マオ猫日記
「リヨン気まま倶楽部」編集日記
 




(写真)独立行政法人家畜改良センターの鳥取牧場で育成中の種牛候補牛(2009年、許可を得て撮影)

 宮崎県で4月20日に発生が確認された口蹄疫に関し、黒毛和種の種牛の産地である宮崎県(東国原英夫知事)が、口蹄疫に感染していない疑似患畜のと殺回避を求める中、報道によれば、政府は、5月28日、自由民主党などの野党提案をもとにした「口蹄疫対策緊急措置法」(2年の時限立法)を国会で可決・成立させ(提出からわずか3日のスピード成立)、家畜伝染病予防法(昭和26年法律第166号)にいう「疑似患畜」でなくても殺処分を実施できるようにしたほか、これまでは都道府県知事の事務とされていた「家畜の伝染性疾病の発生の予防」についても農林水産大臣の関与を強めるとともに、畜産農家に対する補償を全額国費で行うこととしたそうです。また、宮崎の種牛不足に対応するため、農林水産省所管の独立行政法人家畜改良センター(本部:福島県白河)から、種牛の候補となる牛を提供する方針も決めています。

 宮崎牛の種牛については、特例民法法人(社団法人)宮崎県家畜改良事業団が、「安平」「忠富士」「福桜」「福之国」「糸茂勝」「勝平正」「美穂国」「安重守」「日向国」の9種類を主として管理していますが、このうち「安平」については、5月17日の報道では既に殺処分。更に、特例で避難した6頭のうち、「忠富士」も口蹄疫の症状が出たため処分されています。東国原英夫・宮崎県知事は、これらのほか、種牛候補として飼育している49頭についても、殺処分しないよう特例を求めるとしていますが、27日になってそのうち2頭に口蹄疫を疑う症状が出てしまったこと、28日に国会が前述の口蹄疫対策緊急措置法をスピード成立させ(参議院では実質1日で可決)、都道府県知事が拒否しても農林水産大臣の権限で殺処分ができるようになったことから、49頭も殺処分する方向のようです。

(写真)独立行政法人家畜改良センター鳥取牧場で飼育されている黒毛和種(2009年、許可を得て撮影)

 我が国の和牛には、「黒毛和種」(中国地方で西欧牛と交配して1944年確定)、「褐色和種」(朝鮮牛にスイスの牛を交配させて誕生)、「日本短角種」(東北地方の在来牛にアメリカの短角種を交配させて誕生)、「無角和種」(山口県で和牛にスコットランドのアバディーン・アンガス種を交配して誕生)の4種類があり、中でも9割を占める「黒毛和種」については、各地で積極的な品種改良がなされています。
 そもそも、「家畜改良増殖法」(昭和25年法律第209号)によれは、国及び都道府県は、「家畜の改良増殖の促進に有効な事項については、これを積極的に行わなければならない」(第2条第1項)とされており、農林水産大臣は「家畜改良増殖目標」(第3条の2第1項)を、これを受けて都道府県知事は「家畜改良増殖計画」(第3条の3第1項)をそれぞれ定め、国(実際には独立行政法人家畜改良センター)は家畜の種畜について証明書や検定の制度を運営し(第2章)、遺伝病防止等の観点から家畜人工授精及び家畜受精卵移植についても制限規定を設け(第3章)ています。なお、独立行政法人家畜改良センターでは、このほか、「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」(平成15年法律第72号)(いわゆる牛トレーサびりティー法)に基づく個体識別事業も実施しています。

(写真)独立行政法人家畜改良センター鳥取牧場で飼育されている黒毛和種のこども(2009年、許可を得て撮影)

 和牛については、特に優秀な種牛を作出しようということで、特例民法法人(社団法人)家畜改良事業団(本部・東京都江東区)が実施する「肉用牛産肉能力平準化促進事業」があります。
 家畜改良事業団は、前述の独立行政法人家畜改良センターと名前が似ていますが、後者が「独立行政法人家畜改良センター法」(平成11年法律第185号) に基づいて設立された純粋な国の機関(広い意味での特殊法人。政府の一部とも言える)であるのに対し、前者は民法に基づいて設立された民間の法人(公益法人)で、1965年に財団法人として設立され、1971年に社団法人に改組されました。あくまでも民間の団体ですが、社団を構成する「社員」(株式会社でいう「株主」)は、47の都道府県と畜産関連団体となっており、公益法人(特例民法法人)の中では極めて公的な色彩が強い団体です。そして、「センター」が、家畜改良の上で必要な基本的な制度(種畜証明書の発行、個体識別等)を扱うのに対し、「事業団」は、具体的な家畜改良の研究をやっている、という構図になっています(無論、「センター」自身も、後述するように、先進的な技術を用いて具体的な家畜改良事業を自ら実施しています。)。
 「肉用牛産肉能力平準化促進事業」では、都道府県の家畜改良機関(畜産試験場等)や国の独立行政法人家畜改良センターが直接検定(種牛候補の子牛の肉を検査して、優良な種牛かどうかを判定すること)に基づき選出した種牛候補を受け入れ、産肉能力の間接検定(種牛候補の子牛の更に子牛の肉を検査して、最終的に種牛候補が優良な種牛であるかを判定すること。「直接検定」と「間接検定」を併せて、「後代検定」といいます。)により、最終的には候補から種牛を3分の1程度に絞り込み、最終的な「種牛」を決定しています。同事業団のホームページによれば、1980年に開始されたこの事業で136頭の候補種雄牛について検定が終了し、47頭が検定済種雄牛として選抜されているそうです。こうした種牛の精液を使って「繁殖農家」が和牛の子供を生産するのですが、生まれた子牛をそのまま育てるのではなく、育てるのは「肥育農家」と呼ばれる別の農家で、繁殖農家が生産した子牛はセリで「肥育農家」に買い取られて行きます。

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