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茶の湯 徒然日記

茶の湯との出会いと軌跡、お稽古のこと

砂曼荼羅

2006-08-02 23:12:32 | m-tamagoの物想い
 友人の誘いで初めてチベットの砂曼荼羅とバター彫刻を見る機会に恵まれた。見事だった。
チベット砂曼荼羅ライブパフォーマンス
http://www.tibethouse.jp/event/2006/sandmandala/index.html
 NHKのチベット特集でチベット仏教や様々な風習について目にしたことはあったが生で見ると迫力が違う。荘厳な声明(僧侶の読経)は心に染み入り、涙が出そうになった。

 今回のパフォーマンス、北インドのギュト寺院から6名の僧侶が訪れ、チベット仏教の聖なる儀式の中で製作される砂曼荼羅とバター彫刻を9日間に渡り作り上げる過程を公開したもので、日本では始めての試み。優れた芸術品という枠ではなくチベット仏教の大切な宗教儀式と捉え、日本の由緒ある寺院で行いたいと関係者が協力して真言密教寺院である護国寺での開催となったそうだ。
 曼荼羅は本尊が住む宇宙や浄土を現したもので、その円は中心から宇宙が広がるプロセスを図案化したもの、宇宙の構成要素は相互に関係しあっていて、本質的には空であることを示す。日本で見る曼荼羅は、布や紙に描かれたものや刺繍が多いが、チベットでは砂で描く砂曼荼羅(ドゥルツォン)、布に描く絵曼荼羅(レーディ)、木や宝石で作られる立体曼荼羅(ローラン)の3種類がある。
 中でも砂曼荼羅は寺院や団体が何か発願をし、その成就を願って執り行う儀式の中で作成されるもの。石英質の石を磨り潰したパウダー状のものを金属の筒に入れ、もう1つの金属の棒をすり合わせる振動で台の上に砂を落としながら描いていく。一介の僧侶であっても自身が一切衆生を救済すると誓いをたてた本尊になった瞑想・精神の中で、中心に本尊、東西南北に花びら、その周りに本尊の持ち物、宮殿、供物や灯明と、砂曼荼羅という物質的な浄土を作り上げていくという。今回は観音菩薩の砂曼荼羅が作られていた。
(ご参考)砂曼荼羅作成工程
http://www.mmba.jp/daisyoin/mandala/0201.html

 砂曼荼羅の製作中は毎日声明を唱えて祈祷するため、砂の一粒一粒が尊い物質に変わるとされている。完成すると儀式によって本尊を砂曼荼羅にお招きし祈願をする。そして、祈願がおわると本尊には浄土にお帰り頂き、破段の作法(シック)によって砂曼荼羅を壊し、砂の一粒一粒は川に流す。これは、ナーガ神(豊穣・大地の平和を司る水神)への供養で、仏教の「全てのものは元の位置に帰る」、「すべては無常であり、空である」という教えに沿ったもの。その後、砂を流した川の水を汲み、曼荼羅を作った台を清め、儀式は終了する。

 バター彫刻(マルツォン)は、お正月15日に行われる“チョンガチョパ”の儀式で本尊への供物として作成されるもの。食紅を使って色づけしたバターを、親指・人差し指・中指の3本を使って細工していく。通常は5基作られるようだが、今回は3基。それぞれが違う本尊と即した逸話が彫刻表現されている。バター彫刻も奉納後、破壊されるが、古くは破壊後にバターは貧しい人たちへ振舞われていたそうだ。

 私は最終日のクロージングセレモニーに参加。護国寺の桂昌殿、奥のご本尊の左右には護国寺伝来の刺繍曼荼羅(複製)が吊り下げられており、更に、完成したバター彫刻とダライ・ラマ14世の写真が飾られていた。建物の中央には完成した砂曼荼羅の台。
 セレモニーの説明があった後、僧侶たちが低く深い声明を唱えながら砂曼荼羅の周囲を巡り、やがてお線香の先で曼荼羅に触れるとその砂を長老の僧侶がつまんでいき、棒で外から内側へ線を引き、箒のようなもので掃き集めて砂をどんどん崩していく。最後は砂は壷に纏められ、出口でセレモニー参加者に一匙ずつ配られた。私も頂戴してきた。(写真ご参照)遠目でみるとただの灰色の砂に見えるが、よくみると様々な色の砂が交じり合っている。細かさは目をみはるばかり。これが少し前まで美しい曼荼羅を描いていた砂の一部なのだ。
 全員に砂を分け与えた後、残りの砂は江戸川に流され、川の水は護国寺に持ち帰って砂曼荼羅の作られた台が清められたはずである。時間の都合で私は最後までは拝見していないので説明によれば、であるが。

 入り口では砂曼荼羅とバター彫刻製作の疑似体験ができるようになっていた。
砂曼荼羅作成用道具の金属の棒をすり合わせてみたが手がぶれてまっすぐに線を引くことすら難しい。バター彫刻用の粘土質のバターに触ると指がねっとりと油っぽくなり、3本の指で思う形にすることの難しさを感じた。いずれも触ってみて僧侶たちの技術の高さを実感した。完成品を拝見したが、できれば製作工程も生で見てみたかった。

 チベットといえば、まず“ダライ・ラマ”の名を思い出す。クロージングセレモニーで挨拶に立ったダライラマ日本代表部事務所長のチベット人の方はこうおっしゃいました。
「ダライ・ラマは、非暴力と縁起ということを必ずおっしゃいます、これは皆が争うことのないように。お互いが何がしかの縁で結ばれているのであるから、人の為になるような行動をしましょう、それができなくても人に迷惑をかけないようにしましょう。皆様とのご縁に感謝します。」と。
 “ダライ・ラマ”はモンゴルの称号で“大海”を意味し、歴代の転生者は観音菩薩の化身であるとされる。当代は14世テンジン・ギャツォ。1935年に自作農を営む家に生まれ、ラモ・ドンドゥップと名づけられたが、2歳の時にダライ・ラマ13世トゥプテン・ギャツォの転生者であると認定を受けた。現在インドに亡命中。チベットやダライ・ラマ法王については以下HPご参照下さい。
http://www.tibethouse.jp/about/index.html
http://www.tibethouse.jp/dalai_lama/about.html

 チベットという国は日本からすれば秘境。なかなかその宗教や伝統を知る機会はないが、仏教に根ざした思想は日本に通じるものがあって納得でき、深い安らぎを感じるものだった。
 チベット僧の声明は人間が出す世界で一番低い声と聞く。初めて耳にし、心揺さぶられた。
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14 コメント

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得難い体験でした。 (ukiki01)
2006-08-02 23:50:46
声明に驚きましたよ。

人間が出す一番低い声なのね。なるほど。

なんかすごく(知らないなりに)密教っぽさを感じました。

お堂とかで、もうちょっと楽な姿勢で聞く機会があったらまた行ってみたい気がしています。

トラックバックさせていただくね。(練習がてらどうぞ?)
返信する
興味津々 (飛翔)
2006-08-03 09:06:31
最近、宇宙、浄土、宗教と聞くと、以前より反応が良くなって・・・。

臨場感溢れるご説明、いくばくかの疑似体験が出来たような気分です。

都会の方では、様々な興味深い行事に触れる機会が多く、羨ましいばかりです。

あ~、ドラえもんの、何処でもドア~よ、我が内に!!!*>0^*

心揺さぶられて、魂は、磨かれますね。貴重な体験を紹介して下さり、有難うございました。
返信する
砂曼荼羅 (チャチャ)
2006-08-03 10:14:39
ウワー 実際に見られたのですか!

以前テレビでみたことは、あったのですが、東京でこんな機会があったとは、驚きです。

テレビでさえ、強い感動をおぼえたので、その場で、声明を聞いていたら、どうなることかーーーー。



来年もし機会があれば、せひ最終日にいきたいです。



昨日の軸は、「心外無別法」を掛けました。

「無」とか「空」が、少しは、理解できるかしら。





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はじめまして (lunechou from mixi)
2006-08-03 17:38:36
こんにちは。

mixiからまいりました。



私も行きました。

27日ですが。



あの砂曼荼羅は、世界平和を祈念して、

川に流されたそうです。

チベットのかたから「世界平和を祈念」なんていわれると、

平和慣れ? 平和ボケ?してしまっている私なんかは、

耳が痛いというか、胸がしめつけられる、というか。

この祈りが届くといいな、と思いました。
返信する
得がたい体験 (m-tamago)
2006-08-03 22:31:38
ukiki01ちゃん、そう、チベット僧の声は人間が出す一番低い声だとか、そのこともまたブログに書くね。

日本の密教とはまた雰囲気が違うんだろうけど、荘厳だったね。連れて行って下さってありがとう。

私ももう一度声明は聞きたいです。



トラックバック、できないのよ~。
返信する
興味津々 (m-tamago)
2006-08-03 22:35:07
飛翔さん、疑似体験して頂けましたか。



>あ~、ドラえもんの、何処でもドア~よ、我が内に!!!*>0^*

いつでもいらして下さいね!ご案内しますから。何処でもドア、私もほしい。



>心揺さぶられて、魂は、磨かれますね。

本当に、魂が磨かれたかも。
返信する
砂曼荼羅 (m-tamago)
2006-08-03 22:37:47
チャチャさん、こんばんは。

私も友人に誘われなければ知りませんでした。来年もあるかもしれないので、是非。



>テレビでさえ、強い感動をおぼえたので

やはり、そうですか。生の声は心が本当に震える感じでしたよ。



>昨日の軸は、「心外無別法」を掛けました。

奥伝のお稽古だったのですよね。空、無、なかなか近づけないです。。。
返信する
はじめまして (m-tamago)
2006-08-03 22:39:36
lunechouさん、はじめまして。

コメントありがとうございました。



>あの砂曼荼羅は、世界平和を祈念して、川に流されたそうです。

チベットは中国政府に制圧されて、ダライ・ラマ法王も亡命中、平和への祈念は深いでしょうね。
返信する
トラックバック (ukiki01)
2006-08-04 00:33:53
m-tamagoちゃん、

トラックバックについてひとこと申し上げ忘れていました。

ごめんごめん。



あなたの記事内に、私のブログのURLを入れてください。

リンクの形でもいいのです。

そしてもういちどお試しあれ。



トラックバックスパムを防ぐために、当方のURLのない記事からは受け付けないように設定しています。

ご参考↓

http://blog.livedoor.jp/staff/archives/50310668.html
返信する
トラバ (m-tamago)
2006-08-06 14:37:45
ukiki01ちゃん、ありがとう。

一応やってみたのだけどやはり反映されていない様子。

まあ、またの機会に教えて下され。

トラックバックはできずとも、受け付けはいつでも可能ですので(笑)
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