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【読書メモ】海底からの生還

2022年02月04日 | 読書
最近読んだ小説やエッセイ集について、感想をまとめておきたい。

ピーター・マース『海底からの生還 史上最大の潜水艦救出作戦』

「本書の物語以外には、沈没潜水艦から生存者が救出されたことは未だない」

これは文庫の帯に書かれた訳者の江畑謙介氏のことば。江畑氏は、第一次湾岸戦争のころにテレビでよく顔を見かけた軍事評論家である。

マニアというほどではないけれど、潜水艦が好きだ。閉所恐怖症ならぬ、閉所愛好症のような部分があるのかもしれない。

しかし潜水艦事故だけは願い下げである。絶対に助かる見込みはない。しかしこの不可能に挑戦し、成功させた男がいた。米海軍士官スウェード・モンセン(マンセン)である。

『ブラック・ラグーン』2巻のナチス・ドイツの潜水艦のように、米軍最新鋭機のスコーラス号は、沈没後わずか2時間で酸素が枯渇するというようなことはなかった。数日間は酸素を保っている。沈没前に最後に電信された位置記録が、発信側のミスか受信側のミスかは不明だが、実際とは異なっていたのが捜索と救助活動を妨げた。どうにか沈没場所を捕捉した後も、連絡手段がない。沈没感の乗組員は、酸素も食料も枯渇するなかで、同じメッセージを3回、艦体をハンマーで叩いてモールス信号で送らされたそうで、艦内の酸素が欠乏する中で、これはほんとうに生死に関わる問題だったろう。現場に到達したモンセンは、すぐにこの愚行をやめさせた。

モンセンは潜水艦の元乗組員で、沈没した潜水艦の仲間たちを救えなかった過去がある。この体験から生み出されたのが、マンセン・ラング(マンセン/モンセンの肺)であり、鐘の形をした「救命鐘」正式名称レスキュー・チェンバーだった。マンセン・ラングは酸素が満たされた袋とマウスピースの逆止弁のついた2本のホース(一方は呼気用、もう一方は吸気用)で繋がる構成で、呼気に含まれる二酸化炭素をソーダ石灰に吸収させて除去して再度呼吸に使えるようにするものであったという(ウィキペディアをみると、いろいろ欠陥はあったようだが)。「救命鐘」は、救助艦から沈没した潜水艦に向けて潜航させたあと、潜水艦のハッチに接続して、艦内の乗組員を収容して海上まで救出する装置である。

アメリカ帝国主義のすごさは、海軍のだれもが「原子力安全神話」よろしく潜水艦事故をタブー視しているなかで、潜水艦事故対策の重要性を主張し続けた、軍では異端のモンセンの意見を部分的には採用し、さらに当時の最新鋭機であるスコーラス号の沈没事故が発生すると、潜水艦乗りの信頼が厚い彼をただちに救助活動の責任者に抜擢しているところだろう。日帝ならそんなことはまずしない。技術力や物量戦以前に、戦争に負けるわけだと、あらためて納得した。

二酸化炭素吸収剤なるものがあることを知った。二酸化炭素も増えすぎると有毒化するということらしい。たしかに換気しない部屋にいると、眠くなり、頭もぼやけてくる。冬のわが家は結露も激しい。朝、昼、晩と換気するようになると、結露も心身の不調もだいぶマシになった。

しかし、スコーラスの沈没ポイントは海深74メートルだったが、いまの潜水艦なら沈没箇所が1000メートル、5000メートル、1万メートルは普通にありだろう。まあ、絶対に助からないね。潜水艦は好きだけれど、自分では乗りたくないと思ったということだよ。


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