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仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

その窓辺にたたずめば

2010年07月20日 17時17分00秒 | Weblog
 新幹線に乗っている間もヒカルは外ばかり見ていた。

 式場の予約は小西さんによると一ヶ月半後だった。全てがスピードを増して進行しているような感覚にとらわれていた。

 それでもミサキは、説得した。無理を承知で懇願した。心にもないことまで言った。
もし、「ベース」に行かせてくれないのなら、家を出るとまで言った。困り果てた母親は、叔父と話し合い、三日間だけならいいといってくれた。ミサキは涙を流して感謝した。その涙のほうが母親と叔父を不安にさせた。
 母親と叔父は、母親の部屋で二人きりになると静かに話し合った。
「信じるしかないだろう。」
「そうね。信じるしかないわね。」

 ミサキは後ろから、ヒカルを抱きしめた。振り向かないヒカル。早く、早くついてと心の中で叫んだ。

 市川の駅からタクシーに乗った。電車の中でも、タクシーの中でも、ミサキは右手でヒカルの手を握っていた。制御するのではなく、祈るように。

 ヒカルは反応しなかった。