『マギレコ』のメモリア、『君だけが真実』。このイラストは、われら梨花れん教徒の聖画に等しい。
梨花を優しく抱き寄せる、母性さえ感じさせるれんのまなざし。眠れる姫を迎えに来た王子のようであり、幼子を慈しむ聖母のようでもある。ギリシャ神話なら、美しい女体を持った美少年の神、ヘルマプロディートスだろうか。
「五十鈴」とは、天岩戸伝説で、アメノウズメが使用した神器(神代鈴)の名でもある。十津川にある天河神社には、この鈴と同様のものとされる五十鈴が伝わっているという。伊勢神宮の宇治橋がかかる川の名前も、「五十鈴川」だ。中世の『日諱貴本紀』(にちいきほんぎ)では、アマテラスは両性具有神として描かれているそうだ。ちょっとおもしろい。
『マギレコ』で五十鈴れん初登場の『君と綴る日記』は、この天岩戸神話をモチーフに、梨花とれんがすれ違い、傷ついて視聴覚室に隠れたれんを、梨花が探しに来て、扉を開けさせるまでの物語である。
そして、メインストーリー8章。魔女化の真実を知って、絶望し悲しむ梨花を、「私、梨花ちゃんに会えただけで…魔法少女になって良かったって…そう、思うよ」と励ますシーンは、多くのマギレコプレイヤーを感動させた。守られる側から守る側へ。梨花れんはお互いがお互いにとって、姫であり王子なのだ。「リバ滅べよ」と言っていた山猫先生も、『アシさん』3巻のエピローグによれば、「リバもあり」と宗旨替えしたらしい。
メモリアは、ゲーム上は力を強化できる装備カードであり、魔法少女の記憶が結晶化したものだとされている。これは、「鏡の魔女」の迷宮「ミラーズ」で、偽物(コピー)の梨花に出会い、れんが怒りを爆発させ、本物の梨花を探し出すまでの物語の記憶だ。鏡の迷宮での出来事なので、解説文も鏡文字になっている。れんの一人称は、普段「私」なのに、日記では「僕」になる。かわいい。
「偽物が君の声音を騙り、君の言葉を並べようとも
僕は惑わされたり、信じたりしない。
本物の君を見つけ出して、必ず連れ戻すよ。
さぁ、帰ろう。穏やかな世界へ…」
ミラーズのバトルポイント最大時のれんのログインボイスは、「こわくはありません…戦うことは…はい」になる。あわててミラーズのバトル画面に行く。続くセリフの「私は一度は死んだ身ですし…それなのに、こわいなんて、おこがましいですし…はい」ということばを聞くのが耐えられないのだ。『マギレコ』の魔法少女には、問題のある家庭の育った人も少なくないけれど、れんは両親から愛されているのがよくわかる。それなのに、学校でいじめに遭い、死ぬほど苦しんでいたことに、気づいてあげられなかった。親視点では、こんなに自分が情けなく、辛いことはない。
魔力を完凸(最終進化)すると、れんは大人になったときの将来の夢を教えてくれる。いまでは梨花がいて、友達がいて、将来の夢もある。魔法少女の過酷な運命を乗り越えて、絶対に幸せになってほしいと願わずにいられない。