ショコラのこと

２０１１年の頃

６歳か７歳の頃。

まるまる太って、目もぱっちりしている。

ノンタンがいたころ。

あとからくせに、ノンタンを追いかけて困ったときもあったけれど。

いつのまにか、寄り添って寝そべっていたね。

ノンタンに舐めてもらって、ノンタンのごはんも食べて、

たぶん、幸せだったショコラ。

 

最初はやせて、毛並もぼさぼさだったのに、

この頃は、すっかりつやつやになっていた。

動物病院で、レントゲンの姿が、

ずいぶん変わりましたね、と笑われた頃。

 

人間はケージを片付けて、食器を片付けて、

敷物なんかも洗って、捨てるものは捨てて。

うさぎがいなくなったから、やっぱり旅行に出かけた。

寝転んで食べている、ショコラみたいな羊。

それから、

 

亡くなりました。

昼休みに帰ったときには、まだ、かすかに息をしていました。水も何も飲めなかったので、すこしだけなでて会社に戻りました。

夕方帰ったときには、固くなっていました。まだ、すこしだけ温かかでした。

庭に穴を掘り埋めました。

おやすみ、ショコラ。

しばらく、うさぎはお休みです。

よく生きた立派なうさぎでした。

かすかに

鼻が動いている。

ドクダミを近づけると、
匂いをかぐ。

だけど、
食べようとはしない。

せっかく人参の葉っぱ、
みつけたのにね。

撫でてみる。

鼓動がする。

生きてるショコラ。

人間は何もできないので、
買い物に行き、
ご飯を作り、
テレビなんかも見たりして、
時間がきたら眠る。

時々、
ショコラの様子を見て、
何もできないなと、
撫でてみたりする。

撫でられても、
抱き上げられても、
ショコラは無反応だ。

ただ鼻がわずかに動き、
お腹が少しだけ上下する。

おやすみ、ショコラ。

今日のうさぎ

毛皮は、ふかふかだし、耳の毛もつやつやしている。
なにも変わらないショコラ。

不思議だね

金曜日、好物のドクダミの葉を近付けたら、食べたいという。半分にちぎって口元に持っていったら、少しずつ口の中に引き込まれていく。一生懸命、噛んでいる。なかなか飲み込めない様子だったので、少し水を与える。半分残った歯形のついた葉っぱを口から出してしまった。もう、食べられないらしい。

土曜日、野菜を絞ってシリンジで飲ませようとするが、飲み込まない。甘いリンゴも、甘い薬も飲み込まない。水も口から垂らしてしまう。横になったままでも、立ち上がった形に抱き上げても同じだったりする。

左右の目は、ずっと膿でふさがってしまっている。少しだけぬぐっておく。目の下は禿げて毛のはえる気配もない。

抱き上げる体はぐにゃりとして保てない。肉という肉は落ちてしまって、骨格標本を毛皮で包んだような感触だ。横たわったまま、かすかに息だけしている。

こんな状態で辛くはないのだろうか。

と、思ってみていたのに。

日曜日、朝5時。たまたま目が覚めたからうさぎの様子をみる。水を飲むかと、シリンジを差し込むが飲み込まない。からだの向きを代えようと持ち上げると、少しだけ糞が落ちている。固めの粒と柔らかい糞、匂いをかいでみると、下痢の悪臭ではなく、食糞の匂いのようだ。

この体の状態で、食糞が作れるのだろうか。でも、もう飲み込めない状態で、食糞が出ても…。

試しに口元に近付けてみる。

食べたいと頭を動かす。指先にのせた食糞を必死になって舐めていく。

えらいな。うさぎ。

水を少しだけ飲まそうとしたが、もう舌を動かさない。

よく頑張って食べたね、うさぎ。おやすみ、うさぎ。

とりあえず

シルバーウィークの旅行はキャンセルということで。
でも、今日はほとんど食べていないし、だしていないのだけど。
ま、いいか。

それでも

やっぱり、もう少し生きていてほしいと願ってしまう。
もっと側にいられる時間があれば、お腹がすいたとき、喉がかわいたとき、すぐに食べさせて、飲ませて、あげられたのにね。病院も、連れて行ったほうがよかったのかもしれない。こんなに弱る前に。
少しだけ、流動食を食べさせてみる。リンゴにパセリに、ケールだから、食べられるよね。
無理強いだねぇ．
ごめんね、ショコラ。

食べますか？

ほとんどの時間、ショコラはただ寝ている。かすかにお腹が動くのが、生きている証だ。近づくと、頭を持ち上げる時がある。何か食べたいか、水が飲みたいか。

たぶん、人間が留守にしている長い時間、ショコラはお腹がすいても、喉が渇いても、ただじっと寝ているのだろう。そうやって、わずかな体力を、わずかな水と食事で維持している。

辛いのかもしれない。だけど多分、諦めのよいうさぎが、生きることを諦めてしまうほどは、辛くないに違いない。

今日も春菊はおいしかったね。
明日は何を食べようか？

意外に強い？

食べられなくなったら危ないと言われているうさぎなのに、ほとんど食べていないショコラは生きている。
これほどはないくらい骨と皮にやせて、毛皮がなければ痛々しくて見ていられないだろう。でも毛皮があるからね。

寝たきり生活でひとつだけよくなったことがある。長年の持病だったソアホックだ。寝たきりなので足の裏に負担がかからなくなったので、ふかふかになった。今までおデブだったから足の裏はたいへんだったね。

ショコラはまだ、少しだけ頭を動かすことができる。ほんの少しの野菜と、ほんの数粒のペレットを、何回も何回も噛んでなんとか飲み込んでいる。自力で水が飲めなくなって随分たつけれど、最近はシリンジから水を飲むようになった。小さい小さい粒だけれど、糞も出ている。少しずつ年もとるから少しずつ弱るのも仕方がない。

だけど不思議な生命力で、
ショコラはまだ、生きています。