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難民キャンプの生活を紹介する写真は1998年から2002年のもので、現在はモロッコ人捕虜が全員帰国したため、収容所がなくなるなどの変化がありますが、砂漠の中の生活が困難であることは変わりません。
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ル=モンド(フランス) 2013年4月17日
西サハラ問題をめぐりモロッコと米国が対峙
モロッコと米国の関係が突然冷却化している。それも、この4月にアガディールで行われる予定だった合同軍事演習アフリカン・リオンがキャンセルに追い込まれる始末だ。今月16日モロッコのニュース・サイト Lakome がこれを報じ、その後フランス通信AFPによるとモロッコはノーコメントだが米国はこれを肯定したそうだ。
そもそもの発端は、スーザン・ライス米国国連大使が西サハラの国連平和維持軍MINURSOの任務に人権監視を加えることを盛った安保理決議の草案を作成、これを「西サハラの盟友国グループ」と呼ばれる五カ国(米、英、露、仏、西)に提案したためだ。
草案では、西サハラのモロッコ支配下にある地域と、ポリサリオ戦線が統制するティンドゥフ難民キャンプ(アルジェリア領土内)の両地域で人権監視とその報告を行うメカニズムの設置が求められた。
微妙な立場に置かれたフランス
モロッコと旧来の友好国フランスは、微妙な立場に置かれている。というのもフランスは1976年以来国連で人権に関する決議に限り拒否権を使ったことがない。今回の草案について、ある仏外交官は「モロッコと米国の問題ですし、阻止したりはしませんよ」と不機嫌な面持ちで逃げ切った。
MINURSOは1991年以来西サハラに駐屯し、国連決議はその任期を毎年更新してきた。今年は今月22日に国連事務総長個人特使クリストファー・ロス氏が安保理事会で報告を行い、25日には決議案が採択されることになっている。また事務総長はその報告書の中で、MINURSOの任務に人権監視を入れることが緊急を要すると訴えている。
これまでもこの任務の必要性は英国を始め数々の国により指摘されてきたが、その都度、これを「主権」侵害とするモロッコの執拗な拒否に遭い日の目を見ることはなかった。
不可侵の国家一体を標榜
去る14日、モハメド6世宮殿で緊急会議が開催された。集ったのは国王顧問たちにアブデリラフ・ベンキラン首相、各党首そして珍しくも政府閣僚たちの顔ぶれもあった。というのも王室、とりわけ国王側近のアリ・エル=ヒムマが指揮を握るこの問題に関しては、閣僚たちは遠ざけられられるのが慣例だったため、この緊急会議は不可侵の国家一体を標榜したい意図がありありと伺われる。付け足すなら、国王の怒りを物語ってもいる。
会議後モロッコの発表した公式声明によると、「国連で取り扱われている我が国の問題の進捗、特にMINURSO任務を歪曲させようとするイニシアチヴ」については「内容、そして経緯や手順の面で予め相談もなく、今回のように一方的に物事を開始されることは不公平であり、不理解と拒否を招くものでしかない」と評されいる。
ところが文中では、輪番で今回国連決議案を起草することになった米国の名はどこにも見当たらない。モロッコは「こうしたイニシアチヴは断固として」拒否している。16日、ムスタファ・エルハルフィ通信大臣が会見を行い、このようなやり方は「王国の国土保全に対し、人権問題を道具にする敵の術策に手を貸すばかりだ」と公言した。
「MINURSOに一大変化をもたらすことになるでしょう」
モロッコは、国連のフアン・メンデス特別報告官を受け入れるなど最近の協力的姿勢を前面に押し出していたが、ここに及んで保全問題など貴重な関係を維持してきた国に裏切られたと激怒している。しかし西側外交筋は、モロッコが2012年国連事務総長の個人特使ロス氏を「信頼できない」と拒否し、その後逆戻りするなどの不手際を見せたことを忘れてはいない。
2012年9月、現米国政府とつながりがあるとされるケネディ財団が西サハラの人権状況について厳しい報告書を発表したが、これが米国の今回の方向転換のきっかけになったとも言われる。西サハラの人権活動組織 CODESA の執行部メンバー、モハメド・エルムタワキル氏は「MINURSOに一大変化をもたらすことになるでしょう。今後は人権侵害の訴えを受け付け、その報告を行うのですから。」と、喜びを隠しきれない。
「焦点はこれまで反対してきたフランスですが、現在テロリスト・グループの活動によって地域一帯の民主主義が全く脅かされている状態ですから、この手の決定については支持に回るべきでしょう。」と語った。
なお17日ヒィーマン・ライツ・ウォッチは安保理事会メンバー国に対し、人権問題をMINURSOの任務にしない「異常な状態を終焉させる」よう訴えている。