ことばと学びと学校図書館etc.をめぐる足立正治の気まぐれなブログ

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災害と図書館

2005年02月26日 | 知のアフォーダンス

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 2月21日、神戸市立中央図書館と日本図書館研究会の共催によるシンポジウム「災害と図書館 災害時における図書館の役割を考える」に参加して、フロアから学校図書館メーリングリスト(sl-shock)のメンバーによる「新潟中越地震で被災した学校図書館支援ボランティア」の活動を報告させていただきました。具体的な活動内容は、ウェブログに掲載してありますが、シンポジウムでは次のことを話しました。 

私自身の阪神淡路大震災の経験 <参考>つながりを活かす学校図書館

次の3点に集約されます。

 

1.被災直後の資料の救出と保存に関する反省

 当時、600㎡あまりの図書館に約6万冊の蔵書を抱えていたが、全壊、半壊認定を受けた校舎内での作業が緊急性と危険性を伴っていたこともあって、ボランティアなどの人手が大量に投入されたにもかかわらず、今後の利用を考えて資料をきちんと選択、整理して保存することができなかった。とりあえず倉庫に保管された資料は2年間利用されることもなく、新しい図書館への配架にもかなり手間取った。また、配架後に不要と分かって廃棄する資料もかなりの数に上り、処理や手続きに手間取った。ということもあって、できれば学校図書館のことがよく分かった人による支援が望ましいと考えた。

 

2.仮設図書室の利用状況

 仮設校舎の1教室半を図書室にあてたが、スペースや資料数、新規構入冊数が極端に少なくなったにも関わらず、図書室の利用や貸出冊数が大幅に増えた。運動場が仮設校舎で埋められ、他に行き場がなかった、ダウンサイジングによって生徒と密着したケアができるようになった、被災により子どもたちが、これまで以上に精神的な充足を求めるようになった、などの理由が考えられる。この経験が再建後の図書館利用に何らかの影響を与えたと考えられる。

 

3.被災から再建までの過程で、あらためて「学校図書館とは何か」を考え、教職員、管理職、理事会を巻き込んだ議論をする機会が得られ、教職員の学校図書館に対する関心が高まった。 

新潟中越地震の支援にあたって考えたこと

 

1.阪神淡路大震災の経験を踏まえて、被災後の学校図書館の復旧には、①資料や図書室の復旧、②震災後の図書館の役割、③今後につながる支援という3つの視点を押さえておく必要があると考える。

 

2.学校図書館復旧の緊急性、優先順位について

 ライフラインの復旧、被災者のケア、学校の授業再開などが優先されるべきであることはいうまでもない。では、学校図書館の復旧はそれほど急ぐ必要はないのか? しかし、ニーズ(現地からの要請)があった。子どもたちが学校に戻っても、自らも被災者である先生や保護者の活動には限界がある。図書館担当の先生や地元の学校図書館支援グループが通常の動きを再開できるまでの「つなぎ」が必要だった。

 募金や本の寄付などは、じっくり腰をすえて継続的に行えるが、中越の場合、現地に出向いて行う図書室の整備や読み聞かせなどは大雪で動きが取れなくなるまでにやる必要があった。

 

3.ニーズの把握とボランティア志願者とのマッチングについて

 私たちはメーリングリストという小さなネットワークを使って身の丈に合ったボランティア活動を行えたが、本来なら、しかるべき組織あるいは公的機関がいち早く被災状況に関する情報を収集して一般に公開すべきだろう。今回も、もし組織的に収集した情報をインターネットで発信し、つねに新しい情報に更新して、より信頼性の高い情報を提供していくことが行われていれば、sl-shockだけでなく、もっと多くの人たちがボランティアとして効率よく動けたのではないか。

ボランティア活動の流れ

 

10月23日 新潟中越地震発生

10月24日 メーリングリスト上で、管理人が新潟の状況と図書館の様子を尋ねる

      メンバーからも、自分たちにできることは何ないか考えるメールが投稿される

10月25日 新潟県小千谷市の学校司書より、被害について報告あり

      新潟市内の他のメンバーから、被害について報告あり

      図書館分野でのボランティアの可能性について、議論がおこる

10月27日 図書館の復旧ボランティア、読み聞かせによる心のケアについて議論される

10月28日 募金を集めるための口座開設を計画 メーリングリストに情報を流す

11月 7日 口座開設、活動を知らせるチラシ作成

      募金についてのメールが、sl-shock以外のメーリングリストにも転送される

      チラシを印刷して配布する人、サイトに掲載する人、機関紙に紹介する人あり

11月10日 長岡市、川口町の小学校に、メールを通じて学校図書館ボランティアを申し出る

11月11日 長岡市の小学校校長から電話があり、読み聞かせを依頼される

      現地へ行くボランティアをメーリングリストで募集する

11月12日 長岡市教育委員会へ情報が伝わり、電話とメールももらって打ち合わせる

      教育委員会から市内の小学校へ案内がまわり、4校から図書室復旧や読み聞かせ依頼

11月13日 しおり作りのボランティアをメーリングリストで募集する

11月15日 長岡市へ状況把握のため下見に行く

11月17日 オススメの本ポスターを作成するボランティアを、メーリングリストで募集する

11月21日 長岡市A小学校へ、図書室復旧ボランティア(後、読み聞かせも含め計3回訪問)

11月22日 長岡市B小学校へ、読み聞かせボランティア(後、図書室整理も含め計5回訪問)

11月24日 長岡市C小学校へ、図書室復旧、読み聞かせボランティア(2日間滞在)

11月30日 長岡市D小学校へ、図書室復旧、読み聞かせボランティア(計2回訪問)

12月 2日 川口町E小学校から、メールで、図書室復旧ボランティアを依頼される

12月 3日 出版社、図書館用品メーカーに本や装備品の寄贈をメールでお願いする

12月 4日 小千谷市F小学校から、読み聞かせボランティアの依頼がある

12月 9日 小千谷市F小学校へ、読み聞かせボランティア(計2回訪問)

12月10日 新潟市下の読み聞かせボランティアグループ①と連絡をとりあう

12月13日 川口町E小学校へ下見に行く

12月19日 川口町E小学校へ、図書室復旧ボランティア(東京より貸切バス、46名)

      読み聞かせの会も2回実施、12月23日に再訪

12月20日 ボランティア活動報告のためのホームページを開設

       http://milch.cocolog-nifty.com/slshock/

12月21日 川口町E小学校 図書室の図書原簿をエクセル入力する手伝いをはじめる

      自宅で入力してくれるボランティアをメーリングリストで募る

12月23日 現地の読み聞かせボランティアグループ②と連絡をとりあう

1月~   寄贈本の選定作業に入る

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