財布と自分を見失う私

やってもうた。

酔っ払って、帰りのタクシーの中に財布置いてきた。

最近、素敵女子だのアゲ嬢だのと言って調子こいてた矢先のこの失態。

しかもお客さんにも相当絡んだらしい。ああ、やっちまった～。
確かに後半から記憶が途切れ、タクシーに乗った記憶がなく、家へはオートパイロット状態で帰宅した模様。

ただの言い訳でしかないんだけど、その日はけっこう疲れてたんだ。

朝から仕事で５時半起床。
それからお客さんとママたちと食事に誘われていたので、仕事終わって速攻支度してすぐに家をでた。
ＢＴＳは丁度ラッシュ時間で相当もみくちゃにされる。目的の駅へ着きヨレヨレの状態でホームへ排出。
そこからレストランへ向かうも、ドが付くほどの方向音痴を発揮！
前日にチーママが、「場所わかる？ひとりで来れる？」と聞いてくれたときには、
「わかります！行けます！」と胸をはって言ったのに、結局、
「すみませ～ん・・・、迷ってしまいました～（涙）」
場所の説明を聞くも、テンパっているのと頭わるいのとでなかなか理解ができず、オロオロ。
タクシーに乗ろうとするも、通勤渋滞真っ只中だからか、ことごとく乗車拒否を受ける。
焦りと暑さで、汗だくになって歩き、心配して通り沿いまで出てきてくれたチーママに捕獲された。

高級レストランにボロボロの私到着。

ほんっとうにスミマセン…という思いと、たくさんかいた汗とで、ワインをあおる。

普段食べられないような、お刺身やステーキなど、素晴らしいお料理の数々を頂いたけれど、
自分の失態に落ち込んで、味を感じることが出来なかった。ただお酒を飲もうと思ってしまった。
そうすることで、より深い失態へはまっていくことは明白なのに、
当の本人は、飲みが進むに連れて能天気になることにただ満足してまたグラスを開けてしまう。

そしてレストランを出て、お店へ。

始めの方はなんとかなっていたけど、最後のテーブルでハジケル。

記憶をなくすまで飲むなんて、仕事じゃない。完全仕事放棄。

そして翌日、財布と記憶がなくなっていることに気付く。

うっわーーー！やっちまったーー！！と意味もなく狭い部屋をグルグルと徘徊。

とりあえずカード類を停めることを先決とする。インターネットと携帯が使えて良かった～。
しかもクレジットカードの場合、こっちから掛けても料金が掛からなかったので、ありがたい。
「今お停めしましたのでご安心くださいませ」
と言ってくれたコールセンターのオペレーターのマニュアル通りの言葉に慰められ、
彼女の胸の中に飛び込んで、「ありがとう～！ありがとう～！」とワンワン泣きたかった。

日本の銀行のカードは、海外の場合有料とある。携帯にそんなにお金が入っていなかったので、
国際電話を掛けられず、旦那さんにスカイプをするも繋がらなかったので、姉に連絡。

かなり心配性の姉。私がカードを落としたことを知って、ビビってお腹が痛くなる。

口座番号を教えて！と言われて通帳を確認したら、カード発見。通帳と一緒に保管していて財布の中には入れてなかったようだ。

良かった良かったごめんごめん！

私としては心配性の姉がこれ以上心配しないようにと思って、
「いや～飲みすぎて落っことしちゃってさ～♪」とわざと明るく言ったんだけど、
「バカ！呆れるわ！！！」と怒られた。後ろで姉以上に真面目な姉の旦那も呆れている様子だった。
心配と迷惑を掛けて申し訳ないし、バカなのは私だから呆れられるのも当然なんだけど、
誰よりも呆れているのは自分自身だから、そんなに責めないでよ～と思ってうじうじした。

そのあと警察に行ってタイの銀行のカードは再発行して、財布問題は一件落着。

でも、お店でのことは、やっちまった感が募る。

チーママに電話して、「きのうはすみませんでした」とお詫びをする。
いつもは「いいのよ～」と言ってくれるけど、今回は失笑ぎみ。
私がしつこくしつこく、「なにか失礼なことしてませんでした？！」と聞くと、
「失礼なことはしてなかったと思うけど、後半は確かにお仕事じゃなかったわね～」と優しく言ってくれた。

ああ～、優しいチーママにそう言われるってことは、私相当やらかしたな。
お客さんとお店に迷惑を掛けた。
ママにもお詫びをしなければと思ったけど、ママは最近あまり眠れていないようなので、電話で起こしてしまったら…と思い、
とりあえずメールを送った。

「もうお店に来なくていいわよ」

と言われるのを想像して悶々とする。

はあ～。そういえば、旦那そろそろ帰ってるかな…とメール＆スカイプするも全く繋がらない。
おかしい。土曜日のこの時間、もう帰っているはずだし、帰ってなくてもいつもだったらメールに返信するくらいはできるはずだ。
浮気をしてるんだったら全然いい。むしろ浮気のひとつやふたつしてて欲しい。
でも、きのうの夜「台風だ」ってメールが入ってきてたし、もしかして、もしかして、強風に巻き込まれて・・・。
気弱になってるところに、不安が重なり、どうしようもなくなる。
タイに来てから初めてお母さんに電話をして、「旦那と連絡がとれないよう」と号泣。

「気付かないだけでしょう？大丈夫でしょ」と言われて、そうかと思い直す。

結果、漫画喫茶にいて、電波が入らなかったらしい。
休日に１日中漫喫に入り浸る４０男。地味。

まあ、生きてるんなら良かったと肩の力が抜ける。

夕方になって、ママに電話してみる。

私の予想に反して、「気にしないで。大丈夫よ～」との御言葉。もうこのお方に迷惑は掛けまいと誓った。
電話越しで、ぺこぺことお辞儀をする私。典型的な酒乱サラリーマン。
美味しんぼの富井副部長がとても他人に思えない。

お酒を飲むお仕事って私には合ってないんじゃないかって思ったけど、
働かせてもらえるようお願いした日にちは真っ当したい。

お金を頂いてるんだから、ちゃんと仕事しよう。

財布を落としたことで、厄も落とせた。だからきっと大丈夫。





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