秋深し。読書の秋です。SF読みがサクサク進みますヽ( ´ー`)ノ
今月二度目のSFレビュー。
流れよわが涙、と警官は言った/フィリップ・K・ディック、友枝康子訳(ハヤカワ文庫SF)
著名なTVタレントのジェイスン・タヴァナーがある日目覚めた、見知らぬ安ホテルの一室。その世界では、誰も彼のことを知らず、彼に関する一切の記録が存在していなかった。自己を証明する一切を失い、かつての愛人からも不審者扱いされ、行き場を失ったタヴァナーは警察に追われる身となる・・・
タヴァナーが「自分に関する記録/記憶が一切ない世界」に放り込まれた理由が後半で明かされ、SF的な理屈が付けられています。が、それはこの作品の主要テーマではありません。
ディックがこの作品で表現したかったこと、それはSFの文体を借りた「愛の喪失」の物語である、と鴨は読み取りました。全てを失ったタヴァナーの逃避行の過程で、様々な男女の愛の喪失が語られます。誰からも顧みられない存在となったタヴァナー自身がそうですし、既に亡い夫の帰りを妄想し続けるキャシィ、誰かと接触し続けていないと生きていられないアリス、そんなアリスを嫌悪しつつも愛さずにはいられないバックマン本部長・・・どの愛も決して満たされない、メランコリア溢れる物語です。
そんなSFの枠を超える普遍性を備えた作品ではあるのですが、鴨の読後感は正直イマイチ・・・たぶん、登場人物に共感できるところがなかったからだと思います。
特に、ストーリー展開のキモとなるバックマンの愛の形が、物語の前半と後半とでは印象が全く異なり、一貫性がないのが辛い。筋立てよりも、登場人物の心の遍歴を描きたかった作品なのだと思います。登場人物に感情移入できないと、結構厳しいですね。
ハマる人にはたまらない作品だと思います。
今月二度目のSFレビュー。
流れよわが涙、と警官は言った/フィリップ・K・ディック、友枝康子訳(ハヤカワ文庫SF)
著名なTVタレントのジェイスン・タヴァナーがある日目覚めた、見知らぬ安ホテルの一室。その世界では、誰も彼のことを知らず、彼に関する一切の記録が存在していなかった。自己を証明する一切を失い、かつての愛人からも不審者扱いされ、行き場を失ったタヴァナーは警察に追われる身となる・・・
タヴァナーが「自分に関する記録/記憶が一切ない世界」に放り込まれた理由が後半で明かされ、SF的な理屈が付けられています。が、それはこの作品の主要テーマではありません。
ディックがこの作品で表現したかったこと、それはSFの文体を借りた「愛の喪失」の物語である、と鴨は読み取りました。全てを失ったタヴァナーの逃避行の過程で、様々な男女の愛の喪失が語られます。誰からも顧みられない存在となったタヴァナー自身がそうですし、既に亡い夫の帰りを妄想し続けるキャシィ、誰かと接触し続けていないと生きていられないアリス、そんなアリスを嫌悪しつつも愛さずにはいられないバックマン本部長・・・どの愛も決して満たされない、メランコリア溢れる物語です。
そんなSFの枠を超える普遍性を備えた作品ではあるのですが、鴨の読後感は正直イマイチ・・・たぶん、登場人物に共感できるところがなかったからだと思います。
特に、ストーリー展開のキモとなるバックマンの愛の形が、物語の前半と後半とでは印象が全く異なり、一貫性がないのが辛い。筋立てよりも、登場人物の心の遍歴を描きたかった作品なのだと思います。登場人物に感情移入できないと、結構厳しいですね。
ハマる人にはたまらない作品だと思います。