仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

姫の背中

2009年03月31日 13時12分45秒 | Weblog
ツカサはヒトミを見ると涙が出てきた。
「あー、オレは、。おお、オレは。」
「眠っていらっしゃいます。」
女が耳打ちした。
「えっ。」
ツカサはヒトミの手を取り、頬に当てた。誰も止めなかった。温かさが頬から伝わってきた。
「宰と姫は私たちに全てを許すことを教えてくれました。
生きる意味を教えてくれました。
あなたもその愛の中にいるのです。
お気づきなさい。あなた自身がはかなく壊れやすいものだということを。」
ツカサは寝ているヒトミを抱きしめようとした。後ろから髪の毛を鷲掴みにされ、グッと引っ張られた。上体がふっと浮いたような気がした。
「痛いわ。」
「まだ、傷が癒えてないのよ。」
女の力とは思えなかった。ゆっくり振り向くと、丹精な顔つきの女がいた。胸はついていた。しかし、身体は男のそれように筋肉が発達していた。女は全部で三人いた。筋肉質の女の周りの二人がツカサの手を押さえた。筋肉質の女は、錠剤を取りだし、ツカサの口に運んだ。ツカサの意識は溶け出す錠剤の成分に吸い取られるように失われていった。

悲しいこともあるだろう。Ⅶ

2009年03月27日 17時49分43秒 | Weblog
 ツカサが目を覚ました。何時間寝ていたのか、そこがどこなのかわからなかった。ツカサの周りに女たちがいた。目を覚ますのをずっと待っていたかのようにツカサに微笑みかけた。
「さあこちらへ。」
女たちはツカサの身体を支えながらツカサを導いた。ガラス戸の奥の部屋には何枚もの敷布団を重ねた上に軽い羽毛布団をかけ、静かに眠っているヒトミがいた。ヒトミは薬学部の叔父の病院に運ばれ、切り裂かれた肌を二十二針の傷みを絶えることで繋ぎ合わせた。止血剤を飲み、抗生剤、化膿止めと七種類のクスリをもらい、その日のうちにヒロムのマンションに戻った。

悲しいこともあるだろう。Ⅵ

2009年03月26日 16時41分37秒 | Weblog
「ツカサ君がここいられるのはなぜだろう。警察の手が来ないのはなぜ、といったほうがいいかな。」
ツカサはおびえた。
「心配しなくていい。僕らは会うべくしてあったのだ。」
間をおいて
「ツカサ君の行為を僕はあるべきこととして受け止める。が、それは君を僕らが許すからだ。」
カップの水を取り、錠剤を手にした。
「喉が渇いているだろう。これを飲みなさい。」
周りにいた女がヒロムからコップと錠剤を取り、ツカサの口に運んだ。
「人間が人間を裁くなどナンセンスなことだよ。死は誰にでも平等に与えられているのだ。しかもそれは、本人の意思とは別の次元で進行している事実なんだ。だから、もし、姫がこの行為で死に至ったとしても、それは定めと知るしかない。ただ、君を許さない人が出てきたら、君は君の行為に責任を取らなければならない。簡単なことだ。死をもって償うか、闘うか、それとも許しの中でともに生きるか、そのどれかを選択すればいいことだ。君は少しづつ、ここの真実を知り始めた。だから、僕は君を許そうと思うのだよ。そして、君が僕らのために最良の友となることを確信しているんだよ。解るね。」
女が耳打ちした。
「はいと言いなさい。」
不思議な強制力がツカサを支配していた。
「はい。」
「嬉しいよ。君に会えて、さあ、ほんとうの生きる意味をもう一度実感したまえ。」
ダウンライトの中からヒロムが消えた。女たちは革のベルトで固定されたツカサを愛した。椅子には肘掛はなく、ツカサの上に女は簡単にのれた。四人の女は闇の中でツカサの全てを吸い尽くした。恐怖と狂気と快感が今までのツカサを全て洗い流してしまった。

悲しいこともあるだろう。Ⅴ

2009年03月25日 17時25分50秒 | Weblog
闇。
男は目を覚ました。男は自分が椅子に座らされていることに気付いた。部屋の真ん中のダウンライトがともった。身体を動かそうとして自分が革のベルトで縛られていることにも気付いた。メガネを外した童顔のヒロムがダウンライトの中に入ってきた。
「なんて呼んだらいいんだろう。」
万遍の笑みを浮かべてヒロムが言った。
「君は、なぜここに来たのだろう。」
返事をしない男、いや返事などできる状態ではなかった。まる一日が過ぎていた。
何も口にはしていなかった。疲労と混沌の中で、意識と無意識の間で男はヒロムの声を聞いた。男の脳にはヒロムの写真の顔が刻み込まれていた。安堵とも、至福、それは不思議な感覚だった。男の周りには女たちがいた。耳元で囁いた。
「あなたのお名前は。」
「ツカサです。」
「いい名前だ。」

悲しいこともあるだろう。Ⅳ

2009年03月24日 14時14分34秒 | Weblog
 闇などない世界にいる人間が闇の中に落とされたのだ。恐怖は簡単に人間を壊していく。
 また二時間が過ぎた。
「お前の行為は死に科する。」
沈黙
「お前の行為は死に科する。」
沈黙
 男は涙を流した。体が震えた。

「死は簡単だ。さあ、舌でもかむか。」
沈黙
「死は簡単だ。その命を捧げるか。」
沈黙
 三十分が過ぎた。
ドアが開いた。闇に光が差し込んだ。女が立っていた。光の中にシルエットが際立った。女は肌の上に薄い布の長めのハッピのようなものしか着けていなかった。男は不思議な感覚にとらわれた。女神が光臨したかのような、救いがそこにあるかのような、男は女の足にすがった。
ドアが閉じた。
闇の中で女は男を突き放した。普通なら男が女から、離れることはないだろう。男は、簡単に飛ばされた。
 闇。
闇の中で男は女を見つけることはできなかった。部屋の真ん中にダウンライトがともった。床に光の円ができた。女が足から光の中に入ってきた。微笑んでいた。男は再び、女に近づいた。今度は身構え、踏ん張り、女を捕らえた。崩れ落ちる男、女は男の頭を撫でた。女は掌から錠剤を出した。男の口に運んだ。
「それをのめ、真実を知るために。」
声がした。
男は女の指先から口に運ばれた錠剤をのんだ。ドアが開き、同じ衣装の女が三人入ってきた。意識は薄いその布のように希薄なものになっていた。ドアが閉じた。四人の女が男を立たせ、その衣服を丁寧にはがしていった。男は何が何だかわからなくなった。全裸にされると音がした。聞いたことのないエロチックな音が部屋を満たした。
 女たちはボディタッチを始めた。恐怖と狂気と快感が渦になって男と襲った。拒むことも、逃げ出すことも、何も、できなかった。感覚は研ぎ澄まされ、身体の全てが性感帯になっていた。一人の女が足を持ち、三人が体を支え、男を倒した。男は意思と反してか、それとも・・・とにかく勃起していた。足もとの女がくわえた。袋を刺激しながら、口の中に招き入れた。三人の女は耳もとで囁いた。
「宰につかえよ。姫に捧げよ。己が命を。」
「宰につかえよ。姫に捧げよ。己が命を。」
リフレインが、男の脳を洗った。女たちの手が、指が、男を刺激した。勃起した男自身はこみ上げる快感の中で果てた。男は意識を失った。

 目が覚めた。
闇。
目を開けているのは解るのだがその実感がなかった。身体を触った。全裸だった。
「宰につかえよ。姫に捧げよ。己が命を。」
地鳴りのように声がした。壁が光り、ヒロムとヒトミの写真があらわれた。
「知性の中枢である神々しい宰のお顔を。
愛に満ちた姫のお顔をおまえは知らずにいた。
さあ、見つめよ。そのお顔を。
さあ、はじめよ。お前の真実の行動を。」
闇。
ドアが開き、四人の女は入ってきた。言葉はなく行為が始まった。男は抵抗する方法さえ考え付かなかった。なすがまま、なされるがままに恐怖と狂気と快感の中で自分が消えていくことさえ、気付かなかった。

悲しいこともあるだろう。Ⅲ

2009年03月19日 17時50分56秒 | Weblog
 捕らえられた男は「ベース」にできた「死の部屋」に入れられた。ホールは細かく仕切られ、それぞれに上位に向かうための訓練ができるようになっていた。「死の部屋」は何回かのレクチャーの後、胎動が最初に入る部屋だった。完全な闇の部屋、目を開けていても闇しかない部屋、それが「死の部屋」だった。
 男は死の恐怖を叩きつけられた。羽交い絞めにされ、叩き込まれ、外から鍵がかけられた。ヒロムたちは経験でその部屋にいる限界を知っていた。

 男は自分の行為に興奮していた。が、その闇の中で、自分の行為を思い起こさなければならなかった。
「なぜ、オレは・・・・」
闇の中で先ほどの行為がシーンとなってよみがえった。身体が震えた。脳裏に映る世界以外、目を開けても闇が続く。恐怖が心を締め付けた。
 二時間が過ぎた。
闇の中に仕込まれたスピーカーから声が聞こえた。
「お前の行為は死に科する。」
沈黙。
「お前の行為は死に科する。」
沈黙。
その声は、常連の中で最も低い声が出る音大生が担当した。低音は腹に響いた。

悲しいこともあるだろう。Ⅱ

2009年03月18日 17時44分36秒 | Weblog
 壁に背中をぴったりつけて男は潜んでいた。取り巻きは数人だった。男は車から、降りてきたヒトミを狙っていた。
 一週間前、男の彼女が入信した。女は男を愚鈍と罵った。自分は生きる意味を知ったとも言い放った。プライドを傷つけられた男は狂気に落ちた。ナイフの冷たさが心地良かった。汗が邪魔だった。
 取り巻きの後ろから男はヒトミの背中を狙った。気付くのが遅かった。ナイフはヒトミの背中を斜めに走った。フワッとした衣装が避けた。ブラのホックもはじけた。白い肌の上に肩甲骨の下から、脇腹にかけてピンクのラインが走った。鮮血が飛び散った。取り巻きは男を抑え、ヒトミをかかえた。一人が事務所に走った。
事務所にはヒロムがいた。常任の将官もいた。
「たッ、たッ、大変です。」
「どうした。」
「ヒッ、ヒッ、ヒッ、姫が・・」
「何があったんだ。」
「斬られました。」
「キラレタ。」
「いえ、男に襲われました。」
「どこで。」
「上、上です。」
ヒロムが走った。取り巻きをかき分け、ヒトミを抱いた。
「薬学部を呼べ。」
薬学部は看護婦をしていた常連と走ってきた。ヒロムは薬学部の父親が医師であることを知っていた。が、薬学部は自分の父親の病院に連れて行くのを拒んだ。「流魂」の活動にのめりこんでいく中で家族とは疎遠になっていた。事務所にヒトミを運び、看護婦と薬学部で止血処理をした。
「宰、私の叔父が外科をしています。そこでもよろしいでしょうか。」
「どこでもいい。急げ。」
その言葉が終わらないうちに、常任、常連が走り、車が用意され、薬学部の叔父の病院に向かった。
 ヒロムは事務所に残った。

悲しいこともあるだろう。

2009年03月16日 16時01分36秒 | Weblog
 存在の意味などない。虚無に向かうことが人間の真実だ。
 だから、意味を作り、意味を与えることが我々の使命だ。
 全ての人間が恐怖と立ち向かっている。
 その恐怖と立ち向かう方法を我々は伝えるのだ。

 ヒロムは「使命」と言う言葉を強調した。常任がホールに並び、ヒロムの言葉に肯いた。
 既に組織の形態も変わった。ヒロムは「宰」と呼ばれ、ヒトミは「姫」と呼ばれた。ヒロムが会員に直接、講話をすることもなくなった。
 組織はヒロムとヒトミを頂点として完全なピラミッド型になった。常任もその中で細分化され、将官、中官、佐官の位が作られた。将官は当然、「神聖な儀式」から「ベース」を支えてきた演劇部や技術者、法学部、経営学部など十二人がその地位に着いた。各将官の下に二人の中官がいて、その下に三人の佐官がついた。常連も細分化された。高位、中位の名のついた常連と普通の常連が区別された。
 会費の徴収方法も変わった。胎動の位置にいる人間は会費を払うことはなかったが、数々の行事に参加することもできなかった。新生から会費を払う義務が生まれた。常連は胎動を新生に導くことによって、その新生から会費を徴収する権利を得た。十人の胎動を新生にできると常連は自分の会費を免除された。十人以上になるとその会費から徴収手数料を一割ほどえることができた。常連は自分の下部に何人の新生を持っているかによって次の位に昇格できた。徴収額も佐官が自由に決めることができた。上納金の額面はその額の七割と決まった。つまり、集金能力によって地位が上がるように、システムができたのだ。新生も胎動を新生に導くことで常連に昇格できた。位をつけることでアップグレイディングポリシーを刺激し、地位があることによって会員に存在感をあたえた。
 団体自体が名前を欲しがった。宗教団体「流魂」が創設された。

電話切れてます。Ⅳ

2009年03月12日 16時57分53秒 | Weblog
ドアを閉めようとするとマサミがドアを開け、顔を出した。
「ヒーちゃん、お金足りない時も連絡していい。」
屈託のない笑顔、甘えた声、ヒトミはマサミを憎めなかった。
「何かあったら、電話ちょうだい。待ってるから。」

 ヒトミは背後でドアの閉まる音を聞いた。演劇部と技術者は敷地の外で待っていた。
「お疲れ様でした。」
「待っていなくてもいいのに。」
「いえ。もし、仁さんが帰ってきたらと、思いまして。」
「そう。」
車が用意されていた。
(ほんとに演劇部は用意がいいわねー。)
車に乗り込むとヒトミは考え込んでしまった。
(今までの仁と違う人みたいね。)
「神聖な儀式」の時の仁との性交を思いだした。
(イヤだ。濡れてきちゃった。)
(仁ってほんとに力があるのかしら。二日も寝込むなんて・・・・)
(今日の話聞いていると普通の人みたいだけど・・・・・)
(最後のマサミの一言、気になるわね。・・・・電話ちょうだいなんていわないほうがよかったかしら。・・・・)
(よかったなぁ仁がいなくて。三人で遊ぶって・・・・いたらへんな気分になっていたかも。)
(どうしようかな。ヒロムになんて言おうかな。)
(私、綺麗になったのかしら・・・・)

 「ベース」の着いた。
ヒロムはデスクの上の資料を見ていた。ヒトミは後ろから、腕を絡めた。そんなことも、今のヒトミには普通にできた。
「お帰り、どうだった。」
ヒロムは腕をほどきながら、振り向いた。
「仁はいなかったの。」
「そうかー。」
「でも、マサミと話した感じだとお金で何とかなりそうよ。」
「まッ、この前の感じだとそうだね。」
「そうね。・・・仁、普通の人みたいだった。」
「会ってないんでしょ。」
「マサミの話の感じだけど。なんか、雰囲気違ってたわ。」
「まあ、いいとしよう。これからはここの意味合いの変わってくるし、仁の行動さえ、おさえればだいじょうぶだろう。」
「なんだぁ、ヒロムそんな感じだったの。私、緊張してたのに。」
「はっ、はっ、ヒトミが緊張したら困るよ。これからは中心になるんだから。」
「もお。私にできるのかしら。」
「だいじょうぶ。綺麗になったよ。それに天才演劇部もいるしね。」
ヒロムはヒトミの手を握った。ヒトミの耳もとに唇を近づけた。
「出ようか。」
演劇部を呼んでヒロムは耳打ちした。
 二人は「ベース」を出た。車が待っていた。道玄坂で降りて、バーに行き、子供のようなヒロムの顔を見て、二人はいつもの場所に消えた。

電話切れてます。Ⅲ

2009年03月11日 17時23分05秒 | Weblog
「うん。ちょっといいかな。秀ちゃんに保険証借りてお医者さんいったから・・・・抗生剤飲んでるの。」
「なんだったの。」
「感染症って先生は言っていたわ。しばらくセクスできないって、清潔にしろって。・・・・」
「まあ。」
「ヒトミ、綺麗になったね。」
「なに。」
「凄くきれい。わからなかったよ。」
「そんなこと・・・・」
「どうしたの。好きな人できたの。」
「えっ。」
 確かにヒトミは見違えるほど綺麗になった。小デブのころとは別人だった。出るところはそのままで、要らない部分が削ぎ落とされた。肉感的でいて、引き締まった体になっていた。顔のラインもしまり、ポチャリとした優しさよりも、精悍さが際立っていた。ヒトミは鏡を見るのが好きになった。自分の顔で美容師としての経験を試せるようになった。ヒロムの望む顔も作れた。今日はそれほど気合を入れて化粧をしてきたつもりはなかった。それでも以前のヒトミとは別人だった。
「そうじゃないけど・・・」
ヒロムの計画を話すわけにもいかなった。
「ねえ、あれから「ベース」に来ないけど・・・」
「「ベース」ね。仁ちゃんが行こうって感じじゃないから。」
「仁は「ベース」のことどう思っているのかしら。」
「うーん、どうって。・・・・」
「ちょっとね。前とスタイルが変わりそうなのよ。それで、仁が来て、もちろん、マサミもね。戸惑うじゃないかって思って。」
「うーん。それって、来ないでってことなの。」
「そういうんじゃなくて。」
「なんか、ヒトミの話し方、違うもん。」
「そんな。」
「いいの。ヒトミ・・・偉くなったみたいね。それに仁ちゃん今大変だから。」
「どういうこと。」
「私がね、病気になる前にね。秀ちゃんと三人で遊んだの。そのとき、秀ちゃん、危ない日だったらしくてできちゃったのよ。」
「なにいっているのよ。」
「だからね、子供できちゃったのよ。」
「どうして。」
「どうしてってー。しなかったから・・・」
ヒトミはドキッとした。ヒロムとのセクスで避妊をすることはなかった。
「どうしたの。」
マサミがヒトミの変化に気付いた。
「ううん、なんでもない。」
「この間のお金も、それに使っちゃったのかなぁ。わかんないけど。」
「それって。」
「うーん。」
一瞬の沈黙
「でもね。きっと、仁ちゃん「ベース」には行かないよ。だって、ズーと前の「神聖な儀式」の時もそうだったけど、終わった後、凄くきついみたいで、この前なんか、部屋に戻って、私を犯したあと、二日も寝てたよ。一度もおきないで。でも、あんな感じのセクスはいやだったな。ううん、凄くよかったけど怖かった。もう戻れなくなりそうで・・・」
「・・・・」
「仁ちゃんじゃなきゃわからないけど。行かないと思うな。秀ちゃんが病院行ったって言いに来た時ね。仁ちゃん、泣いてたもの。」
「・・・・」
「仁ちゃんも泣くんだって思ったよ。それから、秀ちゃん来ないけど」
「もしね、「ベース」に来ることがあったら、連絡して、来る前に。」
「なんか怖いね。」
「あら、ごめんなさい。」
「いいよ。解った連絡するね。」
「うん。」
ヒトミはマサミに「ベース」の事務所の電話番号を渡して部屋を出た。