1987年のJRグループ発足直後は地域の需要に合わせた車両の増備へ方針が改められますが、しばらくの間は国鉄時代に設計された形式をベースにした新造車を導入していました。JR東海では1988年より、名古屋・静岡地区の普通列車用に211系をベースに設計変更を加えた5000番台の増備を開始し、1991年までに242両が導入され313系が登場してからも名古屋地区の中央本線、静岡地区の東海道本線の主力車両として運用されました。しかし2022年より新型通勤車315系の導入により311系・213系と共に置き換えられることになり、同年3月には静岡車両区のLL編成4本に初めて廃車が発生、4月には神領車両区のK編成からも9両を皮切りに廃車が開始され、2023年10月には中央本線からは全廃され315系で統一、今後は静岡に車両の置き換えを2025年までに完了させる計画です。
静岡地区で運用されるLL編成。基本番台とは異なり、正面の助士席側と貫通扉の窓が拡大され冷房装置が集中式からインバーター制御方式の集約分散式に変更されています。LL編成は元は大垣車両区に配置されていた編成で主に豊橋〜岐阜間の普通列車に充当されて来ましたが、2006年からの313系大量増備により転属して来ました。静岡地区生え抜きのグループはSS編成・GG編成で、前者はクモハ211が5600番台とされパンタグラフが狭小トンネル対応型を搭載し、周りの屋根を僅かに切り下げ全てのJR東海管内電化路線での走行に対応し、後者はクモハ+クハの2両編成で213系同様に電動車が1ユニットで完結しているなど様々な相違点があります。
神領車両区に所属していた4両編成のK編成。5000番台が最初に配置されたのは中央本線で1988年7月のことでした。当初はトイレ設備を備えていませんでしたが、長距離利用者が多い快速運用に充当される機会が増えたことを受け3次増備分からトイレ設備を設置したクハ210-5300が登場し、1・2次車4両6からサハ211-5000を抜き取り3次車3両に組み込み、更に2次車11本はクハ211を5300に差し替え、捻出された5000は静岡地区向けの増備車と編成を組むように改めています。
1999年から登場の313系は211系との連結にも対応している為、両形式を併結した編成が日常的に組まれています。特に中央本線では朝の通勤時間帯に混成10両での運用も設定されており、車体デザインが異なる短い編成が幌で繋げられている姿を見ることが出来ました。
車内設備はドア内側を化粧板仕上げ、床を2色構成としクモハ211・モハ210では主電動機点検蓋の廃止、また座席はクッション材を厚くして奥行きを確保し座り心地を向上させました。2005年からはバリアフリー対策で313系と同様のドアチャイムの設置も実施されています。
運用から離脱した211系は西浜松に送り込まれ、順次解体されていますが、保存目的なのかクモハ211-5001の1両のみが保管されている他、静岡車両区の3両が三岐鉄道に譲渡されることが決定しています。今後2025年までに、どれだけの両数が再起できるか期待して見守りたいですね。