りぶろぐ

a weblog on librarianship

引っ越しのお知らせ

2006-09-10 19:23:34 | 雑感
http://liblog.typepad.jp/

1週間ほど放置していましたが,最近は TypePad を試していました.慣れてきてだんだん良さが分かってきたので本格的に引越そうかなと思っています.まだ図書館ネタは少ないですが,もしよろしければご覧ください.

そのうちまたこっちに戻ってきたりして.

だれが「本」を殺すのか / 佐野眞一

2006-09-03 13:46:44 | 紹介―図書
http://www.amazon.co.jp/gp/product/410131635X/

出版不況の原因をさぐって関係業界を取材したルポルタージュ.

面白い本なので是非買ってみて.数年前に出版された本なのでおそらくブックオフにもあるだろうけど,出版不況に関する本をブックオフで買うのは皮肉にすぎる.できたら書店で,と言っておこうかな.

本が売れないことの象徴として「新刊書の返品率が40%」というフレーズが何度となく使われている.

わたしは特に取次に関する章を興味深く読んだ.

* * *

さて,文庫版上巻の第6章〈図書館が「時代」と斬り結ぶ日〉が図書館に充てられている.(下巻に少しだけアカデミーヒルズ六本木ライブラリーの話が出てくるが,ここでは触れない.)

出版不況がテーマということもあって内容は主にベストセラー本問題.それに絡んで選書のはなしも出てくる.

きちんとした選書をするためには,図書館員が各種ツールを使いこなす,出版洪水のなかで新刊情報をフォローしていく,利用者のニーズをつかむために社会の流れにも敏感である……などなど,日々勉強することが必要なはずだ.

インタビューを受けた荒川区南千住図書館の西河内靖泰さんの猛勉強ぶり(p.475)に感心したので紹介したい.なんでも,
・週7回は書店に行く
・毎朝新聞6紙(朝日・毎日・日経・読売・産経・東京)に目を通す
・書評紙,業界紙,PR 誌は次のようなものを自分で購入してチェックする.「週刊読書人」,「図書新聞」,「新文化」,「出版ニュース」,「出版ダイジェスト」,「本の雑誌」,「ダ・カーポ」,「ダ・ヴィンチ」,取次の新刊情報,「本の話」,「ちくま」,「みすず」,「未来」,「波」,「図書」,……
・目録,年鑑,年報などは(疲れたので省略


だそうだ.

こういう日々の努力をしてるひとだけが「専門性」という言葉を使っていいんだろう.(もっとも,別にまったく同じことをやる必要はないと思うけど.)

* * *

最後にくだらないことを.

著者は図書館に向けてこう言う(p.461).

ベストセラーをリクエストされたら「そんな本くらい自分でお買いになったらいかがですか。うちは無料貸本屋ではありません」といえるくらいの自負をもったらどうか……。

この意見の妥当性はひとまず,細かいつっこみをすると…….

リクエストされるのは,出版されたばかり(あるいは前)の「ベストセラーの卵」であって,その時点ではまだ「ベストセラー」ではない,というケースが多いんじゃないだろうか?

仮に「ベストセラーは買わない」という(極端な)方針の図書館があったとして,その館ではこういう事態にどう対処するのだろうか.職員が「この本はベストセラー間違いないだろう」と判断してリクエストを断るのか.そういうのって,なんだかなあ.

東京大学大学院理学系研究科・理学部図書室 web サイト

2006-09-02 04:51:26 | 紹介―web サイト
http://www.s.u-tokyo.ac.jp/lib/

研究集会で東大駒場に行ったとき数理研の図書室には入ったことがある(そこで知ってる先生の修士論文を読むという非常に悪趣味なことをした).が,この本郷にある理学系研究科図書室のほうには行ったことがない.

それはともかく,トップページ中央の News コーナーに注目した.ふつうこういうスペースではその図書館に関する連絡事項を書くものだが,ここはそれだけじゃない.図書館界はもちろん IT,教育,大学運営などに関係したニュースを集めて掲載している.ほぼ毎日更新されているようだ.

どれくらい閲覧されてるかは分からないが,こういう日々の努力は価値があるだろうと思う.というか,思いたい.

図書館のコンピュータのホームページには当然図書館サイトのトップページが登録されているだろう.図書館を利用したひとがブラウザを立ち上げたときにちらっとでも見てくれれば,それでいいのかな.

* * *

リンク集には Knezonデジタル台風も含まれていて,更新がしばらくされてない死んだ状態ではないということが分かる.

IFLA ソウル大会(と先輩の発見)

2006-09-02 04:35:07 | 雑感
http://www.jla.or.jp/kokusai/2006tebiki.html

ってのがこの8月にあったわけだ.近くだし,就職活動さえなければわたしも行きたかったんだけどなあ……

旅行報告があるかと思って探してみたら案外ないものだ.さくっとぐぐって,technorati を見た程度だけどね.まだ早い? それとも思ったほど行ってないのか?


とりあえずここは見つかった:

そうる日記
http://ifladay.exblog.jp/

なんでもこのソウル大会に関わる顛末をすべて(チケットの手配とか,そういうもろもろ)記録してあるんだそうな.面白い.量が少ないので全部読んでもそう時間はかからない.最初のエントリから通読してみるとよい.

* * *

8月23日のエントリによれば彼は京都のしかも下鴨(わたしの学部生時代の下宿があったところ.世界遺産である下鴨神社がある)あたりに住んでるらしい.

おいおい.この時点で嫌な予感がする.

さらには本名が晒してある.

名前でぐぐると……,本人のサイトを含めてたくさん引っかかる.そして肩書には案の定京都大学附属図書館とある.

……ああ.やっぱり.学部の卒業年が1995年ということだからおそらく8歳上ってとこかな.ええと,先輩,よろしくお願いいたします.

でも(気を取り直して)こういう活動的な先輩がいるということは嬉しいね.素直に.

* * *

おまけ.彼が YouTube にアップしたダンスパーティの動画を紹介する.2分弱これは本当に21世紀の映像か?とくらくらしてきた.

IFLA Seoul 2006 : Dance party
http://www.youtube.com/watch?v=dRCoFgiIx_Y

Google Book Search のデータで蔵書検索システムを作成?

2006-09-02 02:04:16 | IT
http://www.dap.ndl.go.jp/ca/modules/car/index.php?p=2164

#Google Book Search ネタが続くなぁ

「作りたい」と前エントリで書いたけど,Google Book Search に協力している University of Michigan はすでに MBooks とかいうシステムを作る予定なんだそうな.

8月31日付け"Chronicle of higher education"によると、ミシガン大学が"Google Book Search"で得られたデジタルデータを利用して、新しい蔵書検索システムを構築する予定であると報じています。

スキャンしたデータは、OCRで文字認識がなされていて、本文検索が可能ということで、本文の中身を検索して、著作権の存続期間が終了した図書は全文データを、著作権が存続している図書は、検索した単語が出てくるページと頻度が表示されるようなシステムになるそうです。また著作権の存続期間が満了した図書は、Google Book Searchとは異なり、テキストデータが提供されるそうです。このデジタルデータを、ミシガン大学は"MBooks"と呼んでいるそうです。


うーん.Google Book Search で提供されるのは書籍の各ページの画像データであるのに対して,この MBooks ではコピペ可能なテキストデータが(もちろん著作権切れの図書に限定して)提供されるという点がアドバンテージということだろうか.そしてそれは Google が PDF を提供し始めてもさほど変わらないと……(ダウンロードできる PDF は画像をパッキングしただけだしな)

確かにテキストでデータをくれりゃあコピペに限らず,Perl などのプログラミング言語での処理,他アプリケーションでの再利用も簡単にできるようになる.なかなか良いアイディアじゃないか.感心した.

さて,しかしながら,コピペが可能となると,次に問題になるのは剽窃 plagiarism なわけだ.

* * *


U. of Michigan Adds Books Digitized by Google to Online Catalog, but Limits Use of Some
には,

Steven J. Bell, director of the library at Philadelphia University, said Michigan's new digital-book service could spur more scholars around the world to use interlibrary loans to request single pages or groups of pages from books held by Michigan. After all, if scholars can consult Michigan's online catalog to find out which pages contain the terms they are looking for, they might request just those pages rather than the entire book.

とある.つまり,この MBooks が ILL(赤字)と組み合わせて使えるということだ.具体的にはどういうことか?

最初に引用したニュースソースにも書いてあるように,著作権が切れてない図書に関しては「検索した単語が出てくるページと頻度が表示される」ようになっているので,ある図書のうち必要な/自分が読みたいページはどこなのかを MBooks で特定し,そのページだけを ILL でコピー請求する.こうすれば依頼元/先ともにコストが節約できるというわけか.