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なかなか勝てない馬がいる。今日もその馬が走る。
がんばれ、と声が出る。
まなざしは、ゴールの先を見つめている。

海の見える病院 語れなかった「雄勝」の真実

2021年01月03日 10時52分42秒 | 読書・文学


若いのに、寝転んだまま何もしようとしない人もいる。
「若いくせに、寝てばかり」
あとになって、その理由がわかった。
津波を見ている人と、見ていない人には大きな違いがあるのだ。
津波の恐怖を経験した人は気力が萎えてしまって、ほとんど動けない。
それほどショックを受けていた。

書き残した弔辞がある。
「あなたと交わした最後の言葉が、今でも私の頭の中から離れることはありません。
なぜ?なぜ14日のホワイトデーに会えないなんて言ったのですか?
こんなことなら、ちゃんと14日に渡して欲しかった。
なぜ千年に一度の津波が、あの日だったのか。
本当に悔しい!」

志津川病院は、今回の津波の被害で71人の入院患者が命を落とし、
看護師ら3人も犠牲になった。

その財布の中から、ポロリと写真が落ちてきた。
ボロボロになった写真には、七五三のときの兄妹がなにかんだ笑顔で写っている。
そしてもうひとつ。
財布の奥に紙切れがあった。
幼稚園のときにつくった「かたたたきけん」だった。

雄勝町は震災直後、完全に孤立っしていた。
家屋の8割が流出していて、多くの住民が避難所に詰めかけた。
だが、食料や毛布などの物資が届かない。
重症患者を病院に運びたいが、救急車もないし、
治療を受けられる石巻赤十字病院への道は閉ざされている。
町の外に出るには、雪深い真野林道が唯一の経路だった。

孤立した雄勝町をどう救うか。ほとんど寝る暇がなかった。
とくに夜の寒さには閉口した。
いくら焚き火で暖をとっても、芯まで冷え切った体は容易には温まらない。

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