八十八夜

学生時代から大好きなマンガの2次小説です

Precious name おまけ

2023-01-06 08:00:00 | Precious name(完)

 

 

あたしたちの一日が終わろうとした時に…。

突然、道明寺が言い出した。

「俺、今日からここに住むから。」

 

へっ?

なんて言ったの?

ここに住むって言ったよね…。

 

黙っているあたしに、道明寺の信じられない言葉。

「このマンション、お前と住む為に建てたからな。」

 

えっ?

マンションって、住む為に建てるの?

いや、住む為のマンションなんだけど…。

今、道明寺って『あたしと住む為に建てた』って言わなかった?

 

「このマンションからだと、会社もメープルも近くて便利だろ。」

なーんでご機嫌で話している道明寺。

 

ずっと気になっていたことを聞いてみた。

「ここって、あたし以外にも誰か住んでいるの?」

 

実は、このマンションに住みだしてから、

コンシェルジュのおじさん以外、誰にも会ったことないんだよね。

 

「1フロア下に、お前専用のSPが住んでるぞ。」

こんな簡単な返事が返ってきた。

 

あたしにSP?って思ったりもしたんだけど…。

道明寺ってそんな奴だよね。

 

「引っ越しの挨拶周りに行った時、誰もいなかったのがやっとわかったわ。」

「挨拶周り?新年の仕事か?」

 

あぁ…。

道明寺は、引っ越したらご近所に挨拶するってことを知らないんだ…。

そうだよね、道明寺だもん。

 

あたしは、引越ししてからずっと気になっていたことを聞いてみた。

「このフロアって、他に玄関がないの。ここだけってのも変なんだよね。これって、あんたの設計?」

 

あたしの疑問に、道明寺は信じられないことを言ってきた。

「あぁ。こっち側の壁、張りぼてなんだよ。」

 

嘘でしょ?

張りぼてってコントじゃないんだよ。

 

唖然としているあたしに

「お前が住むには広すぎるって、西田が言うからよ。俺が住むまで、コンパクトにした。」

こんなことを、道明寺は言ってきた。

 

ぜんぜんコンパクトなんかじゃないでしょ。

ビックリしているのか、呆れているのか?

あたし自身、自分の感情がわからない時に─────。

 

「明日の昼から、こっちの壁を取りに業者が来るから。明日から牧野は、寝室移動な。」

当然のように、道明寺が言ってきた。

 

このマンションに住みだして…。

変だとか、おかしいって思っていたことが、やっとわかったんだけど…。

まさか、こんなことになっていたなんて!

あまりのことに、言葉も出てこない。

 

そして、道明寺は、

あたしの腰に腕を回して、耳元で囁いてきたの。

「俺、明日はゆっくりの出社でいーんだ。一緒にシャワー?それとも、このまま寝室?」

 

この道明寺の言葉に、ハッとした。

道明寺は、あたしの寝室へ向かっている。

 

あたしのクリアブックは?

リビングにもキッチンにも無かったから、絶対に寝室にある。

 

「ど、道明寺。先にシャワーに行く?あたし、後で良いから。」

その間に、クリアブックを隠すって思っているのに…。

 

「後で牧野と一緒に入る。」

って、完全にスイッチの入っている返事。

 

ぎゃー!

どうしよう。

 

寝室のドアが開いた瞬間!

あたしは、ベッドの上にあるクリアブックへ向かってダイブした。

 

バレてないけど…。

明らかに不審な顔の道明寺。

 

ベッドにダイブしたのがマズかった。

余計にバレてしまったかも…?

 

ヤバイ!

このクリアブックってA4サイズ。

どこにも隠せられない!

 

ギュッと胸に抱きしめたクリアブックは、問答無用で道明寺に取り上げられた。

道明寺の顔を覗き込むと…。

 

見るのが恥ずかしいくらいの笑顔で、

「俺と会えねー時、こんな可愛いことをしていたのか?」

って言いながら、あたしをベッドに押し倒してきた。

 

やっぱり見つかってしまった…。

朝にした溜息が悪かったのかな?

 

でも…。

滋さんの名前では、何年も悩まされたんだよ。

しかも、滋さんとあたしは親友だから、羨ましく思ったり、妬ましく思ったり…。

この部屋の壁は、張りぼてだったし…。

道明寺のお母さんの話は、早く聞きたかったし…。

マスコミ対策のことだって、もっと早くに教えてくれたら良かったのに!

 

道明寺の色っぽい顔が、近づいてきた。

でも…。

あたしだって、少しくらい反撃しないとね。

 

「春から原田くんも、あたしと一緒に道明寺に入社なの。よろしくね、道明寺専務。」

あたしの言葉と同時に、道明寺の動きが止まった。

 

青筋だらけの道明寺に、説教された後で…。

原田くんにはきちんと断るって約束をさせられた。

 

「俺も、一緒に行く。」

なんて言い出したんだけど…。

 

入社後のことも考えて、あたし一人で必ず断ってくることになった。

しかも、あたしの近くにはSPさんが待機って約束までさせられた。

 

こんな風に、道明寺とあたしの長い1日は終わろうとしていました。

勿論、このままで終わることは無くって…。

 

この後は、道明寺とあたしだけの時間。

 

 

 

 

お読みいただきありがとうございます。