光文社文庫、上下巻。ヤフオクで数冊セットで購入したもののひとつ。
やはり絶版だが、光文社サイトでDL販売してるみたい。でも紙のほうが読みやすいよねやっぱり。PDAとか持ってるひと向けなんだろうか?私はできるビジネスマンではないし、どころかビジネスマンですらない。端くれだ。
さておき、武魂絵巻。
エンターテインメントに徹したタイプの作品であり、けっこう行き当たりばったりや偶然の出会いで話が進む。
内容。真田幸村の遺児である主人公、五位鷺志津馬(ごいさぎ・しづま)は倒幕を念願とする美剣士である。剣をとっては作品世界いちの彼であるが、独力で達成できる野望ではない。
そこで有力大名に近づき、これをそそのかして謀反させ、天下を乱すところから始めようと考える。幕府に楯突く意思と力を持つ大名として、彼は徳川忠長を選んだ。
…この時点ですでに野望は失敗臭い。忠長って…
が、ともかくも、そこを皮切りに幕府に不満のある諸大名に声をかけて回り、クーデターに備えようとする。これが五位鷺のシナリオ、骨子になる部分。まずオーソドックスな導入であると言えようが、…でも、これが全然すすまない。
この長編の肝は、なんと言っても妙に豊富な登場人物にある。彼らがそれぞれに意図をもち、絡み合うやら合わないやら、勢い良く空転し続けていく所にある。
恨みつらみ、すてばちな暴力、復讐心、愛。五位鷺やその従者・鬼丸などは、とてもまっとうな性格と行動の持ち主である。あるが、それゆえにあんまりお話を動かしてくれない。また、お話を強烈に小突き回してはあらぬ方向に持っていくような、異常にあくの強い人物がぞろぞろと出てくる小説なのだ。話がさっぱり進まない。
たとえば五位鷺のライバル的な剣士、車大膳。口癖は「蛆虫!」行き当たりばったりに行動する狂犬のような男。性格は最低のサディストでマゾヒスト、本物のロリコンで、強姦魔。主な収入源は辻斬り強盗。たまに登場しては状況をひっかきまわし、死体をいくつか残して退場する。
たとえば五位鷺に恋する女、織姫。強烈なツンデレであり、五位鷺に執拗に近づこうとする。そのためには手段を選ばない。五位鷺が駿府に行ったと聞けば、即追いかけることを決める。このために徳川忠長の側室になるのも辞さない…あれ? 五位鷺はしかし、ハーレムものラブコメの主人公さながらの鈍さを持つモテモテ童貞であるため、いっさい相手にしてもらえない。
たとえば忍者、まよわしの九蔵。織姫に懸想するが、ツンデレのツン部分しか与えてもらえないキモメン。車大膳を兄の仇として付け狙う。鬼丸を流儀の敵として付け狙う。伊賀者を語らって鬼丸を罠にかけるが、逆襲され、伊賀者数名に付けねらわれる。やはり行き当たりばったりに行動しては、状況をひっかきまわして居なくなる。
お話は、こうしたクレイジーな人物たちが足を引っ張り合って進行する。
五位鷺はほとんど受動的である。上記の設定のほかにはこれといった特徴のない主人公なのだ。ナイーブで朴訥な、めずらしいタイプのテロリストである。ぜったい成功しねえよコイツ。そう思わせること請け合いであり、事実成功しない。常に色々な厄介ごとに巻き込まれては時間を無駄にする。まあ、本筋も進めようにも、しょせんはかついでるのが忠長なのでどうにもならないのだが。
全体にライトノベルっぽい。何かのTRPGのリプレイを読んでるような気分になる。五位鷺がダメージディーラー、鬼丸が情報収集担当の盗賊。お目付け役の早念和尚は、きっとベテランプレイヤーなんだろう。キャンペーンシナリオを遊んでいて、セッションごとに別の参加者が居てゲストPCが入ってくるような感じだ。たいていのセッションではマスターの思惑を早々に外れてシナリオが進み、解決もけっこう場当たり的に行われる。
そう考えて読んでみると、そういえばビジュアル面にも気を使っている。イラストに起こしたら映えそうだ。織姫のツンデレ、ヒロインのロリエロ、ショタっ子、エロお姉さんと、隙のない布陣である。
読み終わったあと、べつに何も残らないお話である。でも読んでいる間はニヤニヤ笑いが止まらない。その場その場の強引な展開が文句なく楽しい、佳作。
やはり絶版だが、光文社サイトでDL販売してるみたい。でも紙のほうが読みやすいよねやっぱり。PDAとか持ってるひと向けなんだろうか?私はできるビジネスマンではないし、どころかビジネスマンですらない。端くれだ。
さておき、武魂絵巻。
エンターテインメントに徹したタイプの作品であり、けっこう行き当たりばったりや偶然の出会いで話が進む。
内容。真田幸村の遺児である主人公、五位鷺志津馬(ごいさぎ・しづま)は倒幕を念願とする美剣士である。剣をとっては作品世界いちの彼であるが、独力で達成できる野望ではない。
そこで有力大名に近づき、これをそそのかして謀反させ、天下を乱すところから始めようと考える。幕府に楯突く意思と力を持つ大名として、彼は徳川忠長を選んだ。
…この時点ですでに野望は失敗臭い。忠長って…
が、ともかくも、そこを皮切りに幕府に不満のある諸大名に声をかけて回り、クーデターに備えようとする。これが五位鷺のシナリオ、骨子になる部分。まずオーソドックスな導入であると言えようが、…でも、これが全然すすまない。
この長編の肝は、なんと言っても妙に豊富な登場人物にある。彼らがそれぞれに意図をもち、絡み合うやら合わないやら、勢い良く空転し続けていく所にある。
恨みつらみ、すてばちな暴力、復讐心、愛。五位鷺やその従者・鬼丸などは、とてもまっとうな性格と行動の持ち主である。あるが、それゆえにあんまりお話を動かしてくれない。また、お話を強烈に小突き回してはあらぬ方向に持っていくような、異常にあくの強い人物がぞろぞろと出てくる小説なのだ。話がさっぱり進まない。
たとえば五位鷺のライバル的な剣士、車大膳。口癖は「蛆虫!」行き当たりばったりに行動する狂犬のような男。性格は最低のサディストでマゾヒスト、本物のロリコンで、強姦魔。主な収入源は辻斬り強盗。たまに登場しては状況をひっかきまわし、死体をいくつか残して退場する。
たとえば五位鷺に恋する女、織姫。強烈なツンデレであり、五位鷺に執拗に近づこうとする。そのためには手段を選ばない。五位鷺が駿府に行ったと聞けば、即追いかけることを決める。このために徳川忠長の側室になるのも辞さない…あれ? 五位鷺はしかし、ハーレムものラブコメの主人公さながらの鈍さを持つモテモテ童貞であるため、いっさい相手にしてもらえない。
たとえば忍者、まよわしの九蔵。織姫に懸想するが、ツンデレのツン部分しか与えてもらえないキモメン。車大膳を兄の仇として付け狙う。鬼丸を流儀の敵として付け狙う。伊賀者を語らって鬼丸を罠にかけるが、逆襲され、伊賀者数名に付けねらわれる。やはり行き当たりばったりに行動しては、状況をひっかきまわして居なくなる。
お話は、こうしたクレイジーな人物たちが足を引っ張り合って進行する。
五位鷺はほとんど受動的である。上記の設定のほかにはこれといった特徴のない主人公なのだ。ナイーブで朴訥な、めずらしいタイプのテロリストである。ぜったい成功しねえよコイツ。そう思わせること請け合いであり、事実成功しない。常に色々な厄介ごとに巻き込まれては時間を無駄にする。まあ、本筋も進めようにも、しょせんはかついでるのが忠長なのでどうにもならないのだが。
全体にライトノベルっぽい。何かのTRPGのリプレイを読んでるような気分になる。五位鷺がダメージディーラー、鬼丸が情報収集担当の盗賊。お目付け役の早念和尚は、きっとベテランプレイヤーなんだろう。キャンペーンシナリオを遊んでいて、セッションごとに別の参加者が居てゲストPCが入ってくるような感じだ。たいていのセッションではマスターの思惑を早々に外れてシナリオが進み、解決もけっこう場当たり的に行われる。
そう考えて読んでみると、そういえばビジュアル面にも気を使っている。イラストに起こしたら映えそうだ。織姫のツンデレ、ヒロインのロリエロ、ショタっ子、エロお姉さんと、隙のない布陣である。
読み終わったあと、べつに何も残らないお話である。でも読んでいる間はニヤニヤ笑いが止まらない。その場その場の強引な展開が文句なく楽しい、佳作。