NEST OF BLUESMANIA

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音曲日誌「一日一曲」#107 ブッカ・ホワイト「The New Frisco Train」(Hellhounds on Their Trail/Indigo)

2023-07-17 05:41:00 | Weblog
2010年1月24日(日)

#107 ブッカ・ホワイト「The New Frisco Train」(Hellhounds on Their Trail: A History of Blues Guitar 1924-2001/Indigo)





カントリー・ブルースの雄、ブッカ・ホワイトのナンバーより。ホワイト自身のオリジナル。

ブッカ・ホワイトことブッカー・T・ワシントン・ホワイトは、1906年(他に諸説あり)ミシシッピ州ヒューストン生まれ。

30年に初レコーディング、77年にメンフィスにて亡くなるまで、カントリー・ブルースの大御所として多くのアーティストに影響を与え続けた。たとえば、ボブ・ディランやレッド・ツェッぺリンのような白人ロック・ミュージシャンたちにも。

その特徴ある、四角くいかつい顔同様、彼の野太いダミ声は多くのひとびとの印象に残ったのである。

有名な逸話だが、彼の19才年下のいとこがB・B・キングで、すでにメンフィスでブルースマンとして名を成していたホワイトを頼って彼のもとに身を寄せたのだが、ホワイトの弾く流麗なスライド・ギターに圧倒され、「自分はスライドが弾けないが、かわりにそういう効果を出せないものか」と苦心し、あのヴィブラート、チョーキングを駆使した「スクウィーズ奏法」を生み出したという。

そういう意味では、その後のポピュラー・ミュージックにおいて主役となる楽器、ギターの演奏法にさえ少なからぬ影響を与えたひとなのだ。

さてきょうの一曲は、ホワイトが得意としたアコースティック・スライド・ギターをフィーチャーした、アップテンポのナンバー。

とにかくそのスピード感は圧倒的だ。力強く繰り出すシンプルなツービートにのせて、リズミカルなスライド、そしてエグい歌声が炸裂する。

いまを去ること40年前、そう、筆者がZEPのサード・アルバムのB面(特に4、5曲目)を聴いたとき、「世の中にはこんなユニークなスタイルの音楽があるんだ」と、目からウロコが落ちたものだが、いま思えば、それがホワイトたちの演っていたカントリー・ブルースとの最初の出会いだったんだよなぁ。

それまで学校の音楽科の時間で習っていたような、いわゆる整然とした美しい音楽ではない。ノイズ、軋みの多い、雑然とした音楽。でも、これが実に魅力的に聴こえたのだ。

もちろんそれは、時代を経るにしたがってどんどんリファインされていき、シティ・ブルース、モダン・ブルースへと進化していくのだが、そうなる前のダイヤの原石のごとき音楽、それが戦前のカントリー・ブルースだった。

ブッカ・ホワイトの、凄みある歌声、そしてとても一人で弾いてるとは思えない達者なスライド・ギター。まさにカントリー・ブルースの粋(すい)なり。

その見事なダイナミズムに、身をゆだねるべし。

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