2023年2月10日(金)

#450 FRANK SINATRA「スインギン・セッション&モア」(東芝EMI/Capitol CP32-5288)
米国のシンガー、ブランク・シナトラのスタジオ・アルバム。61年リリース。デイヴ・カバノー、ビル・ミラーによるプロデュース。
20世紀のポップス界を代表するシンガー、フランク・シナトラがスタンダードなスウィング・ナンバーを歌ったアルバム。演奏はネルソン・リドル楽団。録音当時、シナトラは45歳であった。
これを聴き直していると、どうしても筆者が以前(35年くらい昔)ジャズ・ボーカルを練習していた時代を思い出してしまう。
そのためにわざわざボーカル・スクールにまで通うくらいの入れ込み方だったのだが、今思い出すとちょっと恥ずかしい。
筆者は当時、何人かのジャズ・シンガーをお手本にして歌っていたのだが、中でもシナトラは好きなスタンダード・ナンバーを数多く歌っていること、キーがわりと自分に近いこともあり、とりわけ重要な存在であった。
そんな昔を振り返りながら、当時特にお気に入りだったナンバーを挙げていこう。
【個人的ベスト7:第7位】
「私の青空」
スタンダード中のスタンダード。ウォルター・ドナルドソン、ジョージ・A・ホワイティングの作品。28年に男性シンガー、ジーン・オースティンでヒット。
日本でも戦前、エノケンこと榎本健一が歌っていたのでよく知られているね。
シナトラ版はひたすら陽気に、賑やかに歌いまくっている。
間奏のやたら思い切りのいいサックス・ブローは黒人ミュージシャン、バディ・コレットだ。
気分をアゲアゲにしたい時は、ぜひどうぞ。
【個人的ベスト7:第6位】
「センチメンタル・ベイビー」
LP未収録、CDで追加されたナンバー。アラン・バーグマン、マリリン・キース、リュー・スペンスの作品。甘ぁーいラブソング。
シナトラは落ち着いたムードの伴奏に乗って、ゆったりと優しく歌う。
子守り唄のように、心が癒されるバラードだ。
【個人的ベスト7:第5位】
「九月の雨」
ハリー・ウォーレン、アル・デュビンの37年の作品。ガイ・ロンバルド、サム・ドナヒューなどのバージョンで知られるが、変わり種ではビートルズがデッカのオーディション時にロックンロール版を録音している。
シナトラはこのノスタルジックな楽曲を、抑えめのトーンでセンチメンタルに歌い込んでいる。
張った声もいいが、こういうテンションを下げた声にも、シナトラならではの説得力が感じられる。
【個人的ベスト7:第4位】
「アイ・キャント・ビリーヴ・ザット・ユア・イン・ラブ・ウィズ・ミー」
ジミー・マクヒュー、クラレンス・ガスキルの26年の作品。ロジャー・ウルフ・カーン以降、さまざまなアーティストがカバー。主だったところでは、ルイ・アームストロング、エラ・フィッツジェラルド、ビリー・ホリデイ、アニタ・オデイ、メル・トーメなどが挙げられる。
思わぬ相手が自分のことを好きだと知って、驚くという内容のラブソング。
男性が歌っても、女性が歌ってもいい歌詞内容だが、男性が歌った方が、一段とサプライズ感が大きいような気がするが、いかがであろうか。
シナトラはプレイボーイとして有名だったが、そんな彼でも、女性から「好きです」と伝えられたら、ドギマギするのだろうか。
そして、そのまま女性の気持ちを素直に受け入れて、付き合い始めるのだろうか。
そんなことを考えながら聴くのも、一興である。
シナトラの歌声は高らかで、なんのよどみも感じさせない。
【個人的ベスト7:第3位】
「アイ・コンセントレイト・オン・ユー」
コール・ポーター、40年の作品。ダグラス・マクフェイルが最初に歌い、フレッド・アステア、ジュディ・ガーランド、ダイナ・ワシントンなどがカバーしている。
これ以上ないくらいの、ストレートな告白ソング。
女性なら一度は意中の男性から言われたい台詞だろうな、これは。
これを真剣な顔で(しかも稀代のプレイボーイの)シナトラに歌われたら、イチコロってものだろう。
筆者も、到底シナトラの境地に立つことは無理と知りつつも、この曲に挑戦したものだ。あー恥ずかしい(笑)。
シナトラ師匠の歌はそのくらい、粋でパーフェクトで文句のつけようのない目標でありました。
【個人的ベスト7:第2位】
「イッツ・オンリー・ア・ペイパー・ムーン」
ハロルド・アーレン、イップ・ハーバーグ、ビリー・ローズの33年の作品。
これもカバーの多い名曲だ。ざっと思い浮かべるだけでも、ナット・キング・コール、チェット・ベイカー、ビング・クロスビーとローズマリー・クルーニー、ペリー・コモ、メル・トーメといったあたりが挙げられる。
73年の映画「ペイパー・ムーン」では主題歌となっているので、覚えている人も多いだろう。
シナトラは実に軽快に、そして洒脱にこのスタンダードを歌い上げている。
ボーカル・スクールでも、必修曲に近く、ほとんどの生徒がトライしていたことを思い出す。
【個人的ベスト7:第1位】
「ブルー・ムーン」
リチャード・ロジャーズ、ロレンツ・ハートの34年の作品。
コニー・ボズウェルが歌い始め、ビリー・エクスタイン、メル・トーメ、エルヴィス・プレスリー、ドゥーワップ・コーラスのマーセルズでヒットした。
筆者的には、エルヴィスで初めて知った曲と言える。
まったりとした雰囲気のエルヴィス版も大好きだが、シナトラの程よくスウィンギーな歌いぶりも、もちろん素晴らしい。
バディ・コレットのサックス・ソロも、絶好調である。
全15曲、一番脂の乗り切った時期のシナトラの、リズム感あふれる快唱、そしてネルソン・リドルのパワフルで歯切れのいいアレンジが相まって、極上のスウィングが生まれた一枚。
60年以上経とうが、このサウンドはまるで色褪せていない。
<独断評価>★★★☆
米国のシンガー、ブランク・シナトラのスタジオ・アルバム。61年リリース。デイヴ・カバノー、ビル・ミラーによるプロデュース。
20世紀のポップス界を代表するシンガー、フランク・シナトラがスタンダードなスウィング・ナンバーを歌ったアルバム。演奏はネルソン・リドル楽団。録音当時、シナトラは45歳であった。
これを聴き直していると、どうしても筆者が以前(35年くらい昔)ジャズ・ボーカルを練習していた時代を思い出してしまう。
そのためにわざわざボーカル・スクールにまで通うくらいの入れ込み方だったのだが、今思い出すとちょっと恥ずかしい。
筆者は当時、何人かのジャズ・シンガーをお手本にして歌っていたのだが、中でもシナトラは好きなスタンダード・ナンバーを数多く歌っていること、キーがわりと自分に近いこともあり、とりわけ重要な存在であった。
そんな昔を振り返りながら、当時特にお気に入りだったナンバーを挙げていこう。
【個人的ベスト7:第7位】
「私の青空」
スタンダード中のスタンダード。ウォルター・ドナルドソン、ジョージ・A・ホワイティングの作品。28年に男性シンガー、ジーン・オースティンでヒット。
日本でも戦前、エノケンこと榎本健一が歌っていたのでよく知られているね。
シナトラ版はひたすら陽気に、賑やかに歌いまくっている。
間奏のやたら思い切りのいいサックス・ブローは黒人ミュージシャン、バディ・コレットだ。
気分をアゲアゲにしたい時は、ぜひどうぞ。
【個人的ベスト7:第6位】
「センチメンタル・ベイビー」
LP未収録、CDで追加されたナンバー。アラン・バーグマン、マリリン・キース、リュー・スペンスの作品。甘ぁーいラブソング。
シナトラは落ち着いたムードの伴奏に乗って、ゆったりと優しく歌う。
子守り唄のように、心が癒されるバラードだ。
【個人的ベスト7:第5位】
「九月の雨」
ハリー・ウォーレン、アル・デュビンの37年の作品。ガイ・ロンバルド、サム・ドナヒューなどのバージョンで知られるが、変わり種ではビートルズがデッカのオーディション時にロックンロール版を録音している。
シナトラはこのノスタルジックな楽曲を、抑えめのトーンでセンチメンタルに歌い込んでいる。
張った声もいいが、こういうテンションを下げた声にも、シナトラならではの説得力が感じられる。
【個人的ベスト7:第4位】
「アイ・キャント・ビリーヴ・ザット・ユア・イン・ラブ・ウィズ・ミー」
ジミー・マクヒュー、クラレンス・ガスキルの26年の作品。ロジャー・ウルフ・カーン以降、さまざまなアーティストがカバー。主だったところでは、ルイ・アームストロング、エラ・フィッツジェラルド、ビリー・ホリデイ、アニタ・オデイ、メル・トーメなどが挙げられる。
思わぬ相手が自分のことを好きだと知って、驚くという内容のラブソング。
男性が歌っても、女性が歌ってもいい歌詞内容だが、男性が歌った方が、一段とサプライズ感が大きいような気がするが、いかがであろうか。
シナトラはプレイボーイとして有名だったが、そんな彼でも、女性から「好きです」と伝えられたら、ドギマギするのだろうか。
そして、そのまま女性の気持ちを素直に受け入れて、付き合い始めるのだろうか。
そんなことを考えながら聴くのも、一興である。
シナトラの歌声は高らかで、なんのよどみも感じさせない。
【個人的ベスト7:第3位】
「アイ・コンセントレイト・オン・ユー」
コール・ポーター、40年の作品。ダグラス・マクフェイルが最初に歌い、フレッド・アステア、ジュディ・ガーランド、ダイナ・ワシントンなどがカバーしている。
これ以上ないくらいの、ストレートな告白ソング。
女性なら一度は意中の男性から言われたい台詞だろうな、これは。
これを真剣な顔で(しかも稀代のプレイボーイの)シナトラに歌われたら、イチコロってものだろう。
筆者も、到底シナトラの境地に立つことは無理と知りつつも、この曲に挑戦したものだ。あー恥ずかしい(笑)。
シナトラ師匠の歌はそのくらい、粋でパーフェクトで文句のつけようのない目標でありました。
【個人的ベスト7:第2位】
「イッツ・オンリー・ア・ペイパー・ムーン」
ハロルド・アーレン、イップ・ハーバーグ、ビリー・ローズの33年の作品。
これもカバーの多い名曲だ。ざっと思い浮かべるだけでも、ナット・キング・コール、チェット・ベイカー、ビング・クロスビーとローズマリー・クルーニー、ペリー・コモ、メル・トーメといったあたりが挙げられる。
73年の映画「ペイパー・ムーン」では主題歌となっているので、覚えている人も多いだろう。
シナトラは実に軽快に、そして洒脱にこのスタンダードを歌い上げている。
ボーカル・スクールでも、必修曲に近く、ほとんどの生徒がトライしていたことを思い出す。
【個人的ベスト7:第1位】
「ブルー・ムーン」
リチャード・ロジャーズ、ロレンツ・ハートの34年の作品。
コニー・ボズウェルが歌い始め、ビリー・エクスタイン、メル・トーメ、エルヴィス・プレスリー、ドゥーワップ・コーラスのマーセルズでヒットした。
筆者的には、エルヴィスで初めて知った曲と言える。
まったりとした雰囲気のエルヴィス版も大好きだが、シナトラの程よくスウィンギーな歌いぶりも、もちろん素晴らしい。
バディ・コレットのサックス・ソロも、絶好調である。
全15曲、一番脂の乗り切った時期のシナトラの、リズム感あふれる快唱、そしてネルソン・リドルのパワフルで歯切れのいいアレンジが相まって、極上のスウィングが生まれた一枚。
60年以上経とうが、このサウンドはまるで色褪せていない。
<独断評価>★★★☆