新・私に続きを記させて(くろまっくのブログ)

ハイキングに里山再生、れんちゃんとお父さんの日々。

原発がいらない夏へ

2011年08月04日 | 反原発・脱原発・エネルギー
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 久しぶりに、大阪商工会議所方面に出かけた。アブラゼミの合唱だった。街路樹も神社もあるから、めずらしくもないけれど、夏だなあと思う。

 暑い。しかし今年の夏は、風がよく通るような気がする。気象条件もあるんだろうけれど、在阪16年、こんなにしのぎやすい夏は初めてだ。若い頃の夏は、こんな感じだったと思う。大学時代はバブル真っ直中だったけれど、エアコンなんかなかった。。

 やはりエアコンなどの使用低減で、ヒートアイランド解消が進んでいるのかも? と思って調べてみた。

 ちょっと前の資料だけれど、環境省の平成15年度都市における人工排熱抑制によるヒートアイランド対策調査報告書(PDF注意)

 この報告書によれば、東京都23区では建物排熱が50%、交通排熱が28%、事業所排熱が20%、その他2%。

 しかし「建物」は、消費段階でもトップだけれど、43%なんだね。7%も上昇している(グラフはp11より)。上昇は、クーラーと人体による排熱と考えられている。やはりエアコンの要因は大きい。報告書全文はこちら。


 まったく、震災直後のあの無計画停電は何だったのだろうと思う。東京電力の電力使用量は、供給予備率は10%を超え、昨年7月のピークに比べても約23%、1400万キロワット少ない。この夏の東京は、35℃を超える猛暑日がまだなかったり、東電管内の大口需要家が制限令で定める15%以上の節電に取り組んでいることもある。しかし「やればできるやないの」というのが、正直なところだ。

 電気消費量を減らすだけで、原発はただちにいらなくなる。もちろん、いつまでも火力には頼れない。現在、原子力予算は4000億円、再処理費用に2500億円で、合計6500億円。しかしドイツが固定価格で自然エネルギーを買い取る予算も、年間5000~6000億円だという。原発大国フランスから電気を輸入しているドイツと単純に比較できないにせよ、ざっくりいえば、原子力予算と再処理費用を転用すれば、追加コストは発生しない。今こそ自然再生エネルギーに転換するチャンスなのだ!

 と、「原発をやめてどうするの?」といわれて、「自然再生エネルギー!」と一足とびに答えてしまうところに、脱原発派の弱さがあるのだと、田中優さんはいう。この指摘は重要だと思う。(『脱原発社会を創る30人の提言』コモンズ)。

 脱原発は、創出されるべき理想とか理念ではない。やはり、運動の諸条件は、今日現存する前提からしか生じない。

 電気は貯められないので(蓄電技術はひとまずおいといて)、ピーク時の消費量を満たすように発電所はつくられてきた。

 しかし問題は、このピークの時間帯が1年のうちどれだけあるかということ。田中さんによれば、1年間8760時間のうちたった10時間程度で、わずか0.1%。その0.1%のピークのために、これまで多くの発電所がつくられてきたわけだ。このピーク時の電力消費量を減らすほうがはるかに合理的で、安上がりだ。

 電力会社は実際に必要になった費用に、「適正報酬」という名の下に3%上乗せして、電気料金を取ることができる。これを「総括原価方式」という。仮に300億円儲けたれば必要になる費用を1兆円にすればいい。ムダなものをつくればつくるほど利益が大きくなる。だから電気をもっと使わせようとする。

 ピーク時でも電力使用量の91%は事業者。しかし事業者の電気料金は、基本料金が高い分、1キロワットの値段は一定。電力を使えば使うだけ料金が安くなっていく。これでは電力使用量は減らないのも道理である。

 産業用の電気料金も、一般家庭と同じく、使えば使うだけ高くなるように設定し直すだけでいい。そうすれば、企業は省エネ節電に大まじめに取り組むだろう。これが田中さんの提言である。

 アメリカのカリフォルニア州には、原発を全廃したスマッド(SMAUD)という電力会社がある。この会社では、脱原発を実現するために、さまざまな取り組みを行っている。以下は田中さんの文章でなく、VANILLACHIPSのfudaさん(http://vanillachips.net/)による『脱原子力社会の選択 – 新エネルギー革命の時代』のブックレビューより。

 「省エネ性能の高い冷蔵庫・エアコン・照明設備への買い換えにリベートを提供」
「特別契約した家庭のエアコンや大口顧客の電源を一定時間リモコンによって強制的にオフにする代わりに、電気料金割引を行うサービスを実施」
「建物の断熱・遮熱についての相談・検査業務の実施」
「遮熱対策として、50万本の木を無料で消費者に提供」

 こんな気前のよいビジネスが成り立つのも、ピーク時の電力量が増えたら、新たに発電所を建設しなければならないからだ。仮に原発ならば1基に最低5000億円かかる。同じ5000億円であれば、原発を建てるより、ピークの電気使用量を減らす方にコストを支出したほうが、はるかにコストは安くなる。

 田中さんは、脱原発を可能にするのは、従来の「サプライサイド・マネジメント」(供給ありきの電力管理)から、「デマンドサイド・マネジメント」(需要ありきの電力管理)への転換だと強調する。

 再処理などのバックエンド費用、国民負担(国家からの資金投入)、そして重大事故による破壊的な危険性を考えたら、原発なんかワリに合わない。エネルギー政策の転換は、こうした社会的な合意を形成していくことだろう。

 大阪商人風にいえば「始末・才覚・算用」。そして経営の基本はまずは始末(節電)から。発電所の容量に合わせて、需要をコントロールしていく所に、脱原発と自然再生エネルギーを具体化する道筋がある。この夏はその実験のようなものだね。

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