黒砂台鍼灸あん摩治療院

鍼灸院の日常日記

寒さと湿気とカビの話?カビの発生に要注意

2010-10-04 10:46:18 | 院長のひとり言
ニュースを見ていたらいくつか記事が出ていました。
またも洋菓子にカビ、回収へ
ちょっと昔やった食品開発を思い出して書いて行きます。

記事からたどると解るのですがカビが発生したのはスティックタイプのパウンドケーキのようです。
微生物の生育条件自体は夏のほうが良いのですが、実は秋を迎えたこの頃の方がある意味カビの発生などのトラブルは多かったりします。
寒さと湿気の関連性が実は問題だったりするんです。まあ湿気と行っても食品の湿気の話で気候の話ではないんですが。
この時期、加工食品などではトラブルが出やすいことは結構知られています。

通常の状態であれば、パウンドケーキのような食品は比較的カビが発生しにくいものです。
水分活性が低く設計されているため微生物が増殖できないためです。
水分活性とは食品中の自由水の比率をあらわしたものです。自由水とは微生物が利用可能な水分でこれが一定以上ないと食品中で微生物は増殖出来ません。つまり、水分活性が低ければ“カビない”訳です。
一般的に、水分活性が0.9を下回れば病原性微生物の繁殖は難しくなり、0.8以下では好塩菌や耐乾燥菌も増殖しにくくなり、0.6以下ではすべての微生物が増殖できないとされています。

水分活性を低くするにはいくつかの方法が有ります。
まず第一は水分そのものを減らすこと。代表的な食品では乾パンをあげることが出来ます。
第二は塩分や糖分を加えることで水分量は多くても自由水を減らした食品です。塩を用いた代表例は梅干や塩蔵わかめ等。ただし塩の量が少ないと水分活性も上昇するため注意が必要です。(あま塩、減塩のものの場合条件によってはカビる場合も)
糖分を用いたものでは蜂蜜があります。また一般的に販売されているお菓子類では「カントリーマム」などのしっとりしたお菓子類。水飴等を加えることで水分量を確保しながら水分活性を抑え、品質を保っています。

ニュースで「またも洋菓子にカビ、回収へ」と報道されたパウンドケーキ類も比較的水分活性は低いはずの商品です。ではどうしてこういった商品でカビが発生したのでしょうか?
それはこの時期の気温の変化に大きく関わっています。そして比較的発生が多いのが密閉包装された商品。
秋になり昼は暖かくとも夜は涼しい気候になってきました。こういったときに食品で問題になるのは結露の問題です。
密閉包装された食品では外気と食品の温度差が大きくなると包装内部に結露が発生しやすくなります。
「結露してはまた水分が食品に戻る」これを繰り返すと食品内部での水分の偏りが生じ、水分活性の高い部分が出てきてしまいます。
こういった水分活性が高い部分にカビの胞子等が存在した場合、カビの発生となってしまうケースが有るわけです。
(結露を繰り返すと一般的には内部の水分が外部に移動してきます)

食品全体の水分活性が低くとも、一部に高い部分ができてしまえばその部分からカビてしまうわけです。
実はこのような現象は冷蔵庫の中でも結構簡単に起こっています。常温でほっておいたジャムはカビないのに、わざわざ冷蔵庫に入れたジャムがカビたりなんてことも実はあったりします。冷蔵庫内で冷やされ結露が生じるとこのような問題が起きやすくなったりします。
もちろん冷蔵庫内では温度そのものが低いため発生頻度は非常に低いものとなりますが。

ではどのようにすればカビの発生を防げるのでしょうか?
もっとも簡単なのは包装容器内部に防カビ剤や脱酸素剤等を組み入れ、微生物の繁殖を抑えるやり方です。
防カビ剤というと怖いイメージを持つ方がいるかも知れませんが、アルコールを含んだシートや制菌作用のあるワサビの抽出物を用いたシートなどが有名です。
ただしこれらの方法でも包装に穴が開いたりするとその効果はだんだんと無くなってしまします。

別の方法としてはレシピを変更することで水分活性を下げる方法です。単純に言えば砂糖を増して作ればより“カビない”商品になります。
ただし、より甘い味になりますので昨今の薄甘志向ではちょっと難しいかも知れません。
また、食品にブランデーやラム酒等を使用してアルコールを含ませるのも非常に有効です。アルコールの制菌作用でカビ等を抑制できます。
でもこれも味に影響が出てしまいますね。
結露しない包装資材を用いることも考えられますが、別の部分の品質に影響が出る可能性も有ります。
他にも製品流通や保存時の温度変化を極力少なくするなど、いくつかの方法はありますが、最も有効なのは最初にあげた制菌剤か脱酸素剤を使用する方法でしょうね。

食品の結露による品質低下の問題はこの時期に結構多く発生します。
涼しくなったからと安心していると思わぬカビの発生で大変なことになったりするわけです。

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