『 東山温泉 』
ここ東山温泉は、子供の頃によく親に連れられてきたが、旅館の中に千人風呂という
大きなプールのような浴場があって楽しみだったが、今ではどこの旅館だったか分からない。
盆踊りが有名で二本の橋の間に櫓が建って川の周りを大きな輪になって踊る。
川面に写る明かり、旅館の窓明かりが幻想的で素晴らしいものだった。今ではどうなのだろうか。
温泉街は、原滝,向滝、千代滝、新滝と言った滝の付く老舗旅館は健在だったが中小の旅館、商店、
遊技場やら居酒屋などはすっかり寂れていて朽ち果てた建物が目についた。
過去の栄光今何処だ。寂しいものだ。今では情緒はないけれど、近代的で設備も良くきれいな旅館
ばかりの様だ。
温泉に入るのも憧れの一つだったが、心臓や血圧の病持ちには要注意だというが、そうでなくても
広い浴場で滑って転んだりの危険が多いと言われる。
つい一杯飲んでしまったのでその夜は入浴を控えた。しかしもう滅多に来ない温泉にきていて入らない
のは何とも残念だと、翌朝の朝風呂にちょっとだけ入った。川の音を聞きながら、山の緑に囲まれて
青空を見ながら足を延ばして入る温泉は気持ちが良いものだ。
生きていて良かったと思えるほどだ。最近では滅多にこんな感情はないけれど。
そんな気分に乗せられたのか、珍しく朝の散策に出た。あの先の角まで、そしてまた次のカーブ迄と
先が見えないのが幸いして、温泉の外れの「雨降りの滝」までゆるやかな坂道の温泉街を何千歩も
歩いてしまった。
久し振りの温泉浴や朝の散歩が出来たのは、非日常という旅の効果なのだろう。
朝食の頃にはもうふくらはぎが痛かった。
朝食に、好物の納豆もち(つきたて餅に納豆をつけて食べる)という郷土料理が出たのに、挑戦した
ものの入れ歯の悲しさで駄目だった。
そのあとゆっくりと若松に向かって下って行った。