新・私に続きを記させて(くろまっくのブログ)

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花嫁はハンニバル (文学少女の謎について)

2022年08月21日 | 習作

今日は旧作のリバイバルおよび、この「文学少女」シリーズのある謎に関わるお話です。


文学少女「くろまっくくん、今日のお題は『にんにく』『教会』『月並みな表現』よ!」 http://t.co/ipqO3c5ZqD


「まっず。月並みな表現ばかり。私を吸血鬼と間違えて、ニンニクを用意していた馬鹿な子だけはあるわ」


本を食べる妖怪の彼女は、最近より効率的な方法を発見した。それは新鮮な文学少年少女の脳みそを啜ること。


これ以上罪を重ねさせないために、僕達は教会で式をあげ、僕は彼女の専属作家となった。

2013/02/23 Sat 21:19 From Mobile Web (M5)

 
 
この「文学少女の三題噺」の元ネタは、野村美月原作・竹岡美穂イラストによるライトノベル“文学少女”シリーズです。

 
以下はWikipedia解説よりあらすじ解説。
 
高校2年生の今、「普通の男子高生」の主人公・井上心葉(このは)。モットーは「君子危うきに近寄らず」という彼は、過去に大きなトラウマを抱えていた。そんな彼がひょんなことから、生粋の文学少女である天野遠子(とおこ)の秘密「文学を食べる」ことを知ってしまう。秘密を知ったことで彼は、遠子が部長を務める文芸部に強制的に入部させられ、毎日毎日三題噺を書かされることとなってしまった。
天真爛漫で無邪気な遠子に振り回され、「これは事件よ!」の台詞に頭を抱えながらも、遠子が首を突っ込んださまざまな事件を解決に導く手助けをしていく。その中で関わりを持った竹田千愛、芥川一詩、櫻井流人、姫倉麻貴、琴吹ななせなどに少しずつ心を開き、やがてトラウマの元となった、ある少女と再会を果たす。
 
 
「文学を食べる」は、比喩ではなく、この遠子先輩は物理的に本を食べます。 心葉が文芸部に加入させられたのも、この「秘密]を知ってしまったからでした。

遠子先輩は本のページを破り、紙片を口に運んで咀嚼した後には、うっとりとしながら「本」(味)の感想を述べます。  
 
「やっぱりギャリコは美味しい~~~!  ギャリコの物語は、火照った心をさまし、癒してくれる最上級のソルベの味よ。 喉にするりと滑り込んでゆく食感がたまらないわ」

と、こんな感じです。 

この三題噺シリーズのお題を出しているのは、遠子先輩にフィーチャーしたアプリ 三題噺やってみっかー (shindanmaker.com) です。作中では、「三題噺」は、放課後の文芸部の活動と称して遠子先輩が心葉に与える課題で、心葉が書き上げた話は、彼女の「おやつ」になります。ツンデレの心葉は、わざと変な「味」のするメチャメチャなお話を書いては、遠子先輩にいじわるしています。

 この物語は、紆余曲折もありながらも、遠子先輩は編集者、心葉は作家となり、ラストでは二人は結ばれ、ハッピーエンドになるわけですが……。


 

写真は、ねんどろいど遠子先輩クトゥルフ神話バージョン。

これは主人公の心葉(このは)の悪夢のなかに出てきた、クリーチャー(想像上の怪物)と化した遠子先輩です。あの世界一臭い缶詰、シュールストレミングから飛び出してきています。 

「文学少女」こと天野遠子先輩は、赤毛のアンリスペクトの、夢見がちで、甘ーい物語を愛する天真爛漫な少女なのですが、悪夢のなかでは、悪臭を発するおぞましい物語をむさぼり食う悪鬼と化しています。

このギャップがおもしろいのですが、しかし本当に恐ろしいのは、ふだんの遠子先輩のほうかもしれません。

このシリーズを読んでいて、大きな疑問が残るわけです。

編集者だった彼女の父親も、本を食べる一族でした(母親は普通の人です)。

この本を食べる一族は、一体、なにものなのでしょうか。

この一族は、本が発明される以前は何を食べていたのでしょう?

まだ印刷が発明されていなかった時代は写本を、木管竹簡の時代は木や竹を、亀甲文字の時代は焼いた亀の甲羅を、粘土板の時代は粘土にかじりついていたのかもしれませんが、そもそも文字が発明される以前はどうしていたのだろう?

遠子先輩の一族は、文字や紙や粘土板が生まれる前は、物語の語り手の脳みそを直接チューチューと啜っていたのではないのか? 

これがこの三題噺を書いた、私のたどり着いた結論でした。Webや電子書籍のデジタルの時代となり、紙メディアが激減して、遠子先輩が先祖返りしてしまわないか心配です。




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2 コメント

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Unknown (1948219suisen)
2023-08-26 07:46:14
最近の札幌の事件のようです。
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Unknown (kuro_mac)
2023-08-26 10:34:04
なるほど。たしかに、気色の悪い作品ですよね。

例の事件についていえば、普通、バラバラ殺人事件は、死体の隠匿のため、運搬しやすくするため、やむにやまれず行うものなのに、首だけがない死体が残されるという、前例のない事件でした。戦国時代ならありふれていたのでしょうが。

電ノコも用意していたという医師の父親は、『ゴルゴ13』でも傑作の誉れが高い「芹沢家殺人事件」よろしく、死体を細切れにして、トイレに流して証拠を隠滅しようとしたのかなあと思ったのですが……。

そこまでしなくとも、死体をバラバラにして、とりあえず風呂場をきれいに洗浄して立ち去っていたら、あの事件は今も迷宮入りしていたはずです。

あの娘さんが生首に執着したとも受け取れる報道があり、ワイルドの『サロメ』、乱歩の『踊る一寸法師』を思い出しました。

後者は、月夜の下、一寸法師が生首にかじりついてはキャッキャッと楽しそうに踊っているという、どうしようもない話でした(乱歩も自己嫌悪で休筆に至ります)。しかし同作収録の角川文庫版を捨てられずにいるのは、解題・中井英夫、解説・山田風太郎という豪華な布陣だからです。

中井英夫は、日本三大奇書『虚無への供物』の作者であると同時に、塚本邦雄、寺山修司、中城ふみ子らを見出した、日本短歌社の辣腕編集者でした。どうしようもない三題噺でしたが、最後は水仙さんのご趣味につながりました。
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