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「母」三浦綾子 「蟹工船」の小林多喜二の母が語る(涙) 感想

2008-06-27 | 小説・漫画他

最近、非常に小林多喜二「蟹工船」が話題・人気なのは知っていたのですが、こちらの三浦綾子の「母」とは、小林多喜二さんのお母さんが、自分や多喜二、彼らの回りの人達について語った本とは知らずにいました。
つい最近、丁度この「母」が、ポロンと置いてあったので、パラパラとなにげなく読んで見たら、あら・・・小樽に住んでいたのね? 多喜二さんは、拓銀で働いていたんだ~?!とか、道産子の私にとっては、とっても身近な場所が出て来て、まず引き込まれ・・・そして・・・。
もう・・・何度涙が出そうになったことやら・・・。
この多喜二さんのお母さん、そして多喜二さん、なんて良い人達なんだー!!
なぜ、こんな良い人達が、悲しい目に遭わなくちゃいけなかったんだ~~と、本当に悔しかったです。
小林多喜二さんは、優しくて親孝行、兄弟思いの人で、そして「貧乏な人を無くす様な世の中にしたい!」という気持ちで、小説を書いていた姿に、胸が熱くなりました。

多喜二の家は貧乏だった。でも残っている幼い学生時代の写真は、小綺麗な服を着ているそうなんですね、それを見た人達が「貧乏とか言いながら、そんな事なかったんじゃないの?」みたいに思われることがあったそうなんです、でもそれは、写真を写す際に、服を貸してもらって写しただけだったそうなんですね・・。

多喜二が、弟の三吾に、お給料をはたいて、バイオリンをプレゼントしたエピソード。
それがきっかけになって、弟は、東京フィルハーモニーだか、なんだか(すいません忘れましたが、すごく有名なオーケストラ)の第一バイオリニストになったんですよね・・・。

あと、何と言っても、一番感動したのが、身売りに出されたタミちゃんを救い出そうとする多喜二の愛!そして、多喜二の母のタミちゃんへの優しい気持ち(タミちゃんの多喜二やお母さん達への心遣いも)

多喜二が大金をはたいて、タミちゃんを身請けしてあげるのですが、普通ここで、結婚するとか、なんとか・・ってオチですよね?ところが、多喜二は、そういうのを望まなかった(本当に偉いっ!)
 「自分はタミちゃんを苦界から救い出したいだけだった。ここですぐおれの嫁さんになってくれといえば、おれの金で救い出されたタミちゃんは、もし断りたかったとしても、断れないじゃないか。男と女は互いに自由でなければならないんだ。自由な身でつき合って、それで結婚する気になったら、結婚すればいい。とにかく今のタミちゃんに結婚を申しこむのは、金で女を買うのと同じことになる、おれはそういうことはしたくない」と、言うんです

その後も、色々あるんですが、その都度、多喜二がタミちゃんを一人の女性として、そして自分で自活出来る様に応援する気持ちとかが、もう素晴らしいんですね・・・

そして、このお母さん。この息子にして、この母ありき!いや、逆か・・・。
普通、我が息子が、身売りしてるどこぞの女に入れ込んでいるとか、その子を助けるために、大金を使っていいか?などと言われたら、嘆いてしまう人が多いだろうと思う。なのに、このお母さんは、息子がそんなに気に入る人なら・・・と思い、そして、貧乏で身売りするしかなかったタミちゃんの事を可哀想に思い、助けてあげたいと息子同様思う様な優しい人なんです。
 だいたい、このお母さんは、この一件の前からして、小樽のご近所でボロ布のごとく扱われていた人(何て名前のだったのか忘れてしまいましたが、やっぱり奴隷の如く、死ぬまで働かされる人)が辛くて逃げ出したのを、家に、こっそりかくまってあげた・・・という事までしちゃってるんですよ・・・・。

ただ、この本を書いた三浦綾子さんは、母タキさんが、クリスチャンということで、これを書こうと思った・・と書かれているのが・・ちょっと・・・。
最後の方は、イエスキリストがらみの信仰心を書いていて......う~~ん・・・・
私なんかは、無信仰だし・・・
それにこういう話を聞くと、「どうして、こんなに良い人が、こんなひどい目に遭わなくちゃいけなかったんだ?神様がもしいるなら、こんな理不尽なことは無いのでは?」とかって、思っちゃう性分のところがあるのです・・。

とにかく、この本を読んで、「蟹工船」は是非読んでみよう!と思い、さっそく図書館にリクエストをしました。
 
内容(「BOOK」データベースより)
「わだしは小説を書くことが、あんなにおっかないことだとは思ってもみなかった。あの多喜二が小説書いて殺されるなんて…」明治初頭、十七歳で結婚。小樽湾の岸壁に立つ小さなパン屋を営み、病弱の夫を支え、六人の子を育てた母セキ。貧しくとも明るかった小林家に暗い影がさしたのは、次男多喜二の反戦小説『蟹工船』が大きな評判になってからだ。

.............

次の日、「蟹工船」を読みました。
←これは新潮社の文庫
図書館で文庫本はリクエスト待ち順番が凄かったので、日本文学全集37 (昭和51年出版)という、凄く古い本を借りて来て読みました。

読んだ感想は、ぐいぐい引き込まれながらも、文字が凄く読みにくくて苦労しました。昔の文体のままなのかな?「考へ込むやうに、じつとしてゐた」みたいな言葉なんですよ。最近出回ってる新潮社の文庫も同じ文体なのでしょうか・・・? 
それでも、北海道弁なのか、東北系北海道弁なのかわかりませんが、まだ私が北海道出身故に、解ったのが救いでしたが・・・。

なんかもう・・・悲惨です。酷すぎです。最近よく話題に取り上げられて、今の社会と似た部分があるとか、なんとか言われていますが、こちらの「蟹工船」の方がはるかに悲惨です・・・。不潔さと臭ってきそうな描写に、呆然としました。
それにしても、昭和の初めの北海道は、ひどかったんだなあ・・・。蟹工船だけじゃなくて、炭坑とか、開拓民とか、本当に酷かったんだな・・・と、言葉を失いました・・・・。今までそういうのを知らずに、平々凡々と小樽とか、オホーツクとか行ったりしていたけど、自分の祖父祖母の世代は、本当に苦労したんだなあ・・・と思いました・・・。

こういう本を、昭和のひとけた時代に出版するのは、相当勇気が要ったでしょう。こりゃ~特高に捕まってしまいそうな危険は感じるな・・・。
弱い者も多い人達が集まれば、支配者に抵抗することが出来る、がんばろう!、という感じのメッセージがある本でした。

それにしても、全然詳しく無いので、てんで違う解釈をしているかもしれませんが、社会主義とか共産的思考とかって、貧富の差を無くしてみんなが平等に暮らせる世界を作ろうという志は、基本的に私は共感するし良いと思うのだけれど、でも、世界の社会主義の国の行く末を見てみると、果たしてこれが良かったのか・・・?と思う処もあり、、、難しいですね・・。 

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33 コメント

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人らしく (存在する音楽)
2008-06-28 01:42:46
当時の環境で希望を見出すものが左翼思想しかなかったのかもしれません。
左翼も右翼も老いも若きも男も女も
苦しい生活環境では
人らしく生きたい
本音はそう部分で、希望が持てるなら何でも良かったんかもしれませんね。

余裕が出来ると、また別の欲望が生まれていくんだと思うのですが、現代は当時と同じ心情を抱えるほど、厳しい状況があるんだなと感じます。
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こちらにも・・ (hito)
2008-06-28 16:03:40
すご~く昔に読んだので細かい部分は全然覚えていません~(泣)
でも、すごく感動して「絶対蟹工船読む!」とその時強く思ったのは覚えています・・ただ未だ蟹工船は未読です・・いつか読む~

三浦綾子さんの作品は好きですが、読んでいて「神様がいるならどうして助けてくれないの?」っていうの同感です。遠藤周作さんの「沈黙」でもそれを感じましたが・・でもそういう時だから心の拠り所とかになるのかもしれないですね~・・私も全然解らないですが・・
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存在する音楽さん☆ (latifa)
2008-06-29 08:41:30
存在する音楽さん、こんにちは~
うん、うん、存在する音楽さんのおっしゃること、そうかもしれないよな~ってしみじみ思いました。
この「母」の中で、多喜二がもう死んでしまって数年経った後、お母さんが偶然タクシーの運転手だかと話すシーンがあるのです。そのタクシーの運転手さんが右翼だったらしいのですが、それでも多喜二は可哀想だったなあ・・・と言う処があるんですよ・・・ 

>現代は当時と同じ心情を抱えるほど、厳しい状況があるんだなと感じます。
 よくTVや雑誌などでも、現在とこの本を比較して似ていると言っているので、興味があったのですが、実際読んでみたら、蟹工船の方が、本当に酷くて、、ショックでした。
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hitoさん☆ (latifa)
2008-06-29 08:54:28
わ~い!hitoさん、こちらにもありがとうございます!

すごく昔に読まれたのですね?
>すごく感動して「絶対蟹工船読む!」とその時強く思った
 うん、うん!ですよね♪私もそうだったんです。で、丁度勢いづいて、蟹工船を読んじゃった、って流れでした。

三浦綾子さんの作品では、塩狩峠を高校生の時だったか読んで、号泣したことがありました。他にも幾つか読んだことがありますが、キリスト教について一杯書かれている内容だと、どうしても壁を感じてしまうというか、なんというか・・・。(別にキリスト教が嫌いって訳ではありませんよ^^ 私は、幼稚園はキリスト教系でしたし、ミサとかも好きでした)

>でもそういう時だから心の拠り所とかになるのかもしれないですね~・・
 その通りですよね。三浦さんも、その他の熱心な信者の方々の中には、凄く辛い体験(病気とか・・色々)で、生きる希望を失っていた処に、信者になることで救われた・・という経緯の方も多くいらっしゃるみたいですしね・・・。
逆を言えば、そこまで自分は、どん底になったことがないから、信者になる気持ちが解らないのかもしれませんね・・・。

以前、星野富弘さんが、最初はキリスト教とか神とか受け付けなかったのに、段々気持ちが変わって行く経過を書かれた本を読んで、その文章は、す~っと入り込んで読む事が出来たのですけれども・・・。
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Unknown (Unknown)
2008-06-30 17:45:35
赤い激流でコメントした関西在住のひのえうま女です
明日からまたガソリンの値段が上がってしまいますし
格差社会がますます広がってしまうようでいやですね
これだけ燃料代が上がっても日本人はおとなしいなと
思っていたけど来月漁師さんがストをするそうですよ
小林多喜二の時代つまり日本が戦争に入ってしまった
時代背景として石油を手に入れることが困難になった
背景があるわけでそう考えるとなんとも不気味ですね
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こんちわ♪ (牧場主)
2008-07-01 16:29:46
この三浦綾子さんの本は「蟹工船」の横に本屋さんに並んでいたんですか?
本の配置が気になるんで・・・何処でこの本にめぐり合ったのかもしよければ教えてください。

ところで、森絵都の「ラン」はね・・・
めっちゃくちゃ良かったです~
私、来年の本屋大賞、これに一票入れます。
(本屋大賞は一位から3位まで入れることになってます。もしかしたら、「みなさん、さようなら」は発売時期が去年っていうことになってしまうかも知れないけど、「ラン」が一位で「みなさん、さようなら」を2位にします。)
また、今度落ち着いたら来ますね。
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ひのえうま女さん☆ (latifa)
2008-07-02 09:23:14
こちらにも、ありがとうございます~
6月最終日に、ガソリンスタンドにかけこんで入れて来ました。。。ガソリンが足りないから値段が上がってるのではないというのには、頭に来ますね・・・。

格差社会、問題になっていますよね・・・。みんなが公平な社会っていうのを作るのは難しいのでしょうけれど、北欧の方なんかは、上手く行ってる国も多いと聞きます・・・。

>来月漁師さんがストをするそうですよ
そうですか・・・。石油と直結するお仕事の方は、本当に大変かと思います・・・気の毒だなあ・・

蟹工船とか、母、を読んだら、いかに騙されたりして(良い話しを聞いて夢を持って)北海道にやって来た本土の人が多かったか・・・を知りました・・・。
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牧場主さん☆ (latifa)
2008-07-02 09:26:50
>この三浦綾子さんの本は「蟹工船」の横に本屋さんに並んでいたんですか?本の配置が気になるんで・・・
 是非是非隣りに置いてくださいまし!! 多喜二の母・・という説明のポップなんかもあると、絶対売れると思うな~♪

知った経緯は、会社の人から教えてもらったんです。少しパラパラ読んでみたら、ぐっと引き込まれてしまって・・。

>森絵都の「ラン」はね・・・めっちゃくちゃ良かったです~
そうですか!そんなに牧場主さんが気に入られたなら、私も読んでみようっと!! 
 まずは、パラソルの下で~を読まねば。回りの噂では、あんまり私が好きそうじゃないような気もしてますが・・・w
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是非 (牧場主)
2008-07-02 16:00:31
「ラン」はね~、またスポコンかよ、って思ってたんですけどね、あの、ちょっと違います。
走るには走るんですけど。
運痴の人にも(latifaさんのことではないですよ、・・・確か体育はお好きでなかったと記憶してるけど・・・むにゃむにゃ)読んで欲しいっていう話です~。

「母」はね、置いてみますよ~。私の権限で。
それよか、もう、私、仕事場がね、もう、パラダイスよ?
毎日、ケンイチ君に「おはよ~」みたいな。
ああ、角川! 有り難う!!
ポスターはキレーに貼って夏が終わったら私のお家にやってくるのよ。
むふ~
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牧場主さん☆ (latifa)
2008-07-02 20:27:22
上のコメント書いた後、図書館で「ラン」をリクエストしてきていたんです。順番待ちは、まだ少なかったので、あと1,2ヶ月で、回って来てくれると良いな~。
了解です♪やだ~そんな気を使わなくても全然平気ですよ。運動オンチなのは、堂々と言いまくってますから

で、すごい!牧場主さんの考えで、そうやって好きな様に展開を考えたり変えたり出来るなんて、最高の職場じゃないですか~
 ふむふむ、あの緑と黒のポスターですな?それとも本が一杯並んでいる処で立ってるやつかな?
好きな俳優さんの写真が貼ってある店内でお仕事って良いなぁ~!
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