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最近読んだSF 2021/10/5

2021年10月05日 22時08分38秒 | ゲーム・コミック・SF
なぜかふと、スティーヴン・キングが読みたくなって、こんな短編集を買いました。

スティーヴン・キング短編傑作選 ミスト/スティーヴン・キング、矢野浩三郎他訳(文春文庫)

スティーヴン・キングの短編は、10代の頃に扶桑社文庫版を何冊か読んだ記憶があります。面白いぐらい、全く記憶がありません(^_^;
この歳になって、改めて読んでみたくなって、代表作である「ミスト」を収録したこちらの短編集を手に取った次第ですが、あれ、スティーヴン・キングってこんなに面白かったっけ・・・?と、軽く衝撃を受けました。今読んでも、全く古くないです。

短編4篇と、紙幅の後半6割強を占める中編「ミスト」の5篇からなる短編集。
売りはやはり「ミスト」なのでしょうが、前半に納められている4篇が良い!ビシッと引き締まって過不足なく、最小限の表現で”恐怖”を演出する端正な作品揃いです。特に「ジョウント」「ノーナ」の2篇の怖さといったら!SF者なら誰もが知っているあの特殊効果をネタに、科学の枠を超えた恐怖を描くスタイリッシュなSFホラー「ジョウント」、破滅的な美女に振り回されて罪を犯す愚かな男を描くサスペンス、と思いきや最後の最後に「!?」が待っている「ノーナ」、どちらも一度読んだら忘れられないインパクト。どちらの作品も、読者のミスリードを誘うためのちょっとした叙述トリック的な小技が仕組まれているところがまた面白い。手練の技を堪能できます。

そして、何よりも表題作「ミスト」。
これがねぇ・・・冗長なんですよ・・・(^_^; 切れ味鋭くエッジの立ちまくった前半の短編を堪能した後に読むと、まぁ冗長なこと。途中で読むのを諦めそうになるぐらいの冗長さ。
アメリカの地方都市での日常的な生活を徹底的に細かくしつこく描写するのは、キングの中長編の特徴の一つです。このしつこい描写があってこそ、登場人物たちの間に生じる軋轢や心理描写が生き生きと立ち上がってくる、ということはよくわかるんですけど、「ミスト」自体はワン・アイディア・ストーリーなので、もう少しコンパクトにまとめてもインパクトは損なわれないと思うんですけどねぇ。
ただ、読了してみると、展開は流石のキング節です。「ミスト」もその他の短編も、明快でわかりやすい結末はありません。何も解決しないまま、不穏な雰囲気のままに物語の幕が閉じます。この終わり方にモヤモヤを感じる人もいると思いますが、鴨は、キングとはこのモヤモヤした肌触りそのもの、居心地の悪い世界観を描くことに全力を傾けるタイプの作風なのだと理解しています。どの作品も結末に明快な落とし所がなく、不穏な雰囲気そのものを描いているところが、ブラッドベリやE・A・ポーを彷彿とさせます。実は、正統派米国幻想文学の系譜なのか…!?

最後に、映画版「ミスト」との違いについて。
映画版「ミスト」は、最高に後味の悪い映画として有名ですが、鴨は原作の方が好きです!映画版は、確かに胸糞悪い結末ではあるけれど、一応「オチ」がついていて、主人公の気持ちもベクトルが固まってるんですよ。原作は、何も方向性を示されないまま、「ひょっとしたら行けるかも」との髪の毛一筋ほどの希望を残して、幕を閉じます。この、ほぼ絶望的だけれど一抹の希望も捨てきれないという状況、一番胸糞悪くないですか。
キング、面白い。機会があれば、他の作品も再読してみたいです。
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