,それを具体的に求めてしまうことでそのようなs,tの存在性を実証しよう,
こういう発想でやってみます

s,tについて解いてしまえばいいんですが2次方程式が出てくるので,
その解は√を含んだ式になってしまいます。
根号内が非負でありさえすれば,その解は実数になるので
判別式≧0をすればよいわけですね






考え方2
2つもあるパラメータが邪魔なので一旦1つにしてしまう方針です
x=st+s-t+1……,y=s+t-1……
からsを消去すると
x=(y-t+1)t+(y-t+1)-t+1……
が出てきます。tを消去すると
x=s(y-s+1)+s-(y-s+1)+1……
が出てきます。

かつを考える代わりに
かつを考えるのですが
ちょっと面倒そうなので,更に代わりに
かつ 」を考えることにします

から,y={1/(t+1)}x-{2/(t+1)}+tが得られますが,
分母が0になるt=-1の場合は別に考えなきゃいけません。
まずはt≠-1の場合について考えます
tがあれこれ動いたときに,直線x=x_0上でyがどのような範囲を動くのか考察します。



x_0と2の大小によって状況が変わるようですね



x_0=2のときは,そもそもf(t)=tになってしまいます



次はt=-1の場合を考えます。このときは直線x=2を表すみたいです




あとはまとめればOKですね
ただしについても触れなくてはいけません。
tが実数全体を動いたときにを満たす(x,y)の存在域は上の考察から分かりますが
その領域上の各点(X,Y)とtに対してsをによって定めることが出来るので
かつ」を満たす(x,y)の存在域もまた上で求めた領域と一致してしまいます





ちなみに,「かつ」を考えると,
どちらも同じ領域が出てきます

xをx=x_0に固定するのではなく,yをy=y_0に固定してもOKです,
というかそっちのほうが2次関数なので簡単です
その場合の計算はほぼ次に挙げる解法と変わらなくなります~


考え方3
すべての実数を動くs,tを変数とする2変数関数y(s,t)=s+t-1の値域は全実数です。
そこでYを定数として,y(s,t)=Yを満たすs,tに限定してx(s,t)=st+s-t+1の値域を考える方針です

s=-t+Y+1であるので,x(-t+Y+1,t)の値域を考えればよいわけですね




考え方4
2次方程式が実数解を持つ条件の議論を利用した解法です。
まぁ,考え方1と大体同じですが~

s-1とt+1の和と積が与えられているとみなします



あとは図を描くだけですね

2012年東北大入試理系数学第1問その1

2012-06-25 03:32:12 | 大学入試問題
どもども。


今回からは今年の東北大入試理系数学の問題をやっていこうと思いますです~
と言いますのも,当方,現在宮城県在住なものでして,
そういうのもあってここらで東北大の問題でもやっつけましょう~っていう話なわけであります

そんなわけで今年の問題を見てみますと,
難易度的には並,といった感じで標準的な入試問題っぽいセットになってます。
簡単そうに見せかけといて,意外とうっかりつまずいちゃうかもしれない,
しかもそのまま動揺が止まらなくなってしまうかもしれない,
そんな予感がするのは1,5,6あたり?
落ち着いてやれば決して出来ないことはない問題ですので,頑張って泥沼に沈まないようにしたいところです。

ではでは今回は第1問です
問題はこちら


2つのパラメータs,tが動くときの(x,y)の存在領域を求める問題です~
こういうの嫌いな受験生,多いんじゃないでしょうか
考え方は幾つかあるので,その場その場で上手く使い分けられると素敵です
そんな幾つかの考え方を使って解いていってみます。

考え方1
(X,Y)という点が答えの領域に含まれているとしましょう~
ということは,何かしらのs,t(s≧0,t≧0)が存在して
X=s+t+1,Y=s-t-1を満たしているわけですね。
それじゃあ,具体的にその「何かしらのsとt」を求めてしまいましょうという作戦です。
実際にその「何かしらのsとt」が求められたのなら,
確かにこの(X,Y)という点は答えの領域に含まれているわけだといえますね。




X=s+t+1,Y=s-t-1を満たす(s,t)がもしも存在するのなら
それはs=(X+Y)/2,t=(X-Y-2)/2 というモノでなければならない。
そして実際にこのようなものが存在するのはX+Y≧0かつX-Y-2≧0という条件を満たしているときである
という理屈ですね~~


考え方2
sとtという2つのパラメータがあるから話がややこしくなるんだ~
じゃあ~1個消しちゃえばいいじゃん~~
という発想です。
x=s+t+1……,y=s-t-1……
の2式を使えばsとtのうち片方を消去することが可能です。
例えば足せばx+y=2s……,引けばx-y=2t+2……
が得られますね。ただし,注意しなきゃいけないことがあります。
かつという条件はかつと同値なので,
くれぐれもだけを考えておしまいにしないようにしなきゃならんのです

さて,の考察ですが,これはsをパラメータとした直線を表していますね。
s(≧0)が動くことによって様々な直線を表します。
これらの直線の合併集合を考えることによってを満たす(x,y)の存在領域が分かります。
そこでその合併集合の中で特にx=x_0である部分を考えます。
つまりxを固定する,とか,縦の切り口を考える,とか,そういう作業です
sがあれこれ動いたときにyはどのような範囲を動くでしょうか。
x_0ごとにそれを考えてそれを合体させれば全体の形が分かります。

一方でもまたtをパラメータとした直線群を表しますので,こっちも同じように考察してください。
両方を同時に満たす領域が答えです





上の解答の中では「s≧0,t≧0よりx≧1なので」などと触れていますが
を考える上ではs≧0だけ考えれば実際は十分です(にはtとかは無関係なので)。


考え方3
x=s+t+1をs,tに関する2変数関数だと思いましょう。
s≧0,t≧0のときのxの値域はx≧1です
そこでX(≧1)を定数として,x=Xとなる(s,t)全体を考えます。
そのような(s,t)たち限定で2変数関数y(s,t)=s-t-1の値域を求めるという発想です




考え方4
x=s+t+1,y=s-t-1をベクトル表記して
(x,y)=s(1,1)+t(1,-1)+(1,-1) と書いてみましょう
変形して, (x-1,y+1)=s(1,1)+t(1,-1)
この右辺は1次独立なベクトル(1,1)と(1,-1)の1次結合になってるわけですな
普段我々が使うxy座標は,(x,y)=x(1,0)+y(0,1)と書き直すことが出来て,
(1,0)方向の成分がxで(0,1)方向の成分がyであるという解釈が可能でした
それと同じ考えをすればいいんですね~





長くなってきたので(2)は次回に回します~
今回と同じような手法などでやっていきます~



2012年京大入試理系数学第6問その3

2012-06-23 01:45:33 | 大学入試問題
どもども。

今回も前回・前々回に引き続き今年の京大入試理系数学の第6問が主題です

問題:http://www.yozemi.ac.jp/nyushi/sokuho/recent/kyoto/zenki/sugaku_ri/mon6.html
前々回:http://blog.goo.ne.jp/mathnegi/e/5db101a423ac4dfec98e19f118e41750
前回:http://blog.goo.ne.jp/mathnegi/e/2943822d5ce9f8720cd2b44d749d8ffd

既に述べたように,この問題は連分数を題材にした確率の問題です。



登場する分数の分子が全て1であるものを正則連分数と呼びます
この連分数を[X_n;X_{n-1},X_{n-2},…,X_1]と書くことにしましょう。
(連分数の表記法としてよく使う方法です)
すなわちY_n=[X_n;X_{n-1},X_{n-2},…,X_1]です
いまは正則連分数[A_1;A_2,A_3,…,A_n,…]としては常に,A_1が整数,A_k(k≧1)は自然数であるもののみを考えるものとします。
またn個の成分で表現できる[A_1;A_2,A_3,…,A_n]型の連分数をn階層の連分数と呼ぶことにしましょう
今回の問題ではX_1,X_2,…,X_nの数字をサイコロの出目で決めよう,という
なかなか面白いことをやっています。
その際に (√3+1)/2≦[X_n;X_{n-1},…,X_1]≦(√3+1) となる確率p_nを
求めなさいというものでしたね~。凄まじいです
前回までは不等式評価と確率漸化式を駆使してこれを解いたので
あまり連分数の色合いはあまり感じられませんでしたので,
今回は(√3+1)と(√3+1)/2の正則連分数表示などを駆使してこの問題に挑んでみたいと思います


さてY_nは有理数ですので,Y_n=(√3+1)/2 または (√3+1) となることは無いです。
すると,条件式: (√3+1)/2≦[X_n;X_{n-1},…,X_1]≦(√3+1) は無理数を含まない形で書き換えられるはずです。
サイコロを振って作られる [X_n;X_{n-1},…,X_1] は 6^n 通りしかないので,
その中にはY_nの最小値と最大値があります。それを用いることで上の条件は書き換えられるってわけです

そんなわけで,(√3+1) と (√3+1)/2 の正則連分数表示を求めるところから始めましょー

x=√3+1 を解とする有理係数2次方程式を利用する方法がこちら




出てきたxをひたすら置き換え続けていくという単純な手法です。
これによって√3+1=[2;1,2,1,2,1,2,1,2,1…]であることが分かりました

もう1つのやり方を紹介します。ガウス記号[ ]を使って実数をひたすら
整数部分と小数部分に分解していくやり方です



√3+1と(√3+1)/2が交互に現われるので(√3+1)/2の連分数表示の方も即座に求められてしまいます
かくて,
√3+1=[2;1,2,1,2,1,2,1,2,1…]
(√3+1)/2=[1;2,1,2,1,2,1,2,1,2…]

であることがわかりました

これを基にして,n階層の正則連分数 a_n,b_n を次のように定めます。



ここで,√3+1とa_nの大小関係に関して次の補題を証明します




√3+1とa_nの大小関係はnの偶奇によってころころ入れ替わるようです
同様に(√3+1)/2とb_nの大小関係にも触れておきます。




さて,n階層の正則連分数(分数の中に出てくる数字は自然数ばかりのものを考えてます)の中で
最も√3+1に近いのがa_n,(√3+1)/2に最も近いのがb_n になっています。
実数を小数で表示したとき,例えば 3.1415<α<3.1416 を満たすαは
α=3.1415******…… の形で表示されますが,同じようなもので
√3+1<α<a_{2k} を満たすαはやはりα=[2;1,2,1,2,1,…2,1,*,*,*,…](2k階層までは2,1が続く)
という形で表示されます。

そんなわけで, (√3+1)/2≦[X_n;X_{n-1},…,X_1]≦(√3+1) の書き換えが得られます



6^n 個あるY_nの組み合わせのうち,上記の条件を満たすものはいくつあるんでしょうか
実際に場合の数を計算してみます。
どんな要領か知るために,p_2とp_3なんかを求めてみましょう



各階層の分数を大きくしたり小さくしたりというのを使い分けなきゃいけないぽいです



それを踏まえてnの偶奇で状況を分けて考えてみます
更にはX_nが1か2かによっても場合分けします。



(1)~(3)までの3パターンに分類できるので,それぞれの個数を足し合わせればOKです
X_n=2の場合も同様です~



Y_n<a_n なのでa_nは含んではいけません。注意しましょう

あとは足すだけですね



となり,前回までに求めた答えと一致しました
よく見ると1≦ℓ≦k-1みたいな条件式が途中入っていたのでk≧2での議論に
なってたぽいですがk=1でもこの結果は正しいですね。

お次はnが奇数の場合です~~







こちらも結果が一致しました
すべてのkに対して合ってます。


…というわけで,長々とした考察になりましたが無事に答えが導けました
しかしながら,そんな苦労しなくても前々回の最初にやったように,
漸化式立ててアッサリスッパリ解いちゃうことが出来ちゃうんですね~

とても面白い問題だったと思います