携帯破壊者~FOMA destroyer

三ヶ月に一度書くくらいの日記コーナー。

「エコール」見てきた~映画の話とか~暗闇のスキャナー

2006-12-03 00:35:38 | Weblog
久々に温かかった日。どこかで誰かが褒めていた映画「エコール」を見に行く。

なんていうか…不条理系?
睡眠をたっぷりとってる人でないと完全に見ることは難しいかも。シネマライズだとシートがふかふかなので、さらにヤバい。
筋らしいものは一応あるのだが、ひたすらに不安感を与えるような要素が満載で安心して見れない。テーマでなく、要素の積み重ねで作ってる。話に軸がないので、気持ちの入れ所がない。でも映像は妙に訴えるものがあり、白倉由美もしくはタルコフスキーみたいな美しさ。
べつに損したとは言わないが…見てよかったとは思わない。
つぎにライズに来るときは、たぶん新海誠の新作のときだ。
これは楽しみ。

映画館で驚いたこと、というか個人的に望外の喜びだったこと。
P・K・ディックの「暗闇のスキャナー」を上映するらしい。
映画化してたことすら知らなかった。12月16日から正月またぎで、タイトルは『スキャナー・ダークリー』。
原作の原題がA Scanner Darklyなので、そっちに合わせたのかも。語感もシャープでかっこいいし。

冷戦時代に書かれたこともあり、ディック作品はつねに錯綜して過酷で、焦燥感にあふれている。SF的なパラダイムを多く提示し、ドラステッィクに展開させる手法は悪夢のごとく。私はその現実崩壊感覚…プラグマティックな現実に対する根本的な不信感みたいなものを愛してやまない。
「見てきたものや聞いたこと 今まで憶えた全部 でたらめだったら面白い」っていう歌がある。ディックの提供するのはその種のスリルであり、滑稽さであり、悲しみである。語り口の巧みさとあいまって、思春期にはずいぶんとやられたものだ。そんな気持ち、わかるでしょう。
中でも「暗闇のスキャナー」は、作者本人の実人生の色をうつしていることもあり、とてもシリアスな悲哀が胸を打つ作品だ。個人的にはもっとも優れているとも思っている。SF的なガジェットは殆ど使っていないにも関わらず、現実崩壊感覚は小船の底に染み出す水のようにソリッド。やさしくもパンクな日々はいつのまにか過ぎてしまっていて、死ぬほど怖い真実の瞬間がやってくるのだ。

…とまあ、我を忘れて感情のままにつらつらぐだぐだ書くくらい大好きな作品なので、とりあえず前売りは抑えておいた。
映画本体は…どんなもんだろう。全体的的な不快さ、湿度みたいなものはいい具合に出ていると思ったが。