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ターミネーター4◆未来的ロボット博と悩める男の物語

2009-06-11 17:19:20 | <タ行>
  

  「ターミネーター4」 (2009年・アメリカ)
   TERMINATOR SALVATION

この「ターミネーター」シリーズは、荒唐無稽ながら先行きがとても気になる作品で、不満の残る第三作も含めて好きな娯楽シリーズのひとつ。SF映画としてはタイムトラベルというややこしい要素が物語の先行きに次々と影響を与えていき、いくらでも続編が作れそうな映画だなと思っていたら、やっぱり新シリーズとして第四作目が公開された。1984年の第一作からは実に四半世紀も経っているわけで、息の長い人気シリーズであることは確か。旧来のファンをくすぐるおなじみのセリフや、敵役のターミネーターの造形、世界観など、連作としての押えどころはきちんと踏襲しながら、今回はシリーズ初の未来世界を描くアクション大作となっている。

時は2018年。軍事コンピュータ・スカイネットが起こした核攻撃「審判の日」(2011年に勃発?)以降の未来。滅亡の危機に瀕した人類側は抵抗軍を組織して、スカイネットの機能を停止させる作戦に出る。これが成功しなければ、機械軍による重要人物の暗殺計画は実行されて、リストに名前が挙がったジョン・コナー(クリスチャン・ベイル)と、その父親となるカイル・リース(アントン・イェルチン)は抹殺され、人類は反撃の切り札を永遠に失ってしまう。レジスタンスの部隊長として目覚ましい活躍ぶりを見せていたコナーは、カイルがロサンジェルス郊外にいることを知り、救出指令を出すが、カイルは機械軍にとらえられ、スカイネットの本拠地に送られてしまう。この情報をもたらした謎の男、マーカス・ライト(サム・ワーシントン)が、機械とのハイブリッドであることを知ったコナーは、マーカスを刺客と疑い拘束する。一方、総攻撃の作戦を着々と進める司令部は、捕虜の救出を願い出たコナーの申し出を却下。コナーは、ラジオを通じて全国の兵士たちに攻撃の中止を呼びかけるとともに、カイルの居所を知っているというマーカスに、一か八かの希望を託す・・・・・・。

成長したコナー役に「マシニスト」「ダークナイト」のクリスチャン・ベイルという申し分のない役者を配しているが、期待していた割には存在感がいまひとつ。人類の救世主としての貫禄が出るのは次回作以降に先送りといった感じだ。これとは対照的にひときわ光彩を放っているのが、脳と心臓以外を機械に置き換えられた元死刑囚のマーカス。2003年の死刑執行後、セレーナ・コーガン医師(ヘレナ・ボナム・カーター)との検体承諾契約によって15年後に復活させられたマーカスは、自分が何者かを知らず、人間か機械かに悩み続ける。こういった設定が、第一作のカイル・リースに通じる一種の哀愁を帯びた人物像をスクリーンに結び、寡黙で武骨ながら忘れられない印象を残した。マーカス以外の登場人物は総じてインパクトに欠け、脇役陣の描き方は分散的で薄味だと感じた。

ところでコナーと彼の父親となるカイルが同じ時空間に存在することの不思議さは、タイムトラベルものにつきまとう矛盾として目をつぶるとしても、この時点で機械側がカイルとコナーを暗殺リストの筆頭に置いているのはなぜだろう? 今回の人類抵抗軍の総攻撃でスカイネットの本拠地が壊滅状態になり、過去へターミネーター(T-800)を送り込んでサラ・コナーを抹殺する以外に打つ手はなくなるというのが当初の筋書きだったとすると、本拠地が破壊される前からコナーとカイルが暗殺リストに載っているのは妙だ。「死にたくなければついて来い」というカイルのセリフや、単身スカイネットに乗り込むコナーの「I'll be back」という言葉はじめ、シリーズ過去作へのオマージュは随所に感じられるのだが、もう少し大もとの部分に心を砕いてほしいと思う個所もあった。

もっとも鑑賞中はそういう矛盾にいちいち頭を悩ます暇はない。次から次へと繰り出される迫力満点のアクションには目を見張るばかり。スカイネットの機械軍団も見ごたえたっぷりで、メカ好きにはたまらないロボット博覧会といった趣。しかし、ターミネーター・シリーズの醍醐味は、機械たちに運命を翻弄される人間側のドラマにこそあると思いたい。主演に実力派のベイルを抜擢したのなら、作り手も次回作はそれを生かす方向で脚本づくりに挑んでほしい(満足度の8つめの★は次回作以降への期待度です)。


満足度:★★★★★★★★☆☆


<作品情報>
   監督:マックG
   製作:モーリッツ・ボーマン/ジェフリー・シルバーほか
   製作総指揮:ピーター・D・グレイヴス/ダン・リン/ジン・オールグッドほか
   脚本・原案:ジョン・ブランカトー/マイケル・フェリス
   キャラクター創造:ジェームズ・キャメロン/ゲイル・アン・ハード
   撮影:シェーン・ハールバット
   視覚効果スーパーバイザー:チャールズ・ギブソン
   音楽:ダニー・エルフマン
   出演:クリスチャン・ベイル/サム・ワーシントン/アントン・イェルチン
       ムーン・ブラッドグッド/ブライス・ダラス・ハワード/ヘレナ・ボナム・カーター

         

<参考URL>
   ■映画公式サイト 「ターミネーター4」
   ■関連商品 「Terminator: Salvation」オリジナル・サウンドトラック(米国輸入盤)
           「ターミネーター4オフィシャル完全ガイド」(小学館集英社プロダクション)
 
 


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは (まりっぺ)
2009-06-14 12:19:08
スカイネットも旧シリーズの内容を知っている、新しい時間軸の話だったりもするんでしょうかね?
まりっぺさん、こんばんは~ (masktopia)
2009-06-15 21:09:56
そうですねぇ・・・
一度タイムトラベルをすると別の時間軸ができるのかもしれませんね。
あぁ、それで知っていたってことですかね?w
こんばんは。 (hash)
2009-06-17 01:19:17
面白いけど、物足りないという感じでした。

>過去作へのオマージュ
ここにこだわりすぎていたように思います。
ラストはT2とほぼ同じで、少し興ざめでした。

>脚本づくりに挑んでほしい
そうですね。
期待したいと思います。
hashさん、こんにちは~ (masktopia)
2009-06-18 17:00:34
たしかに物足りなかったですねぇ(苦笑)
とくにジョン・コナーの見せ場がなくて
マーカスのお話に終始していました。
せっかくなので、彼も続編で登場するように
話をつなげればよかったのに・・・と個人的には思いました。
当然のように移植に同意するラストもあっけなかったです。

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