鴨が行く ver.BLOG

鴨と師匠(ベルツノガエル似)と志ん鳥のヲタク全開趣味まみれな日々

最近読んだSF 2019/6/16

2019年06月16日 16時33分49秒 | ゲーム・コミック・SF
暑くなったり肌寒かったり、体調管理が難しい季節になりましたねー。
不快指数が高まる季節でも、通勤電車内のSF読みは軽快に継続中です。先日読了したのはこちら。

ラギッド・ガール/飛浩隆(ハヤカワ文庫JA)

先月読んだ「グラン・ヴァカンス」に続く「廃園の天使」シリーズ第2作となる短編集です。が、収録されている5作品は、物語の流れ的には全て「グラン・ヴァカンス」で描かれる事件より前に起こったことを題材にしています。
前作「グラン・ヴァカンス」は、舞台となる仮想空間「数値海岸<コスタ・デル・ヌメロ>」の成り立ちやここに至るまでの経緯等がほとんど描かれておらず、謎が謎のまま幕を閉じる作品ですが、この「ラギッド・ガール」に収録されている作品群を読むと、その謎のかなりの部分が解明します。こちらを先に読んでも作品としては十分成立しますが、「グラン・ヴァカンス」を先に読んでおくことを絶対におススメ。物語の解像度が、相当異なってくると思います。

人間が仮想空間を”体感”するために、計算資産をできるだけ食わないように実レベルで開発された画期的技術「情報的似姿」。「ラギッド・ガール」に収録されている作品の半分は、この「情報的似姿」開発の経緯と展開を、生身の人間社会でのひとつのできごととしてサスペンスフルに描写しています。
「グラン・ヴァカンス」の登場人物たちは、全てAIでした。それと比べると、人間が主役の作品は平易で感情移入しやすいんだろうなぁ・・・なんて思いながら読み進めた鴨が浅はかでした(^_^;人間の登場人物たちの方が、数倍グロテスクで感情移入不能であるという、この驚き。特に、作品群のドライバーとなる阿形渓と杏奈・カスキの両女性キャラの異形ぶり、激烈ぶりといったら、正に夢に出そうなほどのユニークさ。特に杏奈・カスキは、作中では相当な美女であることが仄めかされているのに、読後のイメージは「気持ち悪い」の一言しか思い浮かびません。このキャラ設定、どこから想起されるんだろう。飛浩隆の想像力に脱帽。

人間の情動をコピーしたともいえる「情報的似姿」とは、生身の人間本体とは切り離されて独自に仮想空間を動き回る存在であり、人間社会のモラルや規範に縛られない存在です。それ故に、コピー元の本人の意思とは関わりなく隠された欲望や衝動がストレートに表出されてしまう、その醜さを描くのが、この作品群のテーマの一つなのかもしれません。
・・・とか理屈臭いこと書いてますけど、そんなお利口な理屈をこねる作品ではないことは、鴨も肌感覚でよく判りますヽ( ´ー`)ノとにかくグロテスクで醜悪で破壊的な作品ばかりだけれど、でも、美しいんです。破壊し、分解し、浸食する、そのシーンひとつひとつの美しいこと、艶やかなこと、そしてセンシュアルなこと。細かいロジックを突き詰めていけば、突っ込みどころはたくさんあります。が、そんなことを気にしていては楽しめない世界観だと思います。

キャラがぶっ飛び過ぎていて鴨的には☆5つまでには行かない感じですが、でも次作が出たら絶対買います!楽しみです!
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