鴨が行く ver.BLOG

鴨と師匠(ベルツノガエル似)と志ん鳥のヲタク全開趣味まみれな日々

最近読んだSF 2021/12/5

2021年12月05日 15時26分45秒 | ゲーム・コミック・SF
すっかり冬になりましたねー。年賀状の準備をせねば・・・。
飛浩隆のレビューがしばらく進みそうにないので、一つスキップして、その次に読んだ作品をレビューします。

日本SFの臨界点 石黒達昌 冬至草/雪女(ハヤカワ文庫JA)

なんというか、とてもユニークな筆致と世界観を有する作家です。
作家自身の個性や情念や熱量、「この作品で何を表現したいのか」といった想い、そうした通常の小説なら当然表出されているものが、この作品群からは全く感じません。徹底的に冷静で冷徹で、まるで科学者のリポートを読むかのような硬質で冷たい作品ばかりです。その突き放したようなスタンスが逆に強烈な個性になっているという、余人を持って変えがたい作家だな、と思いました。

どの作品も、気持ち的に盛り上がる展開はほぼないです(^_^; 本当にレポートのような文体で、起こっている事象や事件について客観的に確認できることのみを淡々と描写し、だいたいは観察対象の消滅によって終了します。観察対象の消滅というイベントすらないまま、唐突に幕を閉じる作品もあります。
そんな掴みどころのない作風ではあるのですが、レポートのような素っ気無い文体の行間から立ち現れる、科学/社会/文化に対峙する個人の魂の相克、そして、そこから生まれる絶対零度のような冷たさを感じる凄み。書きたいことをガンガン書いて読者をグイグイリードして楽しませる作家もいますが(そしてそれは読者にとってもわかりやすいので、そうした作品の方が売れるのですが)、全く逆の、引いて引いて引きまくることで文章の背後に潜む世界観を表現する、本当に唯一無二の作風だと思います。読み進めるうちに背筋が寒くなるような感覚さえ覚えます。

一般的に想起する「SFを読むことで得られるカタルシス」は、一切ありませんヽ( ´ー`)ノ
そういう意味で、かなり読む人を選ぶ作品だと思います。でも、一度読んでおいて損はないと思います。
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