会えない時には

人間でいることが煩わしくなる。
どんなに思っていても心の中は誰にもわからない。
伝わらない。
言葉を捜してナントカ伝えたいと努力する。
目の前にいるのに言葉が見つからなくて。
だから僕はここで待ってた。
雨水のあたらない軒先でサングラスをかけて、

愛し合えること

三島のSの別荘に行っていた。
海風が冷たく気持ち良かった。
Sは必ず、外に出してはいけない書類の処分を僕に命令する。
必ず三島で僕が燃やす。
もし、僕が中身を確認して面白そうな（高く売れそうな）
ものを持ち帰ったら、Sはどうなるんだろう。
時々、そんな衝動に駆られる。
１０秒くらい、
でも頭の中でふーって風が吹いてドウでも良くなって、
僕はダンボールの山を裏庭に運んで深さ1.5メートル
直径1メートルくらいの穴を掘って、がんがん投げ込んで
ガソリンをぶっ掛けて燃やす。
燃え上がる炎はとてもきれいで、赤い火の中に吸い込まれそうになる。
Sは僕を何だと思っているんだろう？
飼い犬、犬ほど強くないから、飼い豚
愛ほどに意味不明なものは無い。
左肩にタトゥーを入れたら殴られた。

ほしいままに

苦手なおやじと話を合わせるのはつらい。
Sだったら、それなりに感じているからいいけど
下手に出ているようでいて自尊心が強く
人を見下しているくせに誉めちぎる。
おまえはなんなんだよ。
言えるのはこいつも俺と同じだってこと
いつかはなくなるんだ。
時間切れです
て言ったら、
延長料金はいくらだ
ていううから
次の予約がありますからセンターに聞いてください
て言ったら
ハン
て鼻を鳴らして
いいよ、もう
なんだよ聞くなよ、金が惜しいのかばーか
ヒデコに電話してエンドをもらって
おやじの上着を探した
もういいかこんなのやめようかっておもった。
店に行こうかどうしようかって迷って
やっぱり店に行って仁の部屋にきた。
同じだ同じだすべてが同じままで何も変わらない。
金曜日の客はチョイスをかけよう。

夜から朝

空の色が紫色になって、だんだん白くなって、
そして、藍になる。
夜から朝になるとき
仁から電話があった。
ーもういい、けりは付いた。
それだけ言って切れた。
昨日あんなに探したのに
公衆電話からかかってきたから
ー今どこ
って、言う前に切るから
何もできない。
仁、腐敗臭に近い独特の臭いのする仁の部屋
ナイキのジョギングシューズはまだない。
血管が開くような感覚で、意識は消えていく。
また、独りになってしまったような気がする。

誰か知らない

仁から電話で３０万用意してくれって言われて、
仕方が無いから、Sのカードでブレスレットを買って
そのまま質屋に持ってった。
５０万くらいになって、これはいけるって思ったけど、
Sになんか言われるだろうなぁ
いちよう領収書は貰ったし、Sの事務所に送っておいたから
そんなにはうるさく言わないとは思うけど・・・


お金は用意できたけど、仁と連絡が取れない。
部屋にもいないし、携帯も繋がらない。

誰か知らない？
こんな時期にボディストッキングに革ベストと革パンツ、
ナイキの細身のジョギングシューズって変ないでたちの仁を見ませんでしたか？

考えろよ

何気なく見ていたら目が合った。
誰って！！
顔で睨まれてたから、にっこり笑顔で右手を振った。
ー何よ。何がおかしいのよ。
危うく唇が触れそうな位近くまで顔を突き出しして、問いただされた。
ーあんまりかわいいんで、つい目が離せなくなった。
ーえっ、
そんなわけで、ミーの部屋にいる。
電車の音がすごく近くに聞こえてた。
隣の部屋の人の声が薄ぼんやりと聞こえてくる。
昨日の声はたぶん隣には筒抜けだ。
ー鍵は店に持ってきて
もう少ししたら、出なきゃ、
ー渋谷かー久しぶりだな
もう、様変わりして、ベースも無いんだろうな。
これから、５年ぶりの渋谷に行く。
店は道玄坂の上の方だって言ってた。