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英国旅行記~仰いで尊い卒業式②~

2006-07-31 00:45:40 | 旅行記
卒業式・本番。ちょっとシリアスに書いてみました


ホールの前方、後方の上部席に座った吹奏楽隊が奏でる音楽で、式は始まった。

音楽に合わせて校章が刻まれた大きな職杖を担いだ赤ガウンの男性が歩いてくる。プログラムによれば、彼はMace Bearerというらしい。

ついで質素な黒いガウン、黒い丸帽子の男性がゆっくりとしたリズムで歩いてくる。役職不明。その後ろには同じ格好の老齢の男性で、同窓会代表とある。

それから学部の主要スタッフに教授、講師など学部の構成員が続く。学位保持者は全員、それぞれのガウンを着ている。これは卒業した母校によって異なる。私の大学の博士用ガウンは赤字に緑のフードなのだが、青、紫とバリエーションは広い。そして名誉学位受賞者。ターバンを巻き、やはり博士号のガウンを着ている。

 しんがりは赤に金のラインの入ったガウンの中年男性、そして黒地に金色の模様の入ったガウンの老人だ。 これが大学総長と副総長。はじめて見た。ちょっと疲れた顔をしている。無理もない。だって連続15回出演ですから。一行はおごそかに中央通路を歩いて前のステージにあつらえられた席につく。

開会の辞は総長によって述べられる。。この一年での大学の成果を簡潔に述べた、短いものだった。
次は日本で言えば、証書授与なのだろうが、どうも書き方が難しい。
一言で言えば、「学長の握手会」。
卒業者は名前を呼ばれ、順にステージに上がり、学長にお声を掛けていただき、握手する。

壇上の出番はそれで終わり。卒業証書は席に戻る途中に設けられたブースでようやく受け取る仕組みになっていたのだ。壇上渡しは時間がかかるから、今の形式に変更したのだろう。

何はともあれ、まずは博士課程卒業者から始まる。先述のとおり博士のガウンは学士、修士と異なる派手な色合いに加えて、帽子もトマス・モアなんかが被っていそうな黒い丸帽子で金の組み紐が縁取っている。年齢層は20代から60代までと幅広い。ついで哲学修士Master of Philosophy。博士課程に進むのに不可欠な学位で、ガウンは黒に緑のフードが付いている。一人80代の女性がいて、夫らしい人に付き添われて壇上に向かっていた。年齢は人を縛らないと思った。

そして修士課程Master of Arts。緊張がピークに向かう。フードが重くひたすらシャツを引っ張って立ち上がる。帽子がずり落ちないかと不安になる。 いよいよだ。名前の確認をして壇上に上がる。学長は顔色が悪くて明らかにお疲れモード。 それでも穏やかに祝福の言葉を述べ、握手をしていただいた。どうにかお礼の言葉をしぼりだして一礼し、壇上を降りた。終わりだ。40秒に満たない動作がとても長く感じた。顔をあげて通路を進む。 保護者席に笑顔の両親が見えた。 親孝行になっているといいのだが。

そして学士過程。ここからいきなり騒がしくなる。なんせ若いので壇上でポーズを決めたり、掛け声をかけたりとノリノリだ。何だか厳粛な感じが薄れてきたぞ。おまけに女の子は「むちむち」を遥かに通り越した体形の子が多くてすごい。博士の人々は全員、ほっそりした体形だったので余計に目立つ。まあ若いしね~。
 
ただ、興味深かったのがヘジャブをかぶったムスリムの女生徒たち。彼女達の何人かは握手をせずお辞儀のみで壇上を降りていった。興味深いのは、黒いヘジャブをかぶった女性よりも華やかなヘジャブの女性に、このタイプが多かった。宗派で違うのだろう。

「握手会」が終わったところで次に名誉学位Doctor of Universityの授与式とスピーチ。今回はシーク教のグル(指導者。間違っても某カルトとは異なるものであることを広言したい。)が選ばれた。彼のスピーチは非常に興味深いものだった。バーミンガムにおける宗教の歴史の話で、キリスト教の各宗派の教会設立の歴史に始まり、第二次大戦前夜におけるイスラム・モスクの設立、そして現在の宗教間対話への取り組みについて語っていた。 このご時勢ゆえの背景事情もあるのだろうが、面白いものだった。 
そしてまた、別のスピーチがあったような・・・短いものだったのではや忘却。

 
そして英国国歌が流れる。といってもメロディーだけ。 歌わない。ありがたいことだ。だって私達は歌えないもの。今の日本のように押し付けるのでなく、さらりとやってくれたのがニクイ。本当の愛国心、もしくはその国を尊敬する心ってこういった「押し付けがましさの排除」から生まれるものではないだろうか。

やがて式終了の辞が述べられ、来たときと同じ順番で学長一行が退場していく。
次に卒業生。のたのたと歩いて出て行く。後ろがすぐに詰まってしまうので、芝生までいっきに突き進む。太陽がまぶしい午後三時。

そうして、卒業式はシンプルに幕を閉じた。

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