雲追う民

難民キャンプで暮らすサハラウィの生活を紹介する写真

短信25 米国草案を歓迎

2013年04月28日 | 西サハラ短信

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サハラ通信SPS(西サハラ)

米国の草案は挫折したものの、ポリサリオ戦線は同国のイニシアチヴを歓迎




2013年4月24日 ニューヨーク
ポリサリオ戦線は、安保理事会でMINURSOの任務に人権監視を加えようと試みた今回の米国のイニシアチヴを歓迎していると表明した。

米国の草案は結局日の目をみなかったが、駐国連ポリサリオ戦線のアフメド・ブハリ代表はAPS通信(アルジェリア)のインタヴューに対し米国のイニシアチヴは「占領下の西サハラで自由を求めて闘う人々への強い支援」となったと語った。

また「西サハラの人々の人権問題に光を当て、国連が人権擁護を行う必要性を訴えている」今回のイニシアチヴには「米国が西サハラ人民の人権問題を真剣に考慮していることを示す」大きな意義があり、「この姿勢は今後も変わらないだろうし、また、モロッコが残忍かつ組織的な方法で西サハラの人権侵害を行っている問題を安保理事会は引き続いて取り上げていくだろう」「世界一の大国によるイニシアチヴは、西サハラの大儀と占領下での抵抗運動にとって”精神的勝利”につながった。」とコメントした。






短信24 三国からの圧力

2013年04月25日 | 西サハラ短信

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エル=パイス(スペイン)2013年4月23日

モロッコ、フランス、ロシアは米国に提案を断念させることに成功


米国のスーザン・ライス国連大使は先週、MINURSOの任務に人権監視を加える案を「西サハラのための事務総長の盟友国グループ」(米、英、仏、露、西)に対し提案した。MINURSOは、国連平和維持軍の中で唯一この人権監視の機能を有さないPKOだ。
しかしフランス、ロシアは拒否権行使を回避できるよう、米国に草案内容を変更させることに全力投球。スペインもこの二国側についた。結局のところ米国大使はグループのコンセンサスの下、新たな草案作成をするに至った。
(中略)
一方モロッコ側はこの間敵意をむき出しにし、米国案を「主権」侵害と非難した王室声明を皮切りに全政党、行政組織、そして諸人権NGOまでも(AMDHモロッコ人権委員会を除く)が後に続いた。
さらに今月末に予定されていた米国と同演習をキャンセルし、オトマニ外相は国会で初めての激しい対米非難を表明。

こうした大規模な攻撃を受けたライス国連大使は、歩を譲ることに決定。人権監視の任務はMINURSOではなく、国連人権高等弁務官が行うという内容に修正された。しかし、後者が実際に発揮できる力は前者の足元にも及ばないにもかかわらず、親モロッコの国々はこれに同意を示さない。
そしてライス大使が22日、やっとコンセンサスを得たテキストは、人権擁護奨励の必要性を強調するものの、そのための装置を設けることには一言も触れられていない内容となった。
西サハラの決議案は、今月末までに安保理事会で決定される。





短信23 モロッコと米国の対峙

2013年04月19日 | 西サハラ短信

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ル=モンド(フランス) 2013年4月17日

西サハラ問題をめぐりモロッコと米国が対峙


モロッコと米国の関係が突然冷却化している。それも、この4月にアガディールで行われる予定だった合同軍事演習アフリカン・リオンがキャンセルに追い込まれる始末だ。今月16日モロッコのニュース・サイト Lakome がこれを報じ、その後フランス通信AFPによるとモロッコはノーコメントだが米国はこれを肯定したそうだ。

そもそもの発端は、スーザン・ライス米国国連大使が西サハラの国連平和維持軍MINURSOの任務に人権監視を加えることを盛った安保理決議の草案を作成、これを「西サハラの盟友国グループ」と呼ばれる五カ国(米、英、露、仏、西)に提案したためだ。

草案では、西サハラのモロッコ支配下にある地域と、ポリサリオ戦線が統制するティンドゥフ難民キャンプ(アルジェリア領土内)の両地域で人権監視とその報告を行うメカニズムの設置が求められた。


微妙な立場に置かれたフランス

モロッコと旧来の友好国フランスは、微妙な立場に置かれている。というのもフランスは1976年以来国連で人権に関する決議に限り拒否権を使ったことがない。今回の草案について、ある仏外交官は「モロッコと米国の問題ですし、阻止したりはしませんよ」と不機嫌な面持ちで逃げ切った。

MINURSOは1991年以来西サハラに駐屯し、国連決議はその任期を毎年更新してきた。今年は今月22日に国連事務総長個人特使クリストファー・ロス氏が安保理事会で報告を行い、25日には決議案が採択されることになっている。また事務総長はその報告書の中で、MINURSOの任務に人権監視を入れることが緊急を要すると訴えている。

これまでもこの任務の必要性は英国を始め数々の国により指摘されてきたが、その都度、これを「主権」侵害とするモロッコの執拗な拒否に遭い日の目を見ることはなかった。


不可侵の国家一体を標榜

去る14日、モハメド6世宮殿で緊急会議が開催された。集ったのは国王顧問たちにアブデリラフ・ベンキラン首相、各党首そして珍しくも政府閣僚たちの顔ぶれもあった。というのも王室、とりわけ国王側近のアリ・エル=ヒムマが指揮を握るこの問題に関しては、閣僚たちは遠ざけられられるのが慣例だったため、この緊急会議は不可侵の国家一体を標榜したい意図がありありと伺われる。付け足すなら、国王の怒りを物語ってもいる。

会議後モロッコの発表した公式声明によると、「国連で取り扱われている我が国の問題の進捗、特にMINURSO任務を歪曲させようとするイニシアチヴ」については「内容、そして経緯や手順の面で予め相談もなく、今回のように一方的に物事を開始されることは不公平であり、不理解と拒否を招くものでしかない」と評されいる。
 
ところが文中では、輪番で今回国連決議案を起草することになった米国の名はどこにも見当たらない。モロッコは「こうしたイニシアチヴは断固として」拒否している。16日、ムスタファ・エルハルフィ通信大臣が会見を行い、このようなやり方は「王国の国土保全に対し、人権問題を道具にする敵の術策に手を貸すばかりだ」と公言した。

「MINURSOに一大変化をもたらすことになるでしょう」

モロッコは、国連のフアン・メンデス特別報告官を受け入れるなど最近の協力的姿勢を前面に押し出していたが、ここに及んで保全問題など貴重な関係を維持してきた国に裏切られたと激怒している。しかし西側外交筋は、モロッコが2012年国連事務総長の個人特使ロス氏を「信頼できない」と拒否し、その後逆戻りするなどの不手際を見せたことを忘れてはいない。

2012年9月、現米国政府とつながりがあるとされるケネディ財団が西サハラの人権状況について厳しい報告書を発表したが、これが米国の今回の方向転換のきっかけになったとも言われる。西サハラの人権活動組織 CODESA の執行部メンバー、モハメド・エルムタワキル氏は「MINURSOに一大変化をもたらすことになるでしょう。今後は人権侵害の訴えを受け付け、その報告を行うのですから。」と、喜びを隠しきれない。

「焦点はこれまで反対してきたフランスですが、現在テロリスト・グループの活動によって地域一帯の民主主義が全く脅かされている状態ですから、この手の決定については支持に回るべきでしょう。」と語った。

なお17日ヒィーマン・ライツ・ウォッチは安保理事会メンバー国に対し、人権問題をMINURSOの任務にしない「異常な状態を終焉させる」よう訴えている。




短信22 マリ紛争の影響

2013年04月16日 | 西サハラ短信

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ル=モンド紙(フランス) 2012年4月12日


マリ紛争の影響が危ぶまれる西サハラ



国連事務総長は西サハラの若者たちの過激化を懸念。MINURSOの任期については一年の延長を求める。


西サハラ紛争はモロッコと、アルジェリアに支援された独立派ポリサリオ戦線の間で続く、国際紛争の中でも最も長引く紛争の一つとなっているが、最近のマリ軍事介入の悪影響がこの地域に及ぶのではないかと危惧されている。

藩国連事務総長は、個人特使クリストファー・ロス氏からの報告を受け、今月22日から開かれる安保理事会に向けて報告書を作成したが、その中で「サヘル地域における治安悪化と不安定化が強まる現在、長引くこの紛争の解決が急務とされる」と警鐘を鳴らしている。

本紙が入手した23ページの報告書コピーでは、事務総長はポリサリオ戦線がテロリスト・グループの活動を「断固として」糾弾し、難民キャンプの青年層をターゲットにした引き抜き行為を未然に防ぐため尽力しているとコメント。

また2011年10月に三名のヨーロッパ人が難民キャンプで誘拐され去年解放されたことや、同年7月にスペイン政府が現地活動していた17名のNGO活動家たちを本国帰還させたことに言及するとともに、ポリサリオ戦線指導部が「テロリストが内部潜入している可能性を否定はできない」と伝えたことも明記している。

1991年以来現地で停戦監視を続ける西サハラ住民投票のための国連派遣団(MINURSO)は、この拡大する危険性を前に「威力は次第に弱まり」平和維持部隊が危険にさらされる状況が生まれているそうだ。現地では既に夜間パトロールが廃止となり、またモーリタニア国境近辺のパトロールは安全性が保障されないところからポリサリオ戦線部隊が完全にエスコートしている。

事務総長は、各国政府はマリ紛争の悪影響が西サハラに及ぶ可能性を危惧していると述べるとともに、難民キャンプに生まれ育つ若者たちにとって「和平交渉が進展を見せないことへのフラストレーションだけではなく、将来的に雇用を期待することはできない環境にある」ところから「青年たちの抱えた不安定な状況」や「二世代、三世代」の過激化の危険性が生まれるとコメントしている。さらには和平へ向け当事者双方間に横たわる溝が打破されるどころか、マリ問題は事態をさらに悪くし「緊張が続く当一帯の状況は近隣諸国間に硬直化と相互不信を作りだしてしまった」そうだ。

こうしたことを踏まえ藩事務総長は今月30日に満期となるMINURSOの任期を一年延長し、派遣軍人を15名増して計245名に、また警官を6名追加派遣することを求めている。そして事務総長は今回初めて、人権問題を監視する任務の必要性に触れている。

この問題はこれまでモロッコ側の頑固とした拒否に遭ってきたが、MINURSOは国連が世界に派遣する平和維持軍の中で人権保護が任務に入っていない唯一の部隊だ。安保理事会メンバー国のなかには英国のように人権監視の任務を与えるべきとする国々があり、この管轄なくしては平和維持軍の役目は事実報告つまり停戦違反件数を数えるだけでしかないという意見を示している。

国連事務総長はこの問題に触れるにあたり、行き過ぎた表現を慎みつつ又モロッコが自国の国家人権評議会支部を西サハラに置いたことを大きな一歩と歓迎しながらも、「人権侵害に関する定期報告を受け止める限り、一貫して総合的に現地の人権状況を公正に独立した立場から監視する必要性がますます急を要するものとなってきている」と述べている。

藩事務総長のこの言葉にはかつてなかったほどの揺るぎない姿勢が伺われ、これまでのソフト口調の報告書に慣れていた外交官たちを一驚させたほどだ。西サハラ紛争は何年も前から国際社会の意見を分断し、立ち往生している問題だ。ポリサリオ戦線は人民の自決権行使による住民投票を求め、一方モロッコは1975年に領土を部分的に併合しフランスや合衆国の後ろ盾を得て「大幅な自治」を提案している。

国連事務総長個人特使のクリストファー・ロス氏は2012年秋、2009年の就任以来初めて、西サハラを訪問した。現地ではモロッコ当局により準備された人物たちと会談した以外にも、西サハラ市民社会の代表者たち、青年や女性たちとも会談を行った。しかし、国連事務総長の言葉にある「住民間にある自治と独立それぞれの支持規模を見積もること」は不可能だった。停滞状況は相変わらずのようだ。

今回の報告書について、ポリサリオ戦線のアフメド・ブハリ駐国連代表は「慎重」だがバランスが取れていると評し「本筋から離れることなく、とにかくも、人権擁護の監視体制を設けるためにありとあらゆる論拠を引き出している」とコメントした。本紙はまた、2012年から安保理事会非常任理事メンバーになっているモロッコ大使にも尋ねてみたが、目下のところノーコメントとのことだった。

(文責:アレクサンドラ・ジュネスト、イサベル・マンドゥロー) 



新郷のコメント:
本文訳作業の最中、米国はMINURSOに人権監視の任務を与えるよう安保理に提案を決定したというニュースが入りました。一方モロッコに無条件支持を寄せてきたフランスですが、先日モロッコ公式訪問をしたオランド大統領のモロッコ国会における演説では、従来とは明らかに異なる言句が注目され、これからの姿勢に修正が入るのではないかと解釈する意見も出ています。