私も若い頃は、”夜の街”が好きだった。
怪しい商売がとても魅惑的に映った。
そして、夜の若い女はもっと好きだった。
それ以上に、繁華街のネオンを見ると全身が欲情と興奮で包み込まれたもんだ。
かつては夜の歓楽街に憑かれきった私も、30代中盤を過ぎた辺りから、そんな”夜の街”を冷めた目で見るようになった。
40代になると、”夜の女”を冷めた目で見るようになった。そして50代になると、歓楽街なんて潰れてしまえと思うようになった。
その数年後に、コロナウィルスが襲ってきた。まるで私の願いを叶えてくれるかのように、怪しげな”夜の街”を一掃しようとしてくれてる。
人間とは残酷なものである。
若い頃の私の悦楽と放蕩を支え、狂った様にのめり込んだ夜の歓楽街も、今では得体のしれない不浄な”陥落街”に姿を変えようとしている。
”全国に広がる新型コロナウイルス。政府や自治体が警戒を呼びかけたのが、“夜の街”と呼ばれる歓楽街だ。
新宿歌舞伎町でも世間の風当りが強まり、客足は激減。感染対策を徹底しつつも営業を続けるホストクラブや飲食店でも先の見えない苦境が続く。
番組では、50年の歴史をもつ老舗ホストクラブや夜間保育園、新宿区と事業者の取り組みに密着。“夜の街”と呼ばれる場所で生きる人たちの声に耳を傾ける”
以下、「“夜の街”と呼ばれて~新宿歌舞伎町」(NHKグロ現+)から一部抜粋です。
”夜の街”の虚しい叫び
先ずは、コロナの影響で収益が見込めず、老朽化した店を移転し、規模を縮小した老舗のホストクラブ愛本店の声から。
”<つぶれてしまえ><いらない>とか言われても、感染予防をしながら営業を続けるしかない”
”ホストクラブに行くのはあり得ないと世の中に思われたても、客には行き場がない。大げさだけど、こういう時代だからこそ肩を寄せられる場所でありたい”
“夜の街”という言葉は、歌舞伎町のあらゆる業種に深刻な影響をもたらす。24時間営業の生花店ではその影響を受け、売り上げが激減。
”元々悪いイメージが強いせいもあるかなと思うけど、ただ名指しはよくない。歌舞伎町を封鎖しろという投稿も見たし”
30年続く居酒屋では、”夜の街”がメディアで話題になる度に、予約が取り消された。
”夜の街=歌舞伎町、飲み屋=歌舞伎町みたいな言い方をされ、。歌舞伎町だけで感染者が出てるみたいな言い方をされ、もう全然そのイメージは回復されないですね”
歌舞伎町で3軒のバーを経営する会社では、売り上げが半減し、アルバイトの若者10人をクビにした。
”自殺や犯罪が増えてるけど、そういう不安は毎日の様に考えます。シニアを自粛させ、若者には経済活動を回させ続ける構図がないと、失業者はもっと増えてしまう”
リニューアルオープンした先述の愛本店だが、売上げは目標の半分ほどの日々が続く。
”ホストってなくなんないと思う。だってホストってオアシスだもん。元々貧乏な家庭で、小学生の時から片親なんで、自分も自分の家庭も楽に過ごさせてあげたいと思って。
歌舞伎町ドリームという夢を掴めるのも歌舞伎町”(クラブ取締役)
ホストになる前は、地元の熊本で林業の仕事をしてたレオンさんは、こう語る。
歌舞伎町に出てきたのは、2年前のある出来事がきっかけだった。
”弟が突然死んだんです。つまり、人は死ぬ時は死ぬ。だったら嫌な事はしたくないし、悔いのない様な人生を送りたい。
ホストは昔からやってみたかった。でも田舎にはそういう所がなくて・・・
仕事で一番大事なのは楽しむ事。自分が楽しむとお客さんも楽しくなる。自分が落ち込んでると、お客さんも落ち込んじゃう”
”夜の街”を支える貧困層のDNA
偏見かもしれないが、”夜の商売”に従事する人種は、ホストであれホステスであれ、片親で育った人達が多い様な気がする。
そういう私も片親だから、夜の街でひと稼ぎしようっていう、”歌舞伎町ドリーム”は理解できる。
しかし、”貧困のDNA”はスラムから生まれ育ち、そのスラム街で何世代も繁殖する様に、”夜の街DNA”も夜の街で生まれ育ち、同じ夜の商売を基盤に繁殖する。
いつの間にか、それが”歌舞伎町ドリーム”という”スラム街の悪夢”を形成し、日本最大の”大人の遊戯場”として定着する。
負のスパイラルと言えばそれまでだが、一旦スラムの誘惑に陥ると、そこから抜け出す事はほぼ不可能である。故に、スラム街の悪夢を追いかけるしか他に方法はない。
しかし、そういったスラムの誘惑をコロナウィルスが断ち切ってくれるとしたら?
万が一、コロナ渦が夜の街を駆逐したとしても、性の娯楽がなくなる事はありえない。場所を変え、地下に潜り、しぶとく生き残る筈だ。
故に、ホストもホステスも場所を変え、しぶとく生き残るのは自然の摂理でもあろう。
スラムの遺伝子は、やがてホストやホステスの遺伝子となり繁殖するだろう。
”コロナごときに駆除されてたまるか”って声がここまで聞こえそうだ。
それでも消えない、夜の街のレッテル
第2波が収束しかけた8月下旬、新宿区役所に飲食関連の経営者などが集まり、感染予防の勉強会が開かれた。
この会合は第1波がほぼ収束してた6月に始まり、ホストクラブやキャバクラ、風俗店など、感染対策に積極的な経営者らが参加した。そして、(夜の街の)感染者は減ってるという報告があった。
”ホストクラブ感染者の数は減ってると思います。キャバクラとかは多少出てるんですが、むしろ会社員とか家族の感染、高齢者の施設での感染が多い状況です”(新宿保健所)
事実、飲食業関連の1ヶ月の感染者は7月の494人から、8月は51人に減っていた。
”新宿の繁華街はやり玉にあがった事もあり、皆かなり神経を使ってます。ある意味、今感染対策に日本一力を入れている繁華街はウチじゃないかって。
ただ、実態を理解してもらえない。地方の人たちは、東京に出張しても新宿には行くなって言い含められてるし、地元の会社員らは歌舞伎町で飲むなと徹底されてる。一度貼られたレッテルをはがすのは難しい”(新宿区長)
夜9時、パジャマ姿の子どもを連れて歩く女性に出会った。24時間開いている保育園に子どもを預け、職場に向かう。
”性風俗店いやデリバリーヘルスって扱いですね。売上げは6、7、8月とコロナ前に戻ってます。去年の夏より売り上げはいいです。みんな寂しいんじゃないんですかね。
歌舞伎町は頑張ったら結果は出せる。やらなかったら埋もれちゃう。人の倍努力しないと歌舞伎町では生き残れない。でも歌舞伎町があるから私は生きていられる”
恵子(仮名)さんが働く風俗業界も世間から批判を受けたが、冷静に受け止めていた。
彼女は2年前、育児に協力的でなかった夫と離婚。歌舞伎町で稼ぎ、1人で子どもを育てる事を決めた。
”誰かが悪者にならなきゃいけないんだったら<歌舞伎町が悪い>でいいんじゃない。虐めという集団心理ですよね。
新型コロナは正解がないから、個人の判断で動くしかない。一番難しい状況だと思うし、誰も間違ってない。その人のバックグラウンドによって、守らなきゃいけないものが違う。
私には子どもがあるし、病気の親御さんを抱えている人もいるし、それぞれの正解でいいと思うけど、自分の意にそぐわない人を批判するのだけは良くない。
誰も病気になりたくないし、死にたくない。健康でいたいし、誰も悪くない。あえて言うなら、新型コロナが日本に来たのが悪い”
それぞれの事情
夜間営業の店がひしめく雑居ビルには、個人経営のバーやエステヘアサロンなど49の店が入居する。
そして、殆どのテナントが家賃などの資金繰りに苦む。
”お客さまが戻ってくる事を願って、もうちょっと死ぬ気で頑張るんで。
私は水商売に救われた人間。それまでは彷徨って将来の事凄い不安で。起業して水商売で自分の居場所を見つけたので、そこに関しては筋を通して。
それでしか仕事ができない人たちがいると分かってるので続けるしかない、どんなに辛くても・・・”(飲食店経営)
人生を懸け、歌舞伎町で生きる人たちが今苦しんでいる。“夜の街”という言葉がもたらした現実を、彼らはどう乗り越えようとしているのか?
”こちらが能動的に動いたとしても無理なのは判ってる。悲しいけど、世の中から一旦忘れてもらう。今の“夜の街”歌舞伎町、世間に出てる、テレビに出てる歌舞伎町を飽きてもらうしかない。それでも辿り着く人は辿り着く。
日夜バカみたいな事やって、<あいつら品がないよね>っていう歌舞伎町をずっと続けていくしかない。そして、それを受け入れる。
それでも飲みたいなとか、お金持ってるから、自己顕示でお金使いたい、下心とか人に言えない様な事をしたいとかいう欲が出た時にお越し頂ければ・・・
私たちは、<歌舞伎町なんて2度と行きたくない>という人でも、どんだけバッシングされてもいつでも受け入れる。そういう街ですから歌舞伎町は”(ビルオーナー)
以上、NHKグローズアップ現代からでした。
コロナが地下に潜る時
何故?清潔好きで几帳面で純情な筈の日本人が、これだけコロナ感染に注意してる(筈)なのに、コロナ渦は減るどころか、第2波第3波と倍々ゲームの様に拡散する。
今となってはクラスター対策は全く無効化し、外出制限以外には手の打ちようがないと専門家は口を揃える。
そういう私も、”8割削減”でコロナ渦が収束した時は、インフルエンザの時期の第2波にさえ気をつければ、コロナ渦は自然収束するだろうと、安易に考えていた。
多分、政府も専門家も油断があったとは思う。”GoTo”にしても専門家は口酸っぱく反対はしなかったし、経済と感染予防の両立に関しても未だに曖昧なままだ。
”コロナは人が思うほど”でも書いたが、新管政権が経済活動の制限を緩めた結果、コロナ渦は待ってましたとばかり拡散した。
私が一番危惧してるのが、夜の商売が地下に潜り、コロナ渦も地下に潜る事だ。
上述したデリヘル嬢の例を出すべくもないが、彼女たちは店を持たなくても商売は出来る。店を抱える業種は3蜜だとして徹底的に叩かれたから、検査や消毒はある程度徹底してるとは思う。しかしそこには限界もある。
ただ、デリヘル嬢がここぞとばかり、自粛に疲れ切った、ただでさえ寂しい?親父の下半身に照準を絞り、地下に潜り、異常繁殖したとしたら?それに伴いコロナも異常繁殖するとしたら?
事実、デリヘル嬢のストレスのはけ口はホストクラブである。いくらクラブ側が気を付けたとしても、大枚を叩く客を一々検査&チェックして追い返す訳にもいかない。背に腹は変えられないのだ。
コロナか?カネか?と言われれば、大半の経営者はカネを選ぶだろう。
コロナか?性欲か?と問われれば、大半の親父は性欲を選ぶだろう。
こういった局所的な状況だけを見ても、コロナ渦を防ぐのは、気の遠くなる程のリサーチと徹底した検出作業が必要となるのは明らかだ。
最後に
私はある役人に食事に誘われた。それまで、何度か会食しているが、コロナの事もあり、流石に今回は断った。
しかし、食事をする時は気分が開放されるのか、マスクを外して大声で会話しても、何ら不安もないし、コロナに対する警戒も薄らぐ。コロナの話題なんか何処へやらで、その役人は自分と大物政治家と息子の自慢話ばかりしてる。
役人ですら、そんなレベルの意識しかない。つまり、コロナに対する認識というものが始めから解ってない様な気がする。
そういう私も酒を飲んでたら、役人の自慢話に大声で呼応してたろうか。
しかし、ずっとシラフのままだったせいか、少しも盛り上がる事もなく途中から不機嫌になり、人通りの少ない”夜の街”を窓からずっと眺めていた。
そういう私は元々引きこもりだ。”言葉を覚える前に絵を覚えた”程で、小さい頃から会話や人付き合いが苦手だった。
ブログを読んでも解るように、多少世間ズレした内容が目立つ。
しかし今では、そういった”負の性癖”が役に立ってると思う。それに、死んだ父からは”外での贅沢はするな”って教えられた。
そういう事もあり、今は晩酌が殆どで外食も全くしなくなった。
コロナは色んな事を教えてくれる。
資本主義社会には”無駄”が腐るほどある。その無駄をコロナが全て取り払っててくれるとしたら?コロナが高慢になりすぎた民主主義の腐った部分を、全て洗い流してくれるとしたら?
確かに、コロナによって”夜の街”は瓦礫と化し、経済の大半は崩壊するかもしれない。
しかしコロナによって、人類の強欲が消え去り、本来の人間社会が取り戻せるのなら・・・
外での贅沢は夜の街を支え、やがて怪しげな夜の職業は地下に潜る。
夜の街に繁殖した腐ったミカンは、腐ったまま生き続けるのだろうか?それとも、腐ったミカンはコロナに駆逐されるのだろうか?
歓楽街が陥落街に変わる時、我々親父は何を楽しみに生きていけばいいのだろうか?
経済かコロナ対策かどっちかと言われれば、やはり経済を選びますよ。経済死って言葉も流行り始めてますし、でも夜の商売ってコロナがなくても地下に潜ってたんじゃなないのかな。
東京都も今更、歌舞伎町を封鎖しよって言えないですよね。たとえ、事件が歌舞伎町で起こってるとしてもね(笑)。
夜の商売がなくなる事はないと思うんですが、その形態や取り巻く環境は大きく変わるでしょうね。
コメント有り難うです。
でも、夜の怪しげな店は責められても文句は言えないんだよな。
コロナが直撃し売上が激減し、人件費や店舗料などで補助金をもらっても多分赤字。国も安倍が海外にバラ撒いたお陰で金はないし、国債も切れない。東京都の貯蓄もそろそろ底をつくんじゃないのか?
最悪歌舞伎町を封鎖しても、それに代わる夜の街が登場するはずだから解決策にはならない。それに夜の街は怪しげな風俗店やクラブが基盤となり、真っ当な飲食業を支えてんだけど、その真っ当な店ほど潰れていくんだ。
本来ならこういう店こそ救うべきだけど、東京都も金が無い。結局は、大衆相手に細々とやってる居酒屋や飲食店がコロナのツケを払う羽目になる。
風俗店は地下に潜れるからビクともしないし、風俗嬢が入り浸るホストクラブも客単価が高いので、生き延びるのは明らかだよ。
悲しいけど、これが夜の街の現実なんだ。
人間の欲望というものがある限り、夜の街はなくなる筈もないですね。
永井荷風の「アメリカ物語」では貧困の支那街が描かれてますが、今の歌舞伎町はそれに近いものがあります。
コロナが蔓延しても、人は気づかないふりをして営業を続け、客も気づかないふりをして屯する。そうしてコロナも夜の街も生き延びるんでしょうね。
ウイズコロナって夜の街の為にあるようなもんですかね。