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音曲日誌「一日一曲」#171 DEEN「Brand New Wing」(Ariola Japan)

2023-09-19 05:18:00 | Weblog
2011年5月1日(日)

#171 DEEN「Brand New Wing」(Ariola Japan)





DEENの最新シングル。メンバーである池森秀一、田川伸治の作品。

DEENは93年結成の中堅バンド。これまでに38枚のシングル、18枚のアルバム、7枚のベストアルバムを発表し、1000万枚以上を売り上げている。爆発的な人気こそないもの、その実績は大したものだ。

DEENといえばビーイング系バンドのひとつ、というイメージが強いのだが、現在ではGOOD-DAYという事務所へ移籍しており、ビーイングとは袂を分たっている。

バンドの顔といえば、もちろんリードボーカルの池森秀一。というか、彼以外のメンバーがいることを知らないリスナーが多い。

まあ、CFやPVなどでは、たいていの場合池森ばかりをクローズアップしているので、無理からぬことだが。

実際には曲の作り手として、キーボードの山根公路、2代目ギターの田川伸治のふたりが果たす役割は大きい。デビュー当初の90年代には織田哲郎、栗林誠一郎らのバンド外部の作曲家の力を借りることが多く、また大ヒットはその時期に集中していたが、次第にセルフプロデュース中心に移行しており、近年の曲の大半は詞・池森、曲・山根または田川のチームによって生み出されている。バンドとしての結束はきわめて強固なんである。

さて、DEENの魅力はといえば、その曲、サウンドなどにもあるだろうが、なによりも池森の歌声にあるといえよう。茫洋としていてつかみどころがなく、でもなんだか爽やかな、不思議な魅力をもった歌声。

たとえていうと、フンフンとうたった鼻歌をそのまま録音したかのような、カジュアルな感じなのだ。

もちろん、これはあくまでも「そう聴こえる」だけであって、実際に彼の歌をヘッドホンなどでじっくり聴いてみると、あるいはカラオケで歌ってみると、鼻歌どころか細部まで非常にテクニカルであることがよくわかる。

軽く抑えめな声なので、ついつい鼻歌っぽく聴こえるのだが、その歌唱力はビーイング時代の仲間、前田亘輝にもひけをとっていない。「あっさり風味の前田亘輝」とでも言うべきか。

これが、バンドとしてはかなり地味なDEENを支持するファンが、いまだに多い理由だと思う。

きょうの一曲は、ひさしぶりのオリジナル曲によるシングル。ギターの田川による、アップテンポのダンサブルなナンバー。フュージョンなアレンジがなかなかカッコよろしい。

PVでは池森がダンサー達をバックに、小粋なダンスを披露しているので、そちらにも注目だが、なによりも事務所やレーベルを移り、自分たちだけでやりたい音楽をやろうという意気込みがビンビンに伝わってくる佳曲である。

ボーカルをオフにしてバックサウンドだけを聴いてみても、非常に演奏のクォリティが高い。

いわゆる「流行りもの」の音楽とは一線を画して、オーセンティックな音作りを目指しているのが、好感がもてるのだ。

そして、なんといっても決め手は、池森の昔とまったく変わらぬ、爽やか青春系ボイス。とても今年42才とは思えないね。

今後も、そのいい意味での「青さ」を、失わずにいて欲しいものであります。


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