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音盤日誌「一日一枚」#161 スモール・フェイセズ「ベスト・オブ・スモール・フェイセズ」(テイチク TECW-20475)

2022-04-24 05:55:00 | Weblog

2003年5月21日(水)



#161 スモール・フェイセズ「ベスト・オブ・スモール・フェイセズ」(テイチク TECW-20475)

一昨日取り上げたザ・フーは、元々モッズ・グループからスタートしたが、彼らと並んでモッズの代表格だったのが、このスモール・フェイセズ。

結成は意外に古く、65年。スティーヴ・マリオット、ロニー・レーンを中心にした四人編成。

同年、シングル「WHATCHA GONNA DO ABOUT IT」でデッカ(デラム)よりデビュー。ファースト・アルバム「THE SMALL FACES」は翌年にリリースしている。

67年にはイミディエイトに移籍。マリオットが69年に脱退し、その後、ロッド・スチュアート、ロニー・ウッドが加入してアルバム「FIRST STEP」(1970)を発表するまでは、スモール・フェイセズの名で活動。

次作の「LONG PLAYER」(1971)よりフェイセズと改めることになる。

このアルバムはマリオット在籍時代のベスト盤。デッカ、イミディエイト両レーべルをカヴァーしているので、彼らの軌跡を把握するにはもってこいの一枚だ。

<筆者の私的ベスト4>

4位「HAPPY BOYS HAPPY」

本盤唯一のインスト・ナンバー。キーボードのイアン・マクラガンのオルガン、そしてピアノをフィーチャー。67年録音。

これがなんともクール。ブッカー・T・ジョーンズに強く影響を受けた演奏スタイルで、ファンキー、ソウルフルで、しかもジャズィ。

ワン・ギター、しかもシンガーが兼任ということで、ギターがやや手薄な彼らだが、それを補って余りあるパワフルなサウンドをマクラガンは生み出している。彼はいわば、バンド・サウンドの支柱的存在だといえる。

3位「TIN SOLDIER」

邦題「涙の少年兵」として知られる、67年リリースのシングル曲。マリオット=レーンの作品。

黒人女性シンガー、P・P・アーノルドをバックに迎えたこの曲、とにかく「ソウルフル」の一言。真っ黒けのけなのである。

この曲でもイアンのキーボードが大きな効果を上げており、それに負けじとマリオットが渾身の力でシャウト。

67年といえば、英国ではビートルズが「サージェント」、ストーンズが「サタニック・マジェスティーズ」を出したころで、そんな音が主流な中で、ここまで「ど」がつくぐらい「ソウル」な音を極めていたとは、驚きの一語。

ハンブル・パイのブラックな音に、あと一手。67年で、すでにリーチがかかっていたのである。

2位「ALL OR NOTHING」

66年リリース、彼らにとっては5枚目のシングル。マリオット=レーンの作品。

この盤では68年、ニューキャッスルでのライヴ・ヴァージョンを収録。

これを聴くと、彼らは演奏にもたけているものの、本質的には「歌」を聴かせるグループなのだなと感じる。

ギター等のソロもほとんど省いた、シンプルな構成。マリオットの力強いヴォーカル、そしてそれをサポートするロニーたちのコーラス、いずれも素晴らしい。

彼らは、多くのハードロック・バンドのように器楽演奏主体ではなく、あくまでもヴォーカルがメインなのだ。

ザ・ジャム、スタイル・カウンシルから、最近はプライマル・スクリーム、オーシャン・カラー・シーンに至るまで、後代のバンドに与えた影響には、はかり知れないものがある。

1位「ITCHYCOO PARK」

スモール・フェイセズといえばやはり、この曲を抜きには語れまい。

イミディエイト移籍第二弾のシングル。マリオット=レーンの作品。

全英第三位に見事チャート・インしただけではない。当時アメリカでは無名同様の存在だった彼らが、初めて全米チャートにランクイン(16位)を果たした、記念すべき曲なのである。

アコギをフィーチャーした、どこかフォーキーなサウンドは、それまでソウル一辺倒のイメージの強かった彼らとしても、ちょっと異色。

「モッズ」の固定されたイメージをかなぐり捨てて、彼らにしかないオリジナリティを打立てた、という意味でも「ターニング・ポイント」な一曲。

ソウルっぽいヴォーカルと、ソフトなサウンドが見事にブレンドされて、絶妙な味わいをかもし出している。

ロッドらフェイセズの、後年の大活躍も、すべてここからスタートしたのだ。必聴です。

本盤は全26曲、しかも名曲てんこ盛りなので、選に漏れた中にも素晴らしい曲は数多い。

たとえば、デビュー曲「WHATCHA GONNA DO ABOUT IT」、初期のヒット「SHA LA LA LA LEE」、英国内で最大のヒット「LAZY SUNDAY」などなど。

以前に取り上げたアルバム「OGDENS NUT GONE FLAKE」所収の「AFTERGLOW」「SONG OF A BAKER」「ROLLIN' OVER」も捨てがたい。

マリオット=レーンの曲作りのセンスも最高だし、歌も演奏も実にホット。まだのかたも、ぜひ一度は聴いてみなくちゃ、大損でっせ。

<独断評価>★★★★


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