ＳＡＤ

先日アタシのアパートで宅飲みをした時、Ｙ子が酔った勢いに任せてこう言った。
『Ｙ、地元を出る。やりたいことあるんだ』
やりたいことなんて、彼氏を追っかけることだろう。
本当にやりたいことなんて、雑誌を見て「あ、こんな仕事いいな」くらいの興味しかないだろうに。
と、冷たい目線で見下していた。

けど、今日、どうやら本気？らしく、電化製品を見に行くのを付き合わされた。
本気っぷりをアピールしたいんだろうけど、そう言う理由で電気屋に行くの、３回目ですから。
やれやれ、またか。そんな気持ちだった。
どうせ口だけのＹ子。地元を出るなんて無謀すぎる。
彼氏を追っかけたいだけだろうに。
温度差があるのにどうしてそう猪突猛進なの？
少しは考えなさいよ。
いつか彼氏に殴られるよ？
彼氏と付き合ってなければこんなことにはならなかったのに。
アタシがあの時、一緒に出かければよかったの？
後悔ばかりが押し寄せる。

でも本当は、Ｙ子が羨ましいんだ、きっと。
だってアタシは地元を出ることができないから。
ありえないくらいの家族の依存。
まいちゃん、まいちゃん、まいちゃん。
息が詰まる。
まいちゃん、まいちゃん、まいちゃん。
離れないで、遠くに行かないで、寂しいから。
まいちゃんがこうして傍にいてくれるから嬉しい。
まいちゃんがどこか遠くに行っちゃったら、寂しくて仕方ない。
まいちゃん、どこに行くの？誰と行くの？何しに行くの？何時に帰ってくるの？
まいちゃん、まいちゃん、まいちゃん。

涙が出てくる。
アタシにもっと強い意思があれば。
もっとメンタル面で強ければ。
何もできない。
いつからこんな内気な子になったんだろう。
すべてに自信がない。
けれどもＹ子みたいに視野は狭くないはず。
でもＹ子が羨ましい。
Ｙ子みたいにバカになりたい。