http://www.amazon.co.jp/gp/product/410131635X/
出版不況の原因をさぐって関係業界を取材したルポルタージュ.
面白い本なので是非買ってみて.数年前に出版された本なのでおそらくブックオフにもあるだろうけど,出版不況に関する本をブックオフで買うのは皮肉にすぎる.できたら書店で,と言っておこうかな.
本が売れないことの象徴として「新刊書の返品率が40%」というフレーズが何度となく使われている.
わたしは特に取次に関する章を興味深く読んだ.
* * *
さて,文庫版上巻の第6章〈図書館が「時代」と斬り結ぶ日〉が図書館に充てられている.(下巻に少しだけアカデミーヒルズ六本木ライブラリーの話が出てくるが,ここでは触れない.)
出版不況がテーマということもあって内容は主にベストセラー本問題.それに絡んで選書のはなしも出てくる.
きちんとした選書をするためには,図書館員が各種ツールを使いこなす,出版洪水のなかで新刊情報をフォローしていく,利用者のニーズをつかむために社会の流れにも敏感である……などなど,日々勉強することが必要なはずだ.
インタビューを受けた荒川区南千住図書館の西河内靖泰さんの猛勉強ぶり(p.475)に感心したので紹介したい.なんでも,
・週7回は書店に行く
・毎朝新聞6紙(朝日・毎日・日経・読売・産経・東京)に目を通す
・書評紙,業界紙,PR 誌は次のようなものを自分で購入してチェックする.「週刊読書人」,「図書新聞」,「新文化」,「出版ニュース」,「出版ダイジェスト」,「本の雑誌」,「ダ・カーポ」,「ダ・ヴィンチ」,取次の新刊情報,「本の話」,「ちくま」,「みすず」,「未来」,「波」,「図書」,……
・目録,年鑑,年報などは(疲れたので省略
だそうだ.
こういう日々の努力をしてるひとだけが「専門性」という言葉を使っていいんだろう.(もっとも,別にまったく同じことをやる必要はないと思うけど.)
* * *
最後にくだらないことを.
著者は図書館に向けてこう言う(p.461).
ベストセラーをリクエストされたら「そんな本くらい自分でお買いになったらいかがですか。うちは無料貸本屋ではありません」といえるくらいの自負をもったらどうか……。
この意見の妥当性はひとまず,細かいつっこみをすると…….
リクエストされるのは,出版されたばかり(あるいは前)の「ベストセラーの卵」であって,その時点ではまだ「ベストセラー」ではない,というケースが多いんじゃないだろうか?
仮に「ベストセラーは買わない」という(極端な)方針の図書館があったとして,その館ではこういう事態にどう対処するのだろうか.職員が「この本はベストセラー間違いないだろう」と判断してリクエストを断るのか.そういうのって,なんだかなあ.