NNNドキュメント「心なき福祉 札幌・姉妹孤立死を追う」

2012-06-23 18:56:56 | 雇用・社会保障のあり方について

この番組は今年1月、札幌市で姉妹が孤立死した事件についてのドキュメンタリーである。

(番組HPはこちら“http://www.ntv.co.jp/document/”)

もともと北海道ローカルの55分枠で放送された同番組は、行政の生活保護の責任が果たされず人が亡くなってしまったという事実に基づき、生活保護のバッシングの中で冷静な議論を組み立てるための基本的な姿勢とはなにかを考えるのに格好の素材となるのではないだろうか。以下、番組の再放送版(6月10日24:50~ 30分枠)を観ての内容と感想を記すこととしたい。

◆三回も市役所を訪れたのに…行政の不対応と孤立死

2012年1月、札幌市のアパートで二人の女性の遺体が見つかった。
姉妹であったこの二人は同居していたが、姉が病死し、次いで知的障がい者の妹が凍死した。発見されたとき、妹の遺体はやせ細り、胃の中は空だった。
部屋のガスは料金を滞納し停止し、通帳残高は3円だった。姉は区役所の福祉窓口を三度訪れていたが、窮状を訴えても申請書すらもらえなかった。
行政の言い分は「申請の意思はわかっていたが、申請したいとはっきり言わなかったため、申請書を渡さなかった。」というものである。
そして行政は、姉に「懸命に就職活動をするように」と伝えて帰らせていた。

姉は地元で就職していたが、勤務先の倒産を機に札幌市へ移住。
妹は障がい者向けの工場で勤務していたが、手術を機に自力で生活することが出来なくなり、姉の元へと身を寄せた。しかし同居を始めると今度は姉が体調を崩し、仕事の出来る状態ではなくなった。姉はなんとか仕事を見つけたが、妹の体調が悪化し、介護が必要となったことで退職を余儀なくされる。保険は解約し、病院にも行けず、収入は月6万相当の妹の障がい者年金のみ。

姉は限界と感じ三度目の申請に行ったが、やはり行政は窮状を理解しつつ、就職活動を求めて拒否した。ついに11月、ガスが止まり、障がい者年金で滞納していた家賃を払うと、姉妹は完全に孤立した。翌月、姉が病死した。携帯電話の発信履歴には、110番、119番に電話しようとした痕跡がいくつも残っていた。年が明け、残された妹は凍死した。

行政は今でも、「あくまでも(申請するかを)決めるのは本人で、結果的にはこうなったが、対応としては間違っていない」と答えている。この事件を受け全国の弁護士らにより調査団が結成され、行政への聞き取り調査がなされたが、行政は「担当者の記憶が残っていない」と繰り返し、取り合わなかった。

◆人間の命がかかっている生活保護制度
北九州の餓死事件や、このような悲惨な事件が起きても、未だ行政が水際作戦をやめようとしていない。
今回の舞鶴市の対応がいい例である。公共料金を滞納し、所持金が尽きたという点で舞鶴市の一家と札幌市の姉妹に何ら違いは
ない。この事件を繰り返すわけにはいかない。予算、税金といった観点から生活保護を考えることが直ちに誤りというわけではない。しかし、その前に生活保護には人間の命がかかっているということを忘れてはならないだろう。(京都POSSE 法学部・三回生)

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