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「戦争法」違憲訴訟 訴状(2016年6月8日提訴)[2]

2016-06-09 | 集団的自衛権

「戦争法」違憲訴訟 訴状(2016年6月8日提訴)[2]

http://ikensosyo.org/より

第2 集団的自衛権の行使、後方支援活動の実施及び協力支援活動の実施の違憲性

 1 新「安保法制」の制定

(1) 政府は、平成26年7月1日、「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」と題する閣議決定を行った(以下「26・7閣議決定」という。)。

 これは、「我が国を取り巻く安全保障環境は根本的に変容するとともに、更に変化し続け、我が国は複雑かつ重大な国家安全保障上の課題に直面している」「脅威が世界のどの地域において発生しても、我が国の安全保障に直接的な影響を及ぼし得る状況になっている」などとの情勢認識に基づき、「特に、我が国の安全及びアジア太平洋地域の平和と安定のために、日米安全保障体制の実効性を一層高め、日米同盟の抑止力を向上させることにより、武力紛争を未然に回避し、我が国に脅威が及ぶことを防止することが必要不可欠である。その上で、いかなる事態においても国民の命と暮らしを断固として守り抜くとともに、国際協調主義に基づく『積極的平和主義』の下、国際社会の平和と安定にこれまで以上に積極的に貢献するためには、切れ目のない対応を可能とする国内法制の整備をしなければならない」として、以下のような方針を示した。

①「武力攻撃に至らない侵害への対処」として、警察機関と自衛隊を含む関係機関が基本的な役割分担を前提として、より緊密に協力する体制を構築すること、海上警備行動の下令や手続の迅速化の措置を講じること、自衛隊による米軍部隊の武器等防護の法整備等を行う。

②「国際社会の平和と安定への一層の貢献」として、)後方支援について、「武力行使との一体化」の問題が生じないように、活動の地域を「後方支援」や、いわゆる「非戦闘地域」に限定するなどの法律上の枠組みを設定してきたが、「積極的平和主義」の立場から、他国が「現に戦闘行為を行っている現場」ではない場所では支援活動を実施できるようにする、)国際的な平和支援活動について、自己保存型と武器等防護に限定していたが、「駆け付け警護」に伴う武器使用及び「任務遂行のための武器使用」のほか、領域国の同意に基づく邦人救出などの「武力の行使」を伴わない警察的な活動ができるよう、法整備を進める。

③「憲法第9条の下で許容される自衛の措置」として、我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他の適当な手段がないときに、必要最小限度の実力を行使することは、憲法上許容されるとした。

(2) 政府は、その後、平成27年4月27日、アメリカ合衆国との間で、新安保法制法案の内容に則した新たな「日米防衛協力のための指針」(新ガイドライン)を合意した上、5月14日、新安保法制法案を閣議決定した(以下「27・5閣議決定」という。)。この法案は、自衛隊法・事態対処法・周辺事態法・国連平和維持活動協力法等10件の法律を改正する平和安全法制整備法案と、従来のようなテロ特措法・イラク特措法等の特別立法なしに随時自衛隊を海外に派遣して外国軍隊を支援できるようにする一般法としての新規立法である国際平和支援法案の、2つの法案によって構成されたものである。そして政府は、翌5月15日、同法案を衆議院に提出した。
 法案の内容は、基本的に26・7閣議決定に基づくものとなっているが、それを超越した部分もある。重要な点として例えば、後方支援について、従来の「周辺事態」を「重要影響事態」に広げて地理的限定なく自衛隊を派遣できるようにし、また、特別立法なしに世界中で生ずる「国際平和共同対処事態」にいつでも自衛隊を派遣できるようにし、さらにこれらの後方支援の内容として他国軍隊に対する弾薬の提供や戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油・整備を可能とした。また、国連平和維持活動協力法においても、国連が統括しない「国際連携平和安全活動」にも自衛隊が参加できるようにしたなどの点がある。

(3) 新安保法制法案は、衆議院で同年7月16日に可決され、参議院で同年9月19日に可決されて、同月30日公布され、平成28年3月29日施行された。

2 集団的自衛権の行使が違憲であること

(1) 集団的自衛権の行使容認

 新安保法制法は、自衛隊法及び武力攻撃事態対処法を改正して、これまでの武力攻撃事態等(武力攻撃事態及び武力攻撃予測事態をいう。以下同じ。)との概念に加えて、存立危機事態という概念を創り出し、自衛隊が、個別的自衛権のみならず、集団的自衛権を行使することを可能とした。
 すなわち、改正後の事態対処法2条4号において、存立危機事態は「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」と定義され、自衛隊法76条1項2号は、防衛出動の一環として、存立危機事態における自衛隊の全部又は一部の出動を規定した。そして防衛出動をした自衛隊は、「必要な武力の行使をすることができる」(同法88条1項)ことになる。

(2) 憲法9条の解釈における集団的自衛権行使の禁止

 憲法9条の解釈については、自衛のための戦争を含めてあらゆる戦争を放棄して非武装の恒久平和主義を定めたものであるという解釈から、自衛のための必要最小限度の実力の保持は憲法も許容しているとの解釈、さらには否定されるのは日本が当事者となってする侵略戦争のみであって集団的自衛権の行使も許されるとする解釈まで、様々な立場がある。 そして、日本政府は、これまで、日本国憲法も独立国が当然に保有する自衛権を否定するものではなく、自衛のための必要最小限度の実力組織である自衛隊は憲法9条2項の「戦力」には当たらないとする一方で、その自衛権の発動は、①我が国に対する急迫不正の侵害があること、すなわち武力攻撃が発生したこと、②これを排除するために他の適当な手段がないこと、③必要最小限度の実力行使にとどまるべきことの3つの要件(自衛権発動の3要件)を満たすことが必要であるとの解釈を定着させてきた。そして、政府は、自国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利としての集団的自衛権の行使は、この自衛権発動の3要件、特に①の要件に反し、憲法上許されない、と解してきた。
 また、政府は、自衛権による実力行使の「必要最小限度」については、それが外部からの武力攻撃を我が国の領域から排除することを目的とすることから、我が国の領域内での行使を中心とし、必要な限度において我が国の周辺の公海・公空における対処も許される。他方、武力行使の目的をもって自衛隊を他国の領土・領海・領空に派遣するいわゆる海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されないとしてきた。
 すなわち、政府は、自衛隊による実力の行使は、我が国の領域への侵害の排除に限定して初めて憲法9条の下でも許され、その限りで自衛隊は「戦力」に該当せず、「交戦権」を行使するものでもないと解してきた。それ故に、他国に対する武力攻撃を実力で阻止するものとしての集団的自衛権の行使は、その範囲を超えるものとして憲法9条に反して許されないと解してきたのである。
 この海外派兵の禁止、集団的自衛権の行使の禁止という解釈は、昭和29年の自衛隊創設以来積み上げられてきた、一貫した政府の憲法9条解釈の根幹であり、内閣法制局及び歴代の総理大臣の国会答弁や政府答弁書等において繰り返し表明されてきた。それは、憲法9条の確立された政府の解釈として規範性を有するものとなり、これに基づいて憲法9条の平和主義の現実的枠組みが形成され、「平和国家日本」の基本的あり方が形造られてきたのであった。

(ハンマー)

 



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