高島屋味百選、ほぼ毎回足を運ぶが、今年初めて出会ったのは創業安政二年の御菓子処まつ月。
ふらふら通路を歩いていたら、5年眠り柿、6年眠り柿、7年眠り柿、わらびの根、5年ものわらび粉という言葉が目に飛び込んできた。白く粉をふいた柿と、茶色い植物の根、壺に入ったわらび粉の塊が置かれていた。そばに立つご主人に、「これって何でしょう?教えて頂けますか?」と聞くと、「お時間大丈夫ですか?説明してもいいですか?」と笑った。
店頭には“柿ずくし”、限定の“栗羊羹”、“わらび餅”の3種が並んでいた。いずれもこのご主人が時間をかけて作り上げた自信の商品。ご主人の話は自然の恵み、力を感じる、為になるお話だった。
まず、眠り柿。渋柿をとって干し、寝かせる。5年、6年、7年と年数を重ねるほど柿は自然の白い粉をふき、甘味を増していく。 “柿ずくし”は7年ものを使用して作っている。
限定の“栗羊羹”。餡そぼろと小豆羊羹の2層になっていて、大きな栗がたくさん入っていた。季節限定の為、この時期は茶席で大好評だとか。
最近、どこでも見られるようになった“わらび餅”。大好きで様々な店で求めては頂いてきたが、作り方は知らなかった。以下はまつ月のわらび餅の説明書より。
****************************
蕨は日本でも全土に自生している。その赤子が掌をあげているような若芽は、古くから春を告げる植物として日本人に親しまれております。
蕨は地下に根茎を有し繁茂している。春になるとこの根から新芽が出る。新芽は夏にかけて順次出てどんどん生長する。この生長を通じてでん粉が合成され、根茎に蓄えられる。秋も深まると地上の葉部は生長が止まり、次第に茶色に色づき枯れる。枯れた葉部は除去し、根茎の掘り起こしにかかり、十月から翌年三月にかけて行う。
掘り出した根を洗い、石臼の中で粉砕する。
これに水を加えて、でん粉を洗い出し、三日間位何回も何回も水洗いと沈殿を繰り返して精製し、本わらび粉ができる。
それをさらに5年くらい”瓶”で寝かすことによって乾燥し、ねばりが出て最高級のわらび粉が誕生する。
昔は囲炉裏のある土間やくどに瓶を置くことで3年位で乾燥したが、近年は5年ほどかかる。
***************************
写真はわらびの根と5年かけて作り上げられたわらび粉の塊である。根は漢方薬のような香りがした。また、わらび粉の塊は薄いグレーをしていて、触るとさらさらとして、細かな白い粉が手についた。香りはない。
購入したわらび餅は、14個入りで1500円。1個は一口で口に入ってしまう位だから、結構なお値段だが、作り方を聞けば納得できる。保存料など入っていないので日保ちも3日ほどである。「きな粉もおいしいですから、残ってしまったらお餅にからめたりして召し上がって下さいね。」家に帰り頂くと、とろけるようなわらび餅。これまで頂いてきたものより優しく円やかな味がした。これが5年以上をかけて作った自然のホンモノの味なのだろう。
ご主人との話は1時間ほどにも及んだ。
「若い人がこういうものに興味をもってくれることがとても嬉しい、私は職人としてホンモノを伝えていきたい。」
「まつ月は代々松井友吉を名乗ります、私は6代目。あと2年もしたら後に譲ろうと思っていますが、死ぬまで職人でいようと思っています。」
「味百選というからには作った職人自らが自信の商品を持って集まり、自分で売る、そうあるべきだ。」
心に残る言葉を聞いた。
今の世の中はとても便利だが、本当の意味でおいしいもの、美しいものは実は手間隙と愛情をかけてこそ生まれるものと感じている。職人気質とでもいおうか、ご自身の仕事に誇りをもち、頑固にホンモノを探求しようとする方に出会えたことを幸せなことと思う。茶道はそういう方に出会う機会も増やしてくれている。
抹茶も5月にとれた新茶を茶壷に詰め、涼しいところで寝かせることで味を熟成させる。日本酒もまたしかり。思えば日本の食品は時間をかけることで円やかで優しい味を生んできたようだ。
まつ月は様々なテレビや雑誌でも取り上げられているらしいが、私は全く知らなかった。最後にご主人が言った。「今日初めてここで私と会ってまつ月を知ったのでしょう?それこそホンモノですよ。」
更にお互いの名刺を交換して素敵な約束をした。
「じょうよ饅頭ってね、伊勢芋で作るんですよ。いつ材料が手に入るかわかりませんが、あなたにホンモノのじょうよ饅頭を食べて頂きたいので出来たらお送りします。でも、僕が材料を探しに行くし代用品では絶対作らないので気長に待ってくださいよ。」と。
いつじょうよ饅頭が届くのか、なんとも楽しみなことである。作り手の顔が見えるということが何よりのご馳走だと思う。
いつかお店にも直接行って、ご主人に会いたい。愛知の山あいにあるお店だという。お近くの方は訪ねてみて下さい。素敵なご主人が最高のホンモノのお菓子を作っておられます。
まつ月
〒441-2524 愛知県豊田市黒田町尾知59番地5
電話 0536-82-2050(代)
ふらふら通路を歩いていたら、5年眠り柿、6年眠り柿、7年眠り柿、わらびの根、5年ものわらび粉という言葉が目に飛び込んできた。白く粉をふいた柿と、茶色い植物の根、壺に入ったわらび粉の塊が置かれていた。そばに立つご主人に、「これって何でしょう?教えて頂けますか?」と聞くと、「お時間大丈夫ですか?説明してもいいですか?」と笑った。
店頭には“柿ずくし”、限定の“栗羊羹”、“わらび餅”の3種が並んでいた。いずれもこのご主人が時間をかけて作り上げた自信の商品。ご主人の話は自然の恵み、力を感じる、為になるお話だった。
まず、眠り柿。渋柿をとって干し、寝かせる。5年、6年、7年と年数を重ねるほど柿は自然の白い粉をふき、甘味を増していく。 “柿ずくし”は7年ものを使用して作っている。
限定の“栗羊羹”。餡そぼろと小豆羊羹の2層になっていて、大きな栗がたくさん入っていた。季節限定の為、この時期は茶席で大好評だとか。
最近、どこでも見られるようになった“わらび餅”。大好きで様々な店で求めては頂いてきたが、作り方は知らなかった。以下はまつ月のわらび餅の説明書より。
****************************
蕨は日本でも全土に自生している。その赤子が掌をあげているような若芽は、古くから春を告げる植物として日本人に親しまれております。
蕨は地下に根茎を有し繁茂している。春になるとこの根から新芽が出る。新芽は夏にかけて順次出てどんどん生長する。この生長を通じてでん粉が合成され、根茎に蓄えられる。秋も深まると地上の葉部は生長が止まり、次第に茶色に色づき枯れる。枯れた葉部は除去し、根茎の掘り起こしにかかり、十月から翌年三月にかけて行う。
掘り出した根を洗い、石臼の中で粉砕する。
これに水を加えて、でん粉を洗い出し、三日間位何回も何回も水洗いと沈殿を繰り返して精製し、本わらび粉ができる。
それをさらに5年くらい”瓶”で寝かすことによって乾燥し、ねばりが出て最高級のわらび粉が誕生する。
昔は囲炉裏のある土間やくどに瓶を置くことで3年位で乾燥したが、近年は5年ほどかかる。
***************************
写真はわらびの根と5年かけて作り上げられたわらび粉の塊である。根は漢方薬のような香りがした。また、わらび粉の塊は薄いグレーをしていて、触るとさらさらとして、細かな白い粉が手についた。香りはない。
購入したわらび餅は、14個入りで1500円。1個は一口で口に入ってしまう位だから、結構なお値段だが、作り方を聞けば納得できる。保存料など入っていないので日保ちも3日ほどである。「きな粉もおいしいですから、残ってしまったらお餅にからめたりして召し上がって下さいね。」家に帰り頂くと、とろけるようなわらび餅。これまで頂いてきたものより優しく円やかな味がした。これが5年以上をかけて作った自然のホンモノの味なのだろう。
ご主人との話は1時間ほどにも及んだ。
「若い人がこういうものに興味をもってくれることがとても嬉しい、私は職人としてホンモノを伝えていきたい。」
「まつ月は代々松井友吉を名乗ります、私は6代目。あと2年もしたら後に譲ろうと思っていますが、死ぬまで職人でいようと思っています。」
「味百選というからには作った職人自らが自信の商品を持って集まり、自分で売る、そうあるべきだ。」
心に残る言葉を聞いた。
今の世の中はとても便利だが、本当の意味でおいしいもの、美しいものは実は手間隙と愛情をかけてこそ生まれるものと感じている。職人気質とでもいおうか、ご自身の仕事に誇りをもち、頑固にホンモノを探求しようとする方に出会えたことを幸せなことと思う。茶道はそういう方に出会う機会も増やしてくれている。
抹茶も5月にとれた新茶を茶壷に詰め、涼しいところで寝かせることで味を熟成させる。日本酒もまたしかり。思えば日本の食品は時間をかけることで円やかで優しい味を生んできたようだ。
まつ月は様々なテレビや雑誌でも取り上げられているらしいが、私は全く知らなかった。最後にご主人が言った。「今日初めてここで私と会ってまつ月を知ったのでしょう?それこそホンモノですよ。」
更にお互いの名刺を交換して素敵な約束をした。
「じょうよ饅頭ってね、伊勢芋で作るんですよ。いつ材料が手に入るかわかりませんが、あなたにホンモノのじょうよ饅頭を食べて頂きたいので出来たらお送りします。でも、僕が材料を探しに行くし代用品では絶対作らないので気長に待ってくださいよ。」と。
いつじょうよ饅頭が届くのか、なんとも楽しみなことである。作り手の顔が見えるということが何よりのご馳走だと思う。
いつかお店にも直接行って、ご主人に会いたい。愛知の山あいにあるお店だという。お近くの方は訪ねてみて下さい。素敵なご主人が最高のホンモノのお菓子を作っておられます。
まつ月
〒441-2524 愛知県豊田市黒田町尾知59番地5
電話 0536-82-2050(代)
私もお稽古場やお茶会で色々な方の振舞やお点前を拝見すると勉強になります。いいところは真似してお点前も精神的にも成長していきたいですね。
香嵐渓は、旅行パンフにも載っているのですね。
意外と、関西や関東のナンバープレートのお車も多かったです。
香嵐渓近辺は、あたりは本当に閑散とした山なのですが、紅葉の時期は、素晴らしい風景を見せてくれます。
たまごさんは、お稽古を長くされているのですね。
素晴らしい事ですね。
お稽古場で、長く続けていらっしゃる方のお点前を拝見したりすると、
懐の広さというか深さというか、その器量に感化され、お茶道の素晴らしさを改めて感じます。
お互い・・・だなんて、そんなことを言っていただけて、とても嬉しいです。
がんばります!
いいなあ。香嵐渓って美しいんでしょうね、旅行パンフでは見ますが、未だ行ったことがありません。
美しい紅葉を見ながらの旦那様とのドライブ、最高の休日ですね♪
まつ月の職人さんには覚悟のようなものが感じられたのですね。私がお会いしたご主人も笑顔の奥に毅然としたものをお持ちの方でした。
>長く続けるって、素晴らしいことですね。
>わたしもお茶道がんばろう。
そうですね、何でも長く続けるって素晴らしいかも。
私もなんとなく茶道続けてきましたが、長く続けることはすごいかもを今になって実感しています。
お互い頑張りましょう。
とても朝早く出かけたのですが、紅葉たけなわ故、ものすごい渋滞。
でも、色づく山を眺めながら、楽しくドライブしてきました。
閑散とした山の中にあり、比較的新しい店構えなのですが、やはり老舗。趣と格があり、
職人さんらしき男性からは、陶芸職人さんにみられるような「覚悟」のようなものを感じました。
長く続けるって、素晴らしいことですね。
わたしもお茶道がんばろう。
わらびもちは・・・柔らかくて、とっても美味しかったです。黄な粉も美味しかった~。
紅葉も楽しめて、とてもよい休日となりました。
素敵なお店を紹介してくださりありがとうございます。
もしや今ごろわらびもちを召し上がっていたりして?
車でいける距離だなんて羨ましい!!
どんなお店だったか、教えて下さいね~。
そうなんです、ご主人が自分の仕事に誇りを持っていて、楽しんでいるというのがひしひしと伝わってきて感動しました。何かに打ち込んでいる姿、大切なものを誰かに伝えようとするって素敵ですね。
人生のスパイス、これからもたくさん訪れますように。
素敵な出会いのご様子、興味深く拝見致しました。
職人技の宿ったホンモノのわらびもちを、食べてみたくなってきました。
ドライブがてら、週末主人に連れて行ってもらおうかな?
このわらびもちの事を話したら、きっと喜んで連れて行ってくれるに違いない!?
よろこびを感じていられるのがよくわかります。
いろいろな出会いが人生のスパイスになっていますね♪
ま素敵な出会いを分けて下さい!
最近、なんでも厚かましく聞く人になっています。
世の中知らないことが多くて。。。。。楽しい。
>手間と、時間のかかった 本物は、一番のご馳走です。
本当ですね。ちょっと一手間かけると味が格段に違ったりするし、手抜きや便利な食材も上手に使い分けなきゃいけないですねー。
あっという間の1時間でした。勉強になったし、楽しかったー。
>ワラビ粉だけで作っているものは殆どありませんね。
やっぱりそうなんですね。口ざわりが違いましたもん。普段のより、トロリと溶ける感じでした。
葛餅も混ぜ物が入っているんだ。。。。確かに小さい頃は葛も周囲で見ましたけど、最近見かけないなあ。。。。
今って合成や混ぜ物が多くて、本当に自然なものって口にできていないのかもしれませんね。
>伊勢芋の薯蕷饅頭が届く日、私までまたお話を伺うのが楽しみです。
いつかわからないサプライズ、本当に楽しみです。
また味わいをご報告したいと思います。
>「じょうよ饅頭」伊勢芋で作られるのですね・・・
私は粘りのある山芋なのかな、と思っていました。
伊勢芋は伊勢で取れるんでしょうけど、あまり詳しいことは知りません。。。。。今から楽しみ。
>和菓子に接する機会が多いのですが、季節のうつろいも味わうことができ幸せです・・・
本当に。お茶をやっていると御菓子からも季節を感じることができて幸せですね。
栗羊羹も、ほんもののわらびもち、伊勢芋からのじょうよ饅頭 たべてみたいです。
手間と、時間のかかった 本物は、一番のご馳走です。
町で売っているワラビ餅の原材料をみると、ちゃんとワラビ粉だけで作っているものは殆どありませんね。葛餅も葛粉では無く片栗粉が多くて、昔食べたものとは別物のようです。
伊勢芋の薯蕷饅頭が届く日、私までまたお話を伺うのが楽しみです。
「ワラビ餅」は好きでよくつくって、きなこや黒蜜で
いただきますが、こんな「ワラビ餅粉」でつくられたお味はいかがなものでしょうね・・・
「じょうよ饅頭」伊勢芋で作られるのですね・・・
和菓子に接する機会が多いのですが、季節のうつろいも味わうことができ幸せです・・・