まりはな屋

地方都市で、清貧生活  

天女

2007年08月24日 16時07分55秒 | きれいになりたい?
モデルの山口小夜子さんの訃報は、少なからずわたしを驚かせた。

「生きていくことは知人の死を見送ること」という言葉がある。

もちろん、個人的に小夜子さんを知っているわけではない。

しかし彼女に限らず一世を風靡した有名人の死は

ひとつの時代が去ったようでさびしい。

どの時代が終わったとはっきり言えるわけではないが

とっくに過ぎ去った少女時代かもしれない。

わたしと同世代で小夜子さんを知らない女性は少ないだろう。

「ジャパニーズビューティー」「アジアンビューティー」と評されるけれど

神秘的なまなざしと美しい黒髪は日本人だからというよりも

彼女にしかない魅力だったと思う。

「目力」というものが騒がれて久しいが

アイラインやアイシャドウで目を囲み、

マスカラを塗り重ねて目を大きく見せる目力とは対極の目力を

小夜子さんは持っていた。

大きさよりも切れ長を際立たせる化粧、伏し目がちであったり

視線を微妙にずらして、こちらを見据えないまなざしの強さと美しさ。

全身で人を惹き付ける表現者であったからこそ

モデル以外の分野でも、長く活躍し続けていたのだろう。

彼女のような表現者ならともかく、ごく普通の女性が

個性とか自分らしい美しさを確立するのは難しい。

ともすれば、テレビで活躍するタレントや雑誌を飾るモデルの真似をしがちだ。

街を歩けばいくらでも「XXに似た化粧」をした女の子を見ることができる。

そのことを全面否定する気はない。

ただ、いつか真似から脱却しなければ

みんな同じ、のっぺらぼうになってしまうと思うのだが。

みんな同じことに安心を覚えるのは不気味なことではないのだろうか。

そんなことを考えながら追悼記事に目を落とすと

写真の小夜子さんは、どこか遠くを見つめていた。
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