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最近読んだSF 2018/10/15

2018年10月15日 21時08分18秒 | ゲーム・コミック・SF
今年の個人的読書目標「SFの古典を読む」にチャレンジした一作です。
21世紀の今でもハードSFの代名詞的評価をされている名品、が発表年は何と1970年!

タウ・ゼロ/ポール・アンダースン、浅倉久志訳(創元SF文庫)

32光年先の恒星系を目指し、50人の優秀な男女を乗せて飛び立った恒星間宇宙船<レオノーラ・クリスティーネ>号。バサード・ラムジェット推進航法で亜高速まで加速し、地球時間で数十年後に目的地に降り立ち調査研究を開始するはずだったが、不測の事故に遭遇し減速機能を失ってしまう。何とかして船を減速し、植民可能な惑星に着陸する方法を模索する中、船外では数百年、数千年、数億年の時間が経過していく・・・外界から完全に隔絶された船内環境の中、圧倒的な絶望感と闘いつつ、乗組員たちが最終的に選んだ選択肢とは?

アイディア一本勝負、衒いのない直球ストレート王道ハードSFです。
「亜高速で移動する宇宙船が減速できなくなったらどうなるか」、物語のテーマはただそれひとつ。それ以外のことは、一切描かれていません。
好きな人には溜まらない作品だと思います、が、鴨的にはうーーーん・・・古い・・・。

何よりも、物語の肝でありオチでもある宇宙モデルが、現在では既に古びていること。物語のクライマックスはまさに手に汗握る展開となるんですが、ホーキング以降の現代宇宙論を多少なりとも知っていると、「うわーありえねー」という感想しか出てきません。ハードSFとして、「うわーありえねー」と思われてしまうのは、致命傷となります。
ハードSFとして勝負できなくても、ドラマ展開を見せる、という手段があります。減速するために乗組員たちが悪戦苦闘する過程、悲壮な結果を乗組員にどう伝えるか苦悩する幹部の姿、そうした人間ドラマ的なものも描かれています。が、これがどうにも深みがなくて入り込めません。ステロタイプなキャラ設定をした登場人物がステロタイプな動きをすればこうなるだろうなー、という印象。
このアイディアだけで長編一本書こうとするなら、閉鎖的な物語になるのは当然なわけで、キャラクターの面白みである程度ストーリー展開を引っ張らないと中ダレするわけですよ。そこがつまらないので、中盤は読み進めるのに忍耐を要しました。古いハードSFには有りがちな特徴ですけどね。

この作品の発表当時の視点で振り返ると、ハードSFの最先端にして最高峰だったのだろうと思います。時代によって古びてしまうのはハードSFの宿命ですが、当時リアルタイムで読んだSF者にとっては、これほど面白いSFはなかっただろうなー。しみじみしますわ。
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