仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

離れられない人Ⅱ

2008年01月31日 13時59分48秒 | Weblog
長い眉毛がヒクヒク動くのがわかった。けれど、その人はけして声を荒げることもなく淡々とした口調で
 どんな集まりですか、最近、何か物音がするらしくて、ご近所の方が迷惑しているみたいなんですけど、あなたたちのことかなー、ちょっとお話したいんだけど
誰も返事をしなかった。でも、サングラスの男のときのような沈黙の力は感じられなかった。「沈黙」自体がそのときは失われていた。ザワツキと緊張、仁の不在、ヒロムが退散を試みた。意図するところを感じた人間が、ヒロムの動きに従った。何人が逃げたのか、その後、誰がつかまったのか、さしあたり、常連と思われる人は確かめられた。仁がいたら、と思う反面、「ベース」の限界を感じていた。二、三日してからだと思う。ヒステリックに叫びながら、僕らを罵り、批難する女が「ベース」にやってきた。僕らははじめ無視していたが、さすがに煙たくなって、ヒロムが合図をして、3人くらいの男が動いて、静かに退散して頂いた。
 「ベース」の位置づけが変わり始めていた。集まって移動する。そんなことに意味があるのか、はじめから「場所」へ行けばいいんじゃないか、
 その暴力の意味がどんな意図で行われたのかは解らないが犠牲者が出てしまったことが、「ベース」を考える理由になったのだろう。
 静かに始まった「許し」、その日はあまり人が来なかったのだと思う。

背中からⅣ

2008年01月30日 16時31分39秒 | Weblog
オマワリも気にし始めたのか、「ベース」近辺をウロウロするようになった。
それもそのはずで、ベースには毎晩のように人が集まるようになっていた。以前は「ベース」以外に行く所がない人間が居場所を探して「ベース」にたどり着いた。それがいつの間にか「ベース」を目標とする人間が増えてきたのだ。「ベース」をそう呼ぶようになったころは、1人で朝を待つこともあった。2人とか3人とかだったら、許されることと許すことの線が言葉で確認しなくても理解することができた。だから、何をするということを決める必要もなかった。何でも良かった。それがそのころになると、仁の来ない日はヒロムがリードして、アキコが集金をして、ヒトミが会場を探して儀式が行われて、何か意味のあることのように事が進み始めた。何も知らずに迷い込んだ少女は突然隣の男に触れられて奇声をあげる事もあった。そうかと思うと「ベース」に来初めの少女が始めての子に
 此処では声を出してはいけないのよ。感じなきゃだめなの。
などと言葉を使って説教をするようにまでなっていた。
 渋谷はそれほど甘くない。人が集まれば金と色の臭いをかぎつけて組織のやつらが動くのは当たり前だ。サングラスの男が復習を狙うよりも危険なことがぼくらには近づいていた。
 背中からゆっくりと

背中からⅢ

2008年01月29日 17時56分13秒 | Weblog
人と違うことをすると叩かれる。そんなことがたくさんあると人と同じになろうと思うようになる。でも、それには才能が必要で、才能のない人間は外側に追いやられる。追いやられた人間が集まるのが「ベース」だった。仁の背中の絵の理由を知ることもそんなに意味のあることだとは思わなかった。仁が狙われ始めてから、いろんなやつらが「ベース」にやってきた。オマワリも

背中からⅡ

2008年01月29日 13時57分11秒 | Weblog
マサミの絵はお尻にあった。お尻の割れ目から両手を拡げるように、お尻を両手で鷲掴みにするみたいに蝶が羽を拡げていた。蝶というよりもパピオンかな。羽の先端がゼンマイみたいにグルグルまきになっていて、羽の中に丸い粒が小さいのから大きいのへ真ん中に向かって形を変え、色を変え、S字を描いていた。両方のお尻でシンメでなっていて腰の動きに合わせて羽ばたいた。マサミが自分でパンティーを下ろしたとき、もう一枚穿いているのかと思った。そのときは暗くてよく判らなかったけれど、マサミが上になって仁と愛し合っているとき、そのパピオンが激しく羽ばたいてとても綺麗だった。
 あの時、誰も言葉を必要とせずにマサミを受け入れることができた。かすかな肩の震えや仁に絡めた腕の動き、涙の中の瞬き、そんな些細なもので僕らは感じることができた。ほんの微かな動きの中でここにいる人間が感じていることが理解できた。それが誰かであることよりも共有する感覚を愛していた。マサミは時々、フラッシュバックに襲われた。激しく震えて、焦点がなくなって、
 寒い、寒い、サムイ、
と連呼した。そんな時、仁がマサミを抱いた。不思議なことに頂点までいけるとマサミは開放された。マサミは仁の隣に座るようになった。
 
 

背中から

2008年01月28日 17時33分40秒 | Weblog
 仁の背中には絵が描いたあった。首の付け根の辺で尻尾が絡み合い、肩甲骨で輪を描いて、両腕をぐるぐる回って、手首の少し手前で口を開いている竜が張り付いていた。最近は体に色が付いている人が珍しくない存在になった。でも、当時は、暴力関係の人以外はとても珍しい存在だった。刺青があるだけで近づきがたい人という感じだった。仁が呼吸に入ると竜が踊るみたいに見えた。それは美しく、仁の呼吸とシンクロしていた。

抱かれることでⅤ

2008年01月28日 11時23分59秒 | Weblog
激しい呼吸が終息するとアキコが動いた。手を拡げ、ゆっくりと仁とナオンに向かった。仁が血だらけで「ベース」に戻ったときのように二人を包みこむように肌を合わせた。ヒトミが、ヒロムが、そこにいるすべてのものが二人に重なりあった。柔らかい呼吸の中で仁に抱かれていたナオンは静かに涙を流していた。すでに、覚醒からは解き離れていた。皆はナオンが同種であることを感じていた。涙は暖かかった。言葉のない共有が皆の魂に拡がった。
 目を瞑り、力の抜けた仁からアキコとヒトミがナオンを離すと、仁はまだ勃起していた。ナオンをゆっくりと寝かせ、二人は仁を慰めた。「神聖な儀式」が終わった。
 なぜ、10人もの人間がテルホの1室には入れたのか、今と違って、当時は和室が必ずといっていいくらい用意されていた。だから、そこを選んで僕らは、「ベース」からの行動を継続した。人が人を呼ぶ。「沈黙」の中で始まった集団は、その規模を徐々に大きくしていった。

抱かれることでⅣ

2008年01月25日 12時55分31秒 | Weblog
 そのときの「神聖な儀式」は、それ以後の儀式の形式を予測するようなものだった。ナオンはパンティーを下げながらしゃがみ、ジーンズと一緒に足からはずすと自分の前に置き跪いた。仁が立ち上がると両脇にいたアキコとヒトミが仁の服を1枚づつ丁寧に脱がせた。仁が全裸になると隣同士が相手の服を1枚づつ脱がせ、全員が全裸になった。仁は座り、両手を拡げた。アキコとヒトミがそれに習い、皆が手をつなぎ、ナオンを中心に輪になった。仁は目を瞑り、「呼吸」に入った。皆もそれに従った。はじめ、大きくゆっくりとスー、と吸い込み、ハァーと長く伸ばすように吐いた。仁のリズムにすべてのものの呼吸がが同調したとき、間隔が縮まり、吸い込む息から吐く息へ集中の目標が変わっていった。
 ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、
その呼吸は徐々に激しくなっていった。激しい呼吸のリズム、うねり、緊張、そしてそれに同調しているもう一つの声、うめくような声、そこに座るものとは違う息遣い。
 アッ、アッ、アッ、アッ、
目を開けるとナオンが仰向けになり、膝を立て両手で極部を押さえあえいでいた。目を瞑り、その指の動きで全身が振るえ、仁に向かって大きく開きながら。
仁は繋いだ手を離し、立ち上がった。仁も勃起していた。仁はナオンに覆いかぶさると挿入した。一度の挿入でナオンはイった。仁はナオンを抱きかかえ中央に座った。

抱かれることでⅢ

2008年01月24日 16時12分02秒 | Weblog
そして仁は座ったまま、けして美しいとはいえない右手の人差し指をナオンの顎の下にもっていった。スーッと指を上げるとナオンは操り人形のようにゆらゆらと立ちあげった。目の前に来たジーンズの大き目のバックルを解き、ボタンをはずして、ジッパーを下げ、仁は両方の人差し指をジーンズのベルトを通すところに指し込んだ。ピチピチのジーンズが絹のように柔らかくなって、仁が指を下げるとくろぶしまでずり落ちた。ナオンのパンティーはすまないほど小さくて、それに仁が手を掛けようとするとナオンはその手を止めて、自分でゆっくりと降ろした。
 そのときの「神聖な儀式」は

抱かれることでⅡ

2008年01月23日 14時43分33秒 | Weblog
仁はそのナオンを担いで「神聖な儀式」に向かった。ナオンは移動の際、仁の上で時々ブルッと震えていた。
 集団が大きくなるとテルホの1部屋では足りなくなり、最上階の一番大きな部屋か、2部屋を利用するようになった。さすがにそんな人数でゾロゾロ入っていくわけにもいかず、人数割りをしたり、順番を決める人間が必要になった。無言の集団が少しづつ言葉を使うようになり、言葉は、統制と秩序を求めてきた。
 このときはそうでもなかったか?仁の部屋に入れたのはよく顔を見る5人だったか。6人か、その程度だった。
 皆が好き勝手に座っていたころとは違い、仁が奥に座りそこを中心に扇状に拡がった。仁は寝ているのか、おきているのか「呼吸」のときからずっと仁にしがみついていたナオンをゆっくりとおろして、対面するように座らせた。ナオンはうつむき加減に正座した。まだ、寒い季節だったと思うけれど、ナオンは首の回りにボアボアが付いた薄手の白いセーターを着ているだけだった。仁はセーターの裾に手を掛けゆっくりと持ち上げた。ナオンは腕を上げて仁に協力した。セーターの下はブラジャーだけだった。仁は腕をまわしてブラのホックもはずした。ナオンはそれにも協力的だった。そして仁は